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「数理トレード学」のススメ [投資・経済全般]

先日、ココナラブログに「トレード新思想体系」というレポートを掲載しました。これは、以前So-netブログ(現SSブログ)に連載していた同名シリーズをまとめたもので、大幅な加筆修正を行っています。
有料ブログではありますが、興味のある方は是非ご一読ください。

さて、レポートを掲載したのはいいのですが、そのレポートのタイトルだけでは内容が把握しづらいことに気付きました。
何よりも、タイトルが抽象的すぎて、インパクトに欠ける印象です。

しばらくタイトルを見ている内に、「数理トレード学」という言葉が浮かびました。
もちろんこれは、私が造り出した造語であり、一般的に認知されているものではありません。

しかし、当レポートの根底に共通して流れる思想には、トレードを客観的、普遍的、一意的に科学する、という思いがあります。
そのように考えた時、「数理トレード学」という言葉は、正にそれを表しているのではないかと思えました。

そこで、副題として「~数理トレード学への招待~」という一文を追加しました。これにより、私が伝えたいことが多少なりとも明確になったのではないかと思います。
とは言え、「数理トレード学」とは結局何ぞや、という疑問を持つ方がほとんどでしょう。

そこで、今回は、私なりに考える「数理トレード学」について、ご説明したいと思います。

トレードを行うに当たって、何の判断材料も持たずに適当に売買を繰り返す人は、ほとんどいないことでしょう。
売買判断の裏には、必ずその人なりの何らかの根拠が存在します。

経済指標を重視する人にとっては、ファンダメンタルな判断材料に基いたトレードが重要と考えるでしょうし、売買タイミングを重視する人にとっては、テクニカルな判断材料に基いたトレードが重要だと考えるでしょう。

ファンダメンタル指標に関しては、その有効性はともかくとして、ほとんどが離散的な情報に留まることから、本質的に数理科学向きではありません。
一方、テクニカル指標は通常、株価推移などの連続的な数値変化を演算することから、数理科学的な分析が可能です。

しかし、残念ながら、現在一般的に認知されているテクニカル分析の多くは、前提となる定義そのものが客観性に欠け、科学的とは言えないのが実情です。

例えば、移動平均ひとつを取ってみても、その移動平均期間に関しては、5日や20日、75日など、主観的な数字が推奨されています。
もちろん、それらの数字を採用する根拠は承知していますが、残念ながら明確なエビデンスはありません。

すなわち、この指標は投資家が「主観的」に売買判断を行うためのものであり、トレードにとって有効な数理科学モデルとはなり得ないのです。
実際、これらの指定された移動平均期間に基いた売買を継続すると、多くの場合で損失が蓄積していきます。

ただし、移動平均というテクニカル指標が問題なのではありません。移動平均期間を調整すれば、継続的に利益を上げることが出来る場合があります。
一方、その条件は銘柄によって異なりますし、どのような条件を適用しても収益化できない銘柄も存在します。

結局、移動平均期間と言うのは極めて重要な「変数」であり、これを「定数」として扱うこと自体に問題があるのです。
更には、「銘柄」もまた変数であり、これを一括りにして定数化することも問題です。

これは普遍性を追求する姿勢と相反するように思われますが、普遍性とはそもそも、「対象の性質が変化しない条件の最大公約数」的な意味合いであり、トレードという性質に着目すれば、それが意味をなさなくなる条件をあえて付加することは無意味です。

むしろ、「移動平均期間」や「銘柄」を変数として方程式に組み込み、そこから様々な解を導いて分析する方が、より「普遍的」であり「客観的」であるはずです。
もちろん、その方程式から導かれる解は、「一意的」に決定される必要があります。

なお、ここでは「方程式」という言葉を用いましたが、これはあくまで比喩表現です。実際には、数値解析やシミュレーション等を用いることの方が一般的でしょう。
このように、数理科学的な手法を用いてトレードを分析する学問を、「数理トレード学」と名付けたわけです。

上の例では、移動平均における移動平均期間について言及しました。次に、もう一つの事例として、トレンドラインについて説明いたします。
トレンドラインそのものについては、多くの書籍やサイトで紹介されているため、あえて説明しませんが、ここではその問題点について考えます。

トレンドラインは株価の下値抵抗線となる場合が多いことから、重要なテクニカル指標の一つとされています。
しかし、一般的なトレンドラインは客観的に定めることが出来ず、主観的な指標となっています。これは、トレンドラインを参照して売買を行う投資家にとって、極めて不都合な真実です。

では、トレンドラインを客観的に求める方法はないのでしょうか?

それについては、私は以前から当ブログにて、「最適トレンドライン」として提唱してきました。
これは、トレンドの持つ統計的な意味からトレンドラインを再定義し、客観的な指標として利用することを目指したものです。

詳細については、過去のブログ記事やココナラのレポートに譲りますが、最適トレンドラインという考えを採用することにより、トレンドラインを客観的、一意的に決定することが出来ます。

この最適トレンドラインと言う考えは、トレーディングシステムにおける資産カーブの管理限界ラインと同じものです。
管理限界ラインは、最適トレンドラインを全統計期間に適用したものとなります。

トレーディングシステムにおいて、資産カーブが管理限界ラインを割り込んだ時、そのシステムの機能は停止したと見なすことが出来ます。
これを、トレーディングシステムのシステム寿命と定義します。

システム寿命を決定する要因は、運用開始時の資産カーブ及び管理限界ラインの相対位置であり、その大きさを決定する因子としてEERが挙げられます。
資産カーブが管理限界ラインを割り込んだ時がシステム寿命となるわけですが、事はそう単純ではありません。

何故なら、資産カーブの持つ統計的性質により、資産カーブが管理限界ラインに接近した段階では、そのまま管理限界に達するのか、あるいはそこから反発するのか、明確なことは言えないのです。

確率的には、むしろ管理限界ライン付近で反発することの方が多く、その繰り返しによって右肩上がりの上昇を継続することになります。
しかし、中には同ラインを割り込んでしまい、そのまま回復することもなく寿命を迎えるシステムも存在します。

こういった事実から、トレーディングシステム単独での寿命を予測することは、事実上不可能です。
しかし、単独ではなく、同一の系に属するシステム群の、統計的な寿命を論ずることは可能です。

それには、量子力学における放射性元素の半減期の考えを応用します。
詳細については、ココナラのレポートに譲りますが、KFシステムクリエイターで生成されるシステム群に関しては、1年後のシステム残存率が84%であることが分かっています。

これに、各システムの期待効率やEERを考慮し、システムポートフォリオの考えを適用すると、1年後のシステム収益率を予測することが可能となるでしょう。
システム収益率は、単に各システムの期待効率の平均ではなく、それにシステム残存率を加味した値に減少することになります。

それでも、統計的に年間収益率がプラスであることを明確に示すことが出来れば、それは革新的なことだと思います。

ただし、寿命に達していないシステムであっても、EERが小さかったり、運用開始時の資産残高水準が相対的に大きかったりした場合は、年間収支がマイナスになる事もあります。
逆に、寿命を迎えたシステムであっても、プラス収支で終える場合があります。

これらの不安定要素を出来る限り排除するためには、運用を行うトレーディングシステムのEERに下限を設けると共に、運用開始のタイミングを適切に管理する必要があります。
そして何よりも、システム残存率を高めるために、より安定したシステム体系の構築を目指す必要があるのです。

数理トレード学は、個々の株式トレードからシステムトレードに至る、あらゆるトレード対象に適用される学問です。
それが、トレードにおける主観的、恣意的な運用を見直し、より客観的、機械的な運用につなげることが出来ればと思います。

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