SSブログ

資本主義と社会主義、民主主義と専制主義:資産カーブと管理限界 [投資・経済全般]

トレーディングシステムの性質を最もよく表す評価項目として、資産カーブとその標準誤差推移があります。
これは、日付に対する資産残高推移もしくは累計資産増減率推移と、その回帰直線およびそれから標準誤差の2倍離れた平行線をプロットしたチャートです。

220314a01.png

これを簡単に、「資産カーブと管理限界」と呼ぶことにします。「資産カーブ」が「資産残高推移」、「管理限界」が「回帰直線と平行な直線」を意味します。
システムトレードにおいては、このチャートを見れば凡そのシステム性能の見当がつきます。

一般的には、資産カーブの傾きが大きくて、管理限界の幅(レンジ)が狭いほど良いシステムであると考えられています。
また、資産カーブが管理限界から逸脱する量や頻度が少ないほど、安定した運用が可能となります。

この資産カーブと管理限界の考え方は、システムトレードに限らず、世の中のあらゆる物事に適用することができます。
この時、資産カーブに相当するものは、統計量や物理量もしくは概念の推移、管理限界はそれらから統計的に求められる客観量です。

例えば、資本主義を資産カーブで表すと、傾きが比較的急峻であるものの、管理限界のレンジがやや広い、というイメージになります。
一方、社会主義の場合は、傾きは資本主義ほど急峻ではないものの、管理限界のレンジは狭い、というイメージになるでしょう。

これらをEERで比較すると、いずれも同程度になるかもしれません。
資本主義はEERの分子をいかに大きくするかを追求し、社会主義はいかに分母を小さくするかを追求する形態であるといえます。

資本主義はある程度の格差を容認し、全体として資産カーブを上昇させようとします。そのため、資産カーブのロバスト性(直線性)には目をつぶります。
その結果、管理限界のレンジが比較的広くなってしまいますが、全体としては右肩上がりを持続します。

社会主義の場合は、格差を出来るだけなくそうとします。そのため、資産カーブのロバスト性は良好ですが、上昇力は資本主義ほど大きくなりません。
もちろん、管理限界のレンジは狭くなるため、一見安定した推移となります。

これらの関係は、資本主義を民主主義、社会主義を専制主義に置き替えても、ほぼ成り立ちます。
民主主義は様々な意見の相違を容認しつつ、全体としての発展を目指します。一方の専制主義は意見の相違を認めず、統制の取れた社会を是とします。

問題は、どちらのシステムがより優れているか、ということです。
トレーディングシステムではEERが大きいほど良いと考えますが、上記の事例ではEERに大きな違いはありません。理論的には「どちらでもよい」ということになります。

しかし、共に行き過ぎた事例を示すことはできます。これをトレーディングシステムで考えてみます。
なお、以下の説明はあくまで私の経験に基づくものであり、必ずしも客観的に正しいという訳ではありません。

最初に資産カーブのロバスト性が悪く、管理限界のレンジが極めて広い事例です。
この場合は、平均的には右肩上がりの資産カーブであり、管理限界から逸脱することもなくレンジ内を推移するように見えます。

長期的に捉えた時、資産カーブが右肩上がりであることから、最終的な資産残高は上下動を伴いながらも、平均的には増えていきます。
しかし、複利で考えると話は違ってきます。資産変動があまりに大きいと、累積損益率は1を大きく下回ってしまいます。すなわち、資産が増えるどころか大幅に減少することになります。

一方、資産カーブのロバスト性が高く、管理限界のレンジが極めて狭い事例では、一見すると極めて良好な資産推移を示します。
累積損益率で見るとその傾向はより顕著になり、複利効果によって資産残高は指数関数的に増大します。

しかし、このようなシステムは通常、過剰最適化という可能性を孕んでいます。そのため、資産カーブが管理限界を大きく外れると回復力を失い、最悪の場合、同推移は転落の一途をたどります。

過剰最適化を避けるための、絶対的な方法は存在しません。経験的には、資産カーブ形成の前提となる各種条件から逸脱しないように、運用を継続できるかをチェックする必要があります。
その一つが統計期間であり、もう一つが最適パラメータ継続期間です。

