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テクニカル分析とシステムトレードの悩ましい関係 [システムトレード]

先日、久しぶりに書店を訪れ、株本コーナーをざっと見まわしました。最近の株価上昇の影響やテレワークの普及もあって、ネット証券の口座開設数が増加しているとの話を聞いていましたが、それに伴い株本コーナーも書籍数が増加しているように見えました。

ざーっとそれらの背表紙を見渡してみたところ、テクニカル分析に関する書籍が結構目につきました。その中の一冊を手に取り、パラパラとめくってみたのですが、チャートの一局面のみを捉えてテクニカル指標の良しあしを判定しているような内容でした。

ちょっと興味深かったのが、いくつかのテクニカル指標を組み合わせて売買判断を行う、といったもので、その効果はともかくとして、以前(といっても10年以上も昔ですが)はあまり書籍化されていないアプローチでした。
もちろん、複数の指標の組み合わせは今やむしろ当たり前であり、ネット上の記事などでは広く紹介されています。

そこでふと思ったのですが、KFシステムクリエイターのような自己相関型のシステムの場合、これはある意味、完全なテクニカル分析の土台の上に成り立っているわけです。
トレーディングシステムのロジックは、多くの場合テクニカル指標に基づいており、それを長期に渡って継続して運用したものが、システムトレードと言うことになります。

通常のテクニカル分析との最大の違いは、その継続性にあります。普通、テクニカル分析の有効性を紹介する書籍などでは、ある銘柄のチャートの一部のみを捉え、そこに定式化されたテクニカル指標を当てはめて、利益が出る出ないを解説しています。

以前から話しているように、十分長期の期間において、全ての銘柄、同一のパラメータで、利益が出るようなテクニカル指標は、恐らく存在しません。
そこで、システムトレードにおいては、十分長期の期間において、個々の銘柄、最適なパラメータで、利益が出るようなテクニカル指標(ロジック)を見出しているのです。

安易なテクニカル分析の最大の欺瞞は、有効性の継続性を軽視することにあります。これはテクニカル分析に限らず、世の中にある多くの非科学的な誘惑にも当て嵌まることです。

ある著名なサイトのネット記事で、「株価が上昇したからと言ってすぐに手仕舞いせず、トレンドに乗り続けるべし」という記述を見かけました。そして、「株価が20日移動平均を下回ったら手仕舞いすればよい」と解説していました。

こんな簡単な方法で利益が得られるのであれば、誰も苦労はしません。そして何よりも、こんな簡単な方法だからこそ、簡単に売買シミュレーションができ、その結果を直ちに判定することが出来るはずなのに、その手間すらかけずに直感の赴くまま述べているとしか思えないことが残念です。

一般人のブログ記事であれば、とやかく言う筋合いのものではないのですが、少なくとも専門家として著名なサイトの担当ページを受け持っている方の書くべき内容ではないと思います。
結局、多くの人は立派な経歴を有した識者の言うことを信用しがちであり、その見識が実際には正しくないとしても、それに抗うことは難しくなってしまいます。

さて、ここまでの話で、テクニカル分析は有用ではないと言っているわけではありません。問題なのは、その使い方にあります。
局所的なチャートを引っ張り出して、それに様々なテクニカル指標を当てはめ、利益が出る出ないと分析することは無意味です。

チャートが変われば、当然それらのテクニカル指標の有効性も変わってきます。あるチャートでは利益が出るものの、別のチャートでは損失になってしまう場合も普通に生じてきます。

では、どうすれば良いのでしょうか?

当たり前の話ですが、十分長期、例えば5年以上の時系列データを用い、対象とするテクニカル指標に基づいた売買成績を全て集計し、収益の期待値がプラスになるかどうかを確認すれば良いのです。
何のことはない、これは単に、そのようなトレーディングシステムを作成して性能を確認すべし、と言っているに過ぎません。

ここで重要なのは、客観的に過不足なくデータを集計することであり、テクニカル指標の定義に則って忠実に売買タイミングを抽出し、エントリー期間の損益を正確に求めることです。
その際、当然のことですが、売買シグナルの点灯と同時にエントリーやエグジットをすることは出来ません。必ず1ティック以上の時間を置く必要があります。

指値や逆指値を用いれば、シグナル点灯と同時にエントリーできると思われるかもしれませんが、現実的にはそれは難しいでしょう。
テクニカル指標を用いたトレードの中には、「ある閾値を超えたらその方向にエントリーする」といったロジックを有するものが少なくありません。

例えば、株価が20日移動平均を下回ったら買いを手仕舞いする、という場面を考えた時、株価が下落する方向に「売る」ことになります。これは逆指値での注文が必要になります。
しかし、逆指値の場合、必ずスリッページが生じてしまいます。長期に渡るトレードにおいて、このスリッページの蓄積は時として致命的です。

