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続・定額投資法 [投資・経済全般]

株式の長期(保有)投資は、株式を日々複利運用していることと等価です。これは、株式を毎日引けで売ると同時に、同額・同数を引けで買い直すことを考えれば分かります。
これはまた同時に、単株運用であることも示しています。

では、株式を単利運用した場合はどうなるでしょう?

すなわち、保有している株式を毎日引けで売ると同時に、最初に決定した金額分だけ買い直すという作業を、日々繰り返すわけです。なお、ここでは便宜的に、引けにおけるこのような取引が可能であると仮定します。また、売買株数は単元株単位に限定しません。

この時、通常の株価推移(累積株価)と、単利運用した場合の株価推移(累計株価)とは、一般に異なったものとなります。
なお、累計株価を求めるには、日々の株価増減率を加算して、それに計算開始時の株価を乗じていくだけです。

このようにして求めた累計株価と累積株価の各推移の、いくつかの事例を次図に示します。

システムトレード_累計株価_201024a.png
システムトレード_累計株価_201024b.png
システムトレード_累計株価_201024c.png

日経平均株価の場合は、下値はほぼ同じ水準ですが、株価上昇時には累計株価が大きく上回っていることが分かります。
昭和電工では、1999年以降に累計株価の上昇が顕著になり、それは現在まで続いています。

一方、トヨタ自動車の場合は他の2つとは異なり、累計株価は累積株価を平準化するような推移となっています。直近やピークにおける株価は累積株価の方が高いですが、累計株価の方がドローダウンが小さく、一見低リスクのように見えます。

これらの事例を見る限り、累計株価の方が累積株価よりも有利に見えますが、実は必ずしもそうとは限りません。
次図は東京電力HDの株価推移を示したものです。

システムトレード_累計株価_201024d.png

こちらも比較開始からしばらく経過すると、徐々に累計株価が累積株価を上回っていきます。しかし、2011年の東日本大震災による福島第一原発事故で株価は暴落し、東京電力HD株は2013年9月5日に終値で123円まで下落しました。

その時、累計株価は何と-3,717円まで下落しています。これは、当初3,400万円ほどで単利運用をスタートした場合、その元金を使い果たして更に3,700万円余りの追加投資を強いられたことになります。
幸いにもその後の株価回復により半年余りで追加投資分を回収し、更には元本を一時回復するまでになっています。

これが複利運用(長期保有)を行った場合は、一時元本の96.4%を失いますが、その後ピークで27%まで回復しています。現在は再び低迷し、元本の8.5%ほどに落ち込んでいます。

複利運用では株価下落時に運用可能額も低下するため、元本がゼロ以下になることは基本的にはありません。一方、単利運用では株価下落時に元本を補填する必要があるため、元本以上の追加投資を強いられる場合があります。

このように、単利運用では時として非常に大きなリスクを背負うこともありますが、累計株価の推移を見ても分かるように、多くの場合は累積株価、すなわち長期保有と比べて有利な運用となります。

これは実は理論的にも裏付けられています。それは、例えば2006年5月11日の記事「複利リターンの(Ra,σ)依存性」で解説しているように、株価推移の標準偏差がある値より大きいと、単利リターン(平均リターン)が複利リターンよりも大きくなるのです。

そして通常の株価の推移というものは非常にばらつきが大きく、標準偏差が上記閾値を超える場合が大半です。その結果、累計株価の方が累積株価よりも大きくなるという結論が得られます。

さて、ではこの累計株価を実際の投資に適用するには、どのようにしたらいいのでしょうか?

毎日引けで全株式をいったん売却し、それと同時に元本分を買い直すという行為は、毎日、元本の不足分を買い増すか超過分を売却することと等価です。

終値を正確に予測することは不可能ですが、ある程度近い値を予想することは可能かもしれません。その予想値に基いて、過不足分を修正する程度なら、全体としてさほど大きな誤差は生じないでしょう。
手数料を考慮しないのであれば、その程度のやり方でも、長期保有に対して十分なエッジを得ることが出来るかもしれません。

これを「定額投資法」と呼ぶことにしましょう。いわゆる定額購入法(ドル・コスト平均法)と似てはいますが、別物であることにご注意ください。
ただし、全く関係がないわけではありません。考え方自体は非常に近いものがあります。

定額投資法には様々なバリエーションがあります。先の例では、日々資産残高を更新する"究極の"定額投資法を示しましたが、これを週単位、あるいは月単位で行っても良いかもしれません。
その場合、多少投資効率は落ちるかもしれませんが、手数料をゼロにできない状況では逆に有利になります。

あるいは、株価が例えば10%下がったら買い増し、10%上がったらその分を売却する方法も考えられます。これはいわゆるリバランスと同じ考えです。
定額投資法とは運用資金を常に一定に保つ手法ですから、結局それはリバランスと同じということになります。

一般的なリバランスは、ポートフォリオの比率を再調整するということに主眼が置かれますが、これを単独の株式で実践するという手法が定額投資法なのです。
そして、これが最も重要なことなのですが、定額投資法とは理論に裏打ちされた投資手法である、ということが言えるかと思います。

一方で、株価推移によっては非常に大きなリスクを伴う手法でもあります。そのため、銘柄の選定には十二分に注意すると共に、下方リスクを考慮した資金管理や運用方法等を用いる必要があります。

定額投資法は、インデックス(運用対象株式の長期保有)には勝てる可能性が高いですが、絶対的な収益や安定性の追及には向きません。何よりも、資産カーブの推移は株価任せであり、通常のシステムトレードのようなロバスト性が得られる可能性は小さいでしょう。

ただし、トレーディングシステムが機能し続けるという絶対的な保証はありませんが、定額投資法では株価が暴落したり、その結果上場廃止になったりしない限り、その機能を維持し続ける可能性はあります。
長期的視点で見た場合、どちらの投資手法が有利なのかは、現時点では分からないのです。

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Kフロー

過去ブログを読み返していたら、同一タイトルの投稿がありました。
内容の細かな点は若干異なりますが、混乱を避けるため、こちらのタイトルを変更いたしました。
よろしくご理解くださいますよう、お願いいたします。
by Kフロー (2020-11-11 17:40) 

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