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新しいベーシックインカムの話をしよう(2)~お金に色を付けろ!~ [投資・経済全般]

ベーシックインカムの導入に当たり、重複する各種制度は大幅な見直しが必要になります。基本的には、それまで存在していた各種社会保障制度は、停止もしくは大幅な削減を余儀なくされるでしょう。

子供手当については、ベーシックインカムによる給付で完全に置き換えることが出来ます。ただし、市町村等の各自治体において独自に設ける制度については、それを除外するものではありません。

失業給付も、基本的にはベーシックインカムで置き換えることが出来るでしょう。ただし、失業以前に高額収入を得ていた人に対しては、何らかの激変緩和措置が必要になるかもしれません。
あるいは、現行の雇用保険制度を拡張しても良いでしょう。

生活保護に関しては、単身を除く多くの場合で、一人当たり月10万円(子供は5万円)のベーシックインカム収入の方が上回ります。
ただし、生活保護を受給する大きな要因となっている、身体的あるいは心因性の障害に対する医療や介護等に関しては、別途公助が必要かもしれません。

また、住宅に関しては、全国で増加している空き家を上手く活用する等、行政側でできることは多くあります。
人権としての居住の自由は大切ですが、選択肢の一つとして転居を提案することも、重要なのではないかと思います。

2021年度の社会保障給付費は総額129.6兆円で、その内訳は年金が58.5兆円、医療費が40.7兆円、福祉その他が30.5兆円となっています。
ベーシックインカムが担うのは、当面は福祉その他の項目の一部であり、それだけならば前回示した基礎賃金に基くベーシックインカムに置き換えることができます。

しかし、将来的には年金をベーシックインカムに組み込んでいくことが必要になってきます。それは現状で約60兆円であり、月10万円を超える部分を自己積み立てにするとしても、約50兆円(4,100万人×120万円)もの新たな財源が必要になります。

現状の国民年金制度のように、月々支給されるベーシックインカムの中から、老後のベーシックインカム分を積み立てれば良いと思われるかもしれませんが、それは現実的ではありません。

例えば、15歳から65歳まで50年間分のベーシックインカムの一部を積み立てて、65歳から90歳(65歳の平均余命+α)までの25年間分を賄うとすると、単純計算でベーシックインカムの内半分を積み立てに回さなければなりません。なお、ここでは運用による積立額増減は考えません。

もっとも、この議論には元々おかしなところがあります。それは、ベーシックインカムの一部積み立てを実行する場合、例えば15歳から65歳までの実効給付額は5万円であるのに対し、65歳から90歳までは満額10万円が給付される、ということです。

各世代の給付額を均一にするには、65歳までの給付額の33.3%を積み立てて行けば、65歳から90歳までの給付額は満額の66.7%となり、世代間の格差がなくなります。
実際の金額で示すと、10万円の内3万3千円ほどを月々積み立てて行けば、65歳以降、平均寿命を迎えるまで、月々6万7千円ほどの給付を受けることが出来るわけです。

この積み立て分を国が管理し、ベーシックインカムの実効給付額を6万7千円に設定すれば、現行制度の枠組みの中で、将来に渡ってベーシックインカムを実現することが可能となります。

ここで、ベーシックインカムの給付額として15万円を想定すれば、実効給付額を当初給付額の10万円とすることが出来ます。
しかし、そうすると、元々の基礎賃金が625円から938円ほどに上昇してしまいます。これは非正規雇用者の賃金増加分を打ち消す作用があり、望ましいものではありません。

また、ベーシックインカムの給付額が5割増となる事で、当然、必要財源も5割近く増加します。約20兆円の必要額に対し、計算上は約30兆円が必要になるわけです。
ただし、15歳未満への支給額は変らず5万円のままでよく、また国民年金受給者の不足額も無くなるため、実際にはほとんど増加分は無いことが分かります。

何かキツネにつままれたような感じですが、実はこれには致命的なカラクリがあります。

基礎賃金分を拠出する企業側から見ると、企業は雇用者の賃金の内15万円分を国に治め、それを超過する分を雇用者に直接支払うわけです。
国は15万円の内5万円を積み立てに回し、残りの10万円を雇用者側に給付金として渡します。

もうお分かりのように、このままでは雇用者側の手取りが5万円少なくなってしまいます。これを労働者人口6,800万人に割り当てると、年間総額は約40兆円になります。更に、15歳以上の非就業者には、そもそも企業からの拠出分がないわけですから、それを加味すると総額は概算で50兆円ほどになります。

実は、このようなややこしい制度にしなくても、65歳以上の給付は全額、国が拠出するとした場合でも、約50兆円(4,100万人×120万円)の財源が必要になります。
結局、ほとんど同じ結果になることを、見かけ上のやり方を変えてみただけに過ぎません。