また、移動平均の値も株価に応じて微妙に変化しますし、これでは売買シグナルを忠実に再現した客観的なトレードが実現できません。

逆張り系のトレードであれば、指値で売買できると考えるかもしれません。例えば、株価の20日移動平均からの乖離率が+5%になったら「売る」といった類です。
これは見方を変えれば、予め売却価格を決めておいて、そこに指値注文を出しておく、ということです。

1回こっきりのトレードであれば、これは出来なくもありません。しかし、先に述べたように、テクニカル指標の有効性を確認するためには、トレードの継続性が必要になります。
この前提がなければ、そもそもその有効性を評価することなど、出来っこないのです。

では、このような逆張りトレードを連続して行う場合、どのような問題点があるのでしょうか?

一つは高値安値の順番です。通常の日足データでは、高値が先か安値が先かは分かりません。値動きの激しい銘柄や相場環境の場合、売買ルールによっては、1日の中で複数回のエントリーが生じるかもしれません。
その際、エントリータイミングを正確につかむためには、ティックデータが必要になります。

検証期間として最低でも5年間が必要だとすると、その分のティックデータを全て集める必要がありますが、それは非常に難しく、現実的ではありません。
また、ティックデータの場合、それぞれの売買単位は小さく、自分の売買による影響が無視できません。

そして何よりも、逆張りトレードの場合、エントリーはいくらでも待てるのですが、エグジットに関しては必ずしもその限りではありません。
損失の拡大に備えて、通常は損切りとセットで考える必要がありますが、それは結局逆指値を導入するということです。これはスリッページを生じさせます。

元々、普通に株本などで紹介されている手法は、当日の終値で判定して翌日の始値で売買する前提で用いられています。あるいは、週足や月足ベースなどに適用する場合もあります。
いずれにしても、これは判定から実際の売買までのタイミングが、1ティック以上離れていることを示しています。

さて、一般にテクニカル分析においては、分析に用いる指標のパラメータを推奨値に固定することが普通です。どんな銘柄に対してもそれは変らず、もしも上手くいきそうにない場合には、パラメータを変えるのではなく、別のテクニカル指標を適用してみるというアプローチが取られる場合が多いのではないでしょうか?

そのため、巷にある多くのチャートソフトなどでは、テクニカル指標の多さが重要なアピールポイントになっているように思います。
もちろん、それは多いに越したことはないのでしょうが、それに囚われすぎてしまうと、継続的に収益を上げ続けるという最終目標を忘れてしまうかもしれません。

一方、トレーディングシステム、特にKFシステムクリエイターでは、むしろパラメータを最適化して上手く収益化出来そうな道を探ります。
もちろん、ロジックもいろいろと変えてみるのですが、その際に銘柄の背景を考慮するようなことはしません。あくまで、パラメータと同じ土俵で走査します。

このように、KFシステムクリエイターでは基本的に、全数検索を前提としてシステムを設計します。ロジックの種類が増えれば、それだけ優れたシステムが得られる可能性は増すわけですが、それと同時にシステムの設計工数も増加してしまいます。

そのような事情から、新たなロジックの追加、特に既存のテクニカル指標の導入に関しては、どちらかと言えばやや消極的な立場を取っていました。
しかし、多くの人がテクニカル指標の多さを求める傾向が高いのであれば、そのような方向性を考える必要があると感じています。

そこで来年以降、新たなロジックの追加を順次行っていくことにしました。もちろん、ユーザーの方にはその都度ロジックを無償提供していきます。
そうすることで、KFシステムクリエイターはテクニカル指標の評価装置としても、用いることが出来るようになるでしょう。

さて、冒頭でテクニカル指標の組み合わせによるトレードについて触れました。これは取りも直さず、トレーディングシステムを合成することと同義です。
例えば、移動平均とRSIの組み合わせで売買判定を行うと言うことは、移動平均システムとRSIシステムとを合成すると言うことです。

この場合、それぞれの指標は互いにフィルタとして機能します。しかし、システムとして考えた場合には、そのフィルタという概念は、システムのロジックと同一になります。
これについては、2010年11月15日の記事「フィルタはシステムだ!」をご参照ください。

単なるテクニカル分析の延長線上で指標の組み合わせの優劣を確認する場合、それは果たして正確に売買を再現できるのでしょうか?
それを確認するためには、トレーディングシステムというきちんとした道具を用意する必要があります。

「テクニカル分析によると、あの時あのタイミングで買って、あのタイミングで売っていれば利益が出ていた」などと言うのは、実は何も言っていないことと同じです。
テクニカル分析を極めると言うことは、システムトレードを極めることと同義なのです。

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