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システムトレードと株式長期保有との運用成績比較 [システムトレード]

システムトレードと株式長期保有との差は、一体どこにあるのでしょう?
資産カーブと株価推移とを比較すれば、それは一目瞭然ではあるのですが、具体的な性能指標での比較となると、事はそう単純ではありません。

何故なら、システムトレードにおける損益は、トレード毎に決まるのに対し、株式長期保有における損益は、一般に事前に決定した各期末毎に決定されるからです。
両者の成績を比較するためには、同じ期間毎の成績を求めて比較する必要があるわけです。

KFシステムクリエイターのユーティリティツール群であるKFシステムコントローラには、KFシステムアナライザという成績分析ツールが登録されています。
今回は、それを用いてシステムトレードと株式単純保有との成績を比較し、その違いを明らかにしたいと思います。

比較に用いた銘柄は、3407旭化成です。本銘柄を採択した特段の理由はありませんが、少なくとも恣意的なものではありません。
分析期間は1993年12月14日から2021年3月26日までの約27年3か月間、比較対象システムはRSI逆張り逆システムです。

分析結果の年毎成績サマリーを、次図に示します。また、3407旭化成の株価推移と、RSI逆張り逆システムのドテン運用時損益累計を、併せて示します。
なお、サマリー上の期毎成績は1994年以降1年単位となっており、1993年分と2021年分は含んでおりません。
3407旭化成_運用_20210328a.png
3407旭化成_株価推移_20210328b.png
3407旭化成_資産カーブ_20210328c.png

KFシステムアナライザでは、決算期を年毎、四半期毎、月毎の3通りに設定できます。ここで年毎の場合は、期末を3月末ではなく12月末としています。
これは、個人の確定申告を考えた時に、通常は12月末を区切りとするためです。

上掲のサマリーは、年毎の結果を示したものです。ヒストグラムの項目は、株価推移もしくは損益累計の回帰直線を求め、その周りに分布する実際値の標準誤差や最大残差(乖離値)を求めています。
また、株価推移や損益累計チャートにおいて、回帰直線を青線、回帰直線からの残差を緑線で示しています。

両者を見比べると、当然のことですがシステムトレードの方が回帰直線の傾きが大きいことが分かります。株価は回帰直線を挟んで大きく上下しながらも、全体として緩やかな上昇基調にあります。
一方、システムトレードでは、損益累計は回帰直線から大きく離れることなく、推移していることが見て取れます。

次図は、株価推移及びドテンシステム損益累計の、回帰直線からの残差のヒストグラムです。
3407旭化成_株価_ヒストグラム_20210328d.png
3407旭化成_システム_ヒストグラム_20210328e.png

これらを比較してみると、意外なことに両者には大きな差がないことが分かります。株価の場合は、概ね-400~+800円、システムの場合は、概ね-300~+500円の範囲となっています。
システムの方が多少は残差が小さいですが、株価や資産カーブと、それらの回帰直線との乖離から感じる印象とは大きく異なります。

サマリーの期毎成績を見ると、勝率は(ドテン)システムの方が15ポイントほど大きいですが、平均利益率は株式単純保有の方が、システムの3倍近くも大きいことが分かります。その一方で、平均損失率は株式の方が5倍近くも大きくなっています。
なお、ここで言う勝率や平均利益率等は、あくまで年単位での成績になります。

実際には、1994年1月1日から同12月31日までを1年目、1995年1月1日から同12月31日までを2年目、・・・・・・、2020年1月1日から12月31日までを27年目とし、各年次の中で株価もしくは損益がプラスになった年の割合を勝率、プラスになった年の利益を平均したものを平均利益率、などとしています。

各年の騰落や勝敗を分かりやすく示したチャートが、次図になります。上段が株価、下段がシステムの損益です。赤い実体が陽線、青い実体が陰線となっています。
なお、1993年分と2021年分は、サマリーに反映されていない参考値です。
3407旭化成_株価_年毎成績_20210328f.png
3407旭化成_システム_年毎成績_20210328g.png

これらを見ると、株式の場合は個々の実体が全体的に大きく、それが平均利益率や平均損失率を、システムの場合と比較して大きなものにしていることが分かります。
また、損失レシオは平均利益率と平均損失率との比であり、システムの方が7割ほど大きくなります。

特筆すべきは、株価推移における平均リターンの大きさです。年間6.92%は、システムをも超えています。その一方で、年率リターンはわずか2.11%しかありません。これは、株式を27年間保有し続けた場合、1.76倍になるに過ぎません(配当未考慮)。

その理由は明白です。株価推移が複利運用に等しいことは、これまでに何度も記してきました。すなわち、1994年末に600円で保有を開始した当該銘柄の株価が、27年後には1,055円ほどになったという事実を示しているに過ぎません。

一方、システムの場合は年率リターンが6.15%と、株価推移の3倍ほどあります。これを27年間に渡って複利運用したとすると、累積資産残高は5.01倍になります。
当初、100万円で運用を開始すると、昨年末で500万円ほどになっている計算になります。あるいは、株価と比較すると、当初600円で運用を開始したら3,006円まで株価が上昇したということと等価です。