統計期間は、資産カーブの形成に当たって、いかに多くの経験値(事象)を反映させるかを決定します。
より多くの経験を積んだ資産カーブであればあるほど、新たな経験に対する反応がより的確になると考えられます。

このようにして形成された資産カーブは、過去の大きな原体験の変動を乗り越えて構築されているため、管理限界のレンジはある程度広くなってしまいます。
しかし、それが結果的に管理限界付近からの中央回帰を呼び覚まします。

例外を棄却したり、直近の事象ばかりで形成された資産カーブは、それに当てはまらない事象が起きると、管理限界付近からの中央回帰が働きません。
その結果、資産カーブは管理限界を容易に突き破り、決して戻って来ない状態に陥ると考えられます。

なお、資産カーブはパラメータの変化に対して極めて脆弱です。通常、システムロジックにおいて最適パラメータが変化すると、その資産カーブは大きく変化します。
ここで重要なのは、最適パラメータは連続的に変化するのではなく、ポイントからポイントへジャンプ(遷移)する、ということです。

そのため、最適パラメータの遷移(変化)によって、資産カーブはドラスティックに変化します。
そうなると、それまでの経験はすべて白紙に戻り、新たな経験に基づいた資産カーブでの運用を余儀なくされます。

それがより良い結果を生む場合ももちろんありますが、多くの場合、管理限界のレンジは広がり、EERは低下します。
すなわち、いくら高EERの理想的な運用を目論んだとしても、管理限界から大きく外れた途端にそれまでの資産カーブは破棄され、管理限界のレンジが広く、より低いEERに甘んじた資産カーブでの運用にならざるを得ません。

さて、こうして考えると、社会主義や専制主義の脆弱性が見えると共に、それらがいずれは最適パラメータの遷移によって、管理限界のレンジが広いシステムに移行する様子を説明できます。

その状態は正に資本主義や民主主義の資産カーブであり、社会主義や専制主義はいずれ崩壊して、それらの状態に落ち着くのではないかと思えます。
しかし、その過程は一筋縄ではいきません。資産カーブの再形成に当たっては、一旦、管理限界のレンジが急拡大します。更には資産カーブの上昇力は低下し、システムとしては最悪の状態に陥ります。

その後、新たな最適パラメータが機能し始めることで、ようやく資産カーブは落ち着きを取り戻していきます。
同じロジックで考える限り、その資産カーブは崩壊前の状態に戻ることはなく、長い年月をかけてようやく有効に機能していくことになります。

ここで、思い切ってそれまでのロジックを捨て、新たなロジックでシステムを再構築する場合もあります。
その方がシステムの回復に掛かる時間を短縮できる可能性がありますが、同じ経過を繰り返してしまう可能性も除外できません。

結局のところ、資本主義や社会主義、民主主義や専制主義という枠組みは、資産カーブから見れば単に異なる側面を表しているに過ぎません。
理想的な資産カーブとは、ある程度広い管理限界のレンジを許容しつつ、相応の上昇力を維持し続ける、と言えるかもしれません。

そこへのアプローチ方法は一つではなく、資本主義側から目指す場合もあれば、社会主義側から目指す場合もあるでしょう。
その一つの答えが、EUであったり中国であったりするのかもしれません。

ちなみに、専制主義に関しては、政治的には独裁に陥る場合が多く容認しがたいものがありますが、企業活動においてはむしろ独創性を生み出す源泉になっている事例が多々あるように思います。しかし、それも度を過ぎれば萎縮や盲従を生み出し、企業活動を停滞させる要因になります。

いずれもリーダーの資質次第であり、上手く機能している内は大きなプラスの作用となりますが、いずれは弊害が出てきてしまう事例が多々あります。
その最大の要因はリーダーの変質であり、長期に渡って自らを律し続ける事が如何に困難かを物語っています。

優れたリーダーがその資質を維持するために、自らを律し続ける必要があるのは言うまでもありませんが、自らが変質してしまった時にリーダーを降りて次のリーダーに託すための、公正で厳格な仕組みを作り上げることが、最重要の仕事なのではないかと思います。

自らの任期を終身化したり、犯した罪を罷免したりすることは、リーダーとしての資質を自らが放棄する行為であり、到底容認できるものではありません。
そのような人物がリーダーとして居座っている組織は、いずれ朽ちていく運命にあるものと考えます。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。