ただし、敢えて月々5万円を積み立てることにすると、例えば現状制度と同様に、企業や国民に一定程度の負担を要請しやすくなります。
例えば、企業と国民に15千円ずつの負担をお願いし、国が残りの2万円を負担するとすれば、必要財源増加分は20兆円ほどで済むことになります。

また、積み立て分を運用することにより、実質的な負担額を低減することが出来るかもしれません。
もっとも、それは負担額の低減よりも、将来の給付金増額のために利用すべきでしょう。

さて、いずれにしても、将来の年金支給を見据えた場合、20~50兆円規模の財源が必要になる事は避けられません。
それを賄うためには、税金で何とかするしかありません。

例えば、消費税でこれを賄うとすれば、現状における消費税率1%当たりの税収は約2兆6千億円と言われていますから、最大で20%ポイントの増税が必要になります。
現行の10%と合わせると、何と30%です。現在の北欧諸国における税率が25%ですから、それをも上回ってしまいます。

そもそも、社会保障としてベーシックインカムを導入したのに、その内の最大30%を税金として返すようでは、意味がありません。
最低限、給付金は消費税も含めて非課税とするべきです。そのためには、給付方法についても、よく考える必要があります。

もちろん、現行制度では消費税を非課税扱いにすることは困難です。すなわち、制度自体をガラリと変えなければなりません。
そのキーワードとなるのが、「お金に色を付ける」ということです。

現在、国はマイナンバーカードの普及に力を入れています。しかし、なかなか普及率は上がらず、未だ4割程度に留まっています。
もしもベーシックインカムを実現しようとするならば、このマイナンバー制度を利用しない手はありません。

マイナンバーと銀行口座との紐付けを嫌う人は少なくありませんが、いっそのこと給付専用口座を国が勝手に国民に供与すれば良いのです。
マイナンバーと紐付けられたこの専用口座は、国や自治体からの入金は可能だが他からの入金は出来ず、出金や振り替え、引き落とし等は自由にできる、という性質を持たせます。

更に、名義人及びその保護者(後見人)以外は使うことが出来ず、名義人が死亡したら国に返納されるものとします。
この口座の管理母体は国もしくは日本銀行とし、認可された他の金融機関が出金や引き落としなどの実務を行うことが出来ます。

そして、これが一番重要なのですが、この口座から支出されるお金には消費税が掛からないようにします。
そうすることで、月当たり10万円、年間120万円の消費税非課税枠が実現できます。

もうお気付きのように、これは「お金」というよりは「ポイント」に近いものです。ちょっとこじゃれた言い方をすれば、「デジタル通貨」と呼んでも良いのかもしれません。

また、名義人の生存中のみ付与されるという性質から、この「通貨」には自ずと総発行額の上限が存在します。
その「発行額」は最大で約1京円となりますが、その大半が消費に回されるため、実際の流通額はせいぜいその数%程度と考えられます。

なお、月間の消費支出は1世帯当たり23万円ほどで、全世帯数は約6千万世帯ですから、総消費支出は月当たり約14兆円、年間で約166兆円となります。
一方、2020年度の消費税収入は約21兆円であることから、逆算すると約200兆円の消費支出があった、ということになります。

ここで、ベーシックインカム分を非課税とすると、最大で年間150兆円分の消費支出が非課税になるため、残りの50兆円に30%の消費税を課しても、税収は15兆円にしかなりません。現行の21兆円をも下回ってしまいます。

結局、ベーシックインカムの財源を消費税増税に頼る限り、給付金全額を消費税非課税にするのは難しいことが分かります。
妥協案として、給付金には従来通り10%の消費税を課し、それ以外には30%の消費税を課すものとすると、単純計算で約15兆円の税収増になります。

しかし、税収を増やすために個人消費に頼るには限界があり、やはり法人から如何にして徴収するかが課題となります。
そのための一つの方法が、AI・ロボット税の導入です。

これは、AIやロボットの導入により労働者が削減される場合、本来労働者が支払うはずであった税金を、AIやロボットを導入した企業に課すというものです。
これをベーシックインカムに絡めて考えると、雇用者削減分の拠出金を国に納める、ということになります。

拠出割合は導入したAIやロボットの能力に依存し、ロボット1台当たりの削減人数が多いほど、拠出金は増えることになります。
削減された労働者が他社で働くことが出来れば、そこから新たな拠出金が創出され、ベーシックインカムの財源が増加することになります。

将来的には、この制度を適用された企業の収益力に応じて拠出金の割合を調整すれば、労働力人口に依存しない安定したベーシックインカム制度が実現出来るのではないかと考えます。

これらは荒唐無稽な話に聞こえるかもしれません。しかし、数10年という長いスパンで見た場合、けして実現不可能な世界ではないと信じます。
日本社会が疲弊して再起不能になる前に、建設的な議論が進むことを願います。

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