もっとも、これはあくまで年単位での成績に基づいた結果です。実際のシステム複利運用では、トレード毎に資産を元本に繰り入れていくため、結果は大きく異なります。
その場合の年率リターンは昨年末時点で10.96%となり、時価累積損益率は16.58倍になります。100万円が1,658万円になる計算です。年単位の運用よりも3倍ほど効率的です。

ちなみに、株式を単利運用した場合、すなわち毎年の期末にリバランスを行って投資元本を一定額にした場合、27年後の資産残高は2.87倍になります。
これは単純に株式を保有し続けた場合と比べると、6割ほど資産が増えたことを意味します。

一般に、平均リターン≫年率リターンの場合、期末毎にリバランスを行う戦術は非常に有効です。そして、多くの銘柄はこの条件を満たしていると思われます。
これはドルコスト平均法に近い手法ですが、ドルコスト平均法が資金を定期的に積み上げていくのに対し、リバランスを行うこの手法は、資金額を一定に保ったままで運用を行うことが出来ます。

システム運用の場合は、平均リターン≒年率リターンとなることが多く、リバランスを行うよりも複利運用を行った方が資産は増加します。
今回の事例では、平均リターン6.68%の単利運用で27年後には資産は2.80倍、6.15%の複利運用で前述の通り5.01倍になります。

さて、投資信託等の運用安定性を評価する指標として、シャープレシオがあります。シャープレシオにつきましては、過去の記事「シャープレシオの計算方法」で解説しておりますので、そちらをご参照ください。
一般に、シャープレシオが大きいほど、リスクが小さくリターンが大きい運用が可能であるとされます。値が0.5~0.9で普通、1.0~1.9で優秀、2.0以上で非常に優秀、とされています。

株価推移とシステム運用におけるシャープレシオを比較すると、株価推移のそれがわずか0.05であるのに対し、システムはドテン運用で0.52となっています。
当該システムの場合、辛うじて0.5台に乗っており、投資適格性はギリギリOKといったところでしょうか。一方、株式単純保有の場合は、リスクに見合うリターンが全く得られていないことが分かります。

ちなみに、シャープレシオを求めるに当たって、短期金利を0.5%として計算しました。現在はほとんど0%としても良いのでしょうが、27年前からの無担保コールレートを調べてみると、1994年1月から1995年3月が平均で2.2%程度、その後1995年4月に1.5%まで低下した後、同9月に0.5%台に下がり、以降1999年2月に0.2%、その後はほぼ0%が続きました。2007年に0.5%台まで上昇するも、2010年には再び0.1%を切り、2016年にはマイナス金利に転落して現在に至っています。まあ、0.5%というのはやや大きめの水準かな、という感じです。

以上のように、株式長期保有とシステム運用を、同じ土俵で比較することにより、両者の違いが明確になります。予想もしくは期待した結果とはいえ、システム運用の方が株式単純保有よりも有利であることが分かりました。
ただし、単利運用を行った場合はその限りではなく、特に3407旭化成の場合は、1年毎のリバランスあり株式保有の方が、システム運用よりもリターンが大きくなりました。

もっとも、通常のシステム単利運用ではトレード毎に資金のリバランスが生じるため、実効的な平均リターンは13.81%と、年単位でリバランスを行った場合に対して2倍ほどになります。
何故ここまで大きな違いになるのか疑問ではありましたが、性能指標の導出過程を調べてみてもおかしな点は見られませんでした。今後、改めて検証したいと思います。

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コメント 2

シストレ初心者

2点質問よろしいでしょうか。
・長期保有の場合は平均リターンが年間6.92%とありますが、どのように算出されているのでしょうか。
・システムでは年率6.15%とありますが同様に複利が効く米国などのインデックス投資と比べると結局同等のリターンに思えます。今回のタイトルである「システムトレードと株式長期保有との運用成績比較」ですが、どちらがよいかその結果は結局のところ選定銘柄と使用したシステムによってどちらにもなりうるものだと思いますが、その点いかがでしょうか。
by シストレ初心者 (2021-06-19 20:44) 

Kフロー

コメントありがとうございます。
しばらく更新していなかったため、コメントに気付くのが遅れてしまいました。回答が遅くなってしまい、申し訳ありません。

長期保有の平均リターンは、年毎の損益率(騰落率)を足し合わせ、年数で割ることで求めています。要するに、単純に年毎の平均値を出しているだけです。

システムのリターンは、株式のリターンと比較するため、株式同様、年毎に区切って集計しています。年率リターンも、同じ方法で求めているため、結果的にご指摘の値となっています。

実際のシステムでは、集計基準がトレード毎となっています。その結果、平均リターンは14.62%、年率リターンは11.68%が得られており、米国などのインデックス投資と比べても、高いアドバンテージを有していると考えます。

もちろんシステム性能は、銘柄選定と使用したシステムの影響が大きく、システム設計の過程では、全く使えないようなシステムを大量に産出します。そのようなシステム群の中から、機能するシステムを抽出していく過程は必須となります。

by Kフロー (2021-07-04 10:34) 

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