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動的パラメータシステムの再検証:9519レノバ [システムトレード]

トレーディングシステムにおいて、最適パラメータの決定は極めて重要な要件の一つです。一般的には、最適パラメータが最適でなくなったときに、そのシステムは終焉を迎えたと判断されます。

しかしその一方で、終焉を迎えたシステムに対し再最適化を行うことで、そのシステムを蘇らせることができるのではないか、という考えもまた存在します。
このように、最適パラメータを更新し続ける事によって、システム寿命の延長を計るシステムを、動的パラメータシステムと呼ぶことにします。

この考えそのものは古くからあり、当ブログでも14年前や11年前に何度か取り上げています。ただし、その当時は検証する道具に乏しく、客観的な判断を下すことはできませんでした。

例えば、2011年1月26日の記事「動的パラメータシステム(1)」などでは、時系列分析結果を用いて過去に遡って最適パラメータを検出し、最適パラメータの推移によって資産カーブがどう変化するかを検証しました。

しかし、最適パラメータ自体、正確には最適化対象指標を客観的に求めることができず、全ての時間軸において同じ最適化対象指標による最適パラメータを用いざるを得ませんでした。

その後、システム改良を進める中で、最適化対象指標の自動選定が可能になり、過去に遡って最適パラメータを客観的かつ一意的に求めることができるようになりました。
直近の改良においては、次図に示すように最適化対象指標や最適パラメータ、そして売買シグナルを、日毎に求めることが可能となっています。
20220622a.png

このように、過去に遡って全ての日付における最適パラメータと売買シグナルを求めた後、合成システムからそれらのシグナルを呼び出すことで、動的パラメータシステムが得られます。

なお、売買シグナルを適用するシステムとして、追加システムではなく合成システムとしたのは、動的パラメータシステムが最適パラメータ違いの複数のシステムを、時系列に合成したシステムだからです。

余談となりますが、既存システムを動的パラメータ対応システムに更新するには、「パラメータ抽出システム復元ツール」を用います。
同ツールで既存システムのパラメータファイルを生成し、そこからシステムを復元することで、動的パラメータ対応システムに変換します。

動的パラメータ対応システムでは、インデックスシート上で上図に示した日々のMaxFactorやPrm1、Prm2、PreSignalを自動検出しますが、そこから実際の売買シグナルを抽出するためには、オペレーションページで「動的シグナル演算」ボタンを押す必要があります。

なお、動的シグナルは全ての日付における最適パラメータに基づいたシグナルを発するSignal1と、特定日付以前の最適パラメータを固定してそれ以降のみ動的シグナルとするSignal2とを、それぞれ生成します。

分析日数が少ない時点では最適パラメータの変動が激しく、システム性能も安定しません。そこで、ある程度の日数が経過し、最適パラメータが安定してきた時点から動的システムの検証を行いたい場合には、Signal2を用います。
これらの選択は、参照先となる合成システム上で行うことができます。

今回は、動的パラメータシステムの動作確認を行うため、9519レノバについて実際にシステムを作成し、検証しました。
本銘柄を選んだ理由は、上場から日が浅く、値動きが激しいため、通常システムと動的システムとの差が顕著に表れると考えたからです。

元システムは2017年2月23日を起点日とし、2022年4月28日時点で時系列分析を行いました。その後、2022年7月6日まで更新しています。
また、Signal2を参照した動的パラメータシステム2では、2020年末までを固定パラメータとし、2021年初めから動的パラメータとしています。

それらの結果一覧を次図に示します。上段が元システム、中段が動的パラメータシステム1、下段が動的パラメータシステム2となっています。
検証したシステムは、11種類のロジックの正逆で全22通りです。
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全体的に見ると、各システム性能は、元システム>動的パラメータシステム2>動的パラメータシステム1、であることが分かります。
それらの中で比較的性能が良好なVWAP正システムについて、各資産カーブを以下に示します。

結果一覧同様、上段が元システム、中段が動的パラメータシステム1、下段が動的パラメータシステム2となっています。
また、比較しやすいように、各軸のスケールは揃えています。
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じっくり比較するまでもなく、各システムの性能差は歴然です。これらのことから、少なくとも9519レノバに関しては、動的パラメータシステムは上手く機能していないことが分かります。
恐らくは、他の銘柄についても同様の結果となるでしょう。もちろん、厳密にはそれらの検証を待つ必要があります。

何故、動的パラメータシステムは機能しないのでしょうか?
それは、最適パラメータが最適でなくなるのは、往々にしてシステム性能の低下局面にあるから、と考えることができます。

また、新たに取って代わった最適パラメータは、あくまでそれまでの全期間の性能を最適化するものであり、必ずしも直ちに性能を向上させるものではない、ということです。
そのため、最適パラメータが変わっても、直近最適パラメータと比較して、以降の性能が向上するかどうかは分かりません。

ただし、今回の検証では、統計的な安定性を重視した最適化対象指標を用いている、ということが、逆に動的パラメータシステムの性能低下をもたらしている可能性を否定できません。
例えば、損益累計を最適化対象指標としたならば、また違った結果となっていたかもしれません。

静的なシステムでは、全体を通じた資産カーブの安定性に重きを置きますが、動的なシステムではあくまで最高資産残高を繋ぎ合わせて行くことで、全期間を通じた安定性を担保することが出来るような気もします。
それについては、今後検証を進めたいと思います。

あるいは、最適パラメータが変わるまでシステム運用を続けるのではなく、資産カーブが一定の基準、例えば管理限界を割り込んだら一旦システムを停止し、その後、最適パラメータが変わったタイミングで運用を再開する方法も考えられます。
これについても、いずれ検証を行いたいと考えています。

また、最適化対象期間を一定期間毎に区切り、それらをつなぎ合わせれば、性能が向上して見えるかもしれません。
しかし、それはあくまで見かけ上に過ぎず、実際には直近までの短い期間で最適化を行ったシステムに外なりません。そのようなシステムは論外と考えます。

今回の結果は、11年前の結果と大きな相違はなく、ある程度予想できたことではあります。ただ、検証方法については大きな進歩があり、ほぼ自動的に動的パラメータシステムを作成することが可能となりました。

今後は、上に述べたいくつかの課題について、検証を進めて行くつもりですが、何せ還暦を迎えた身として、体力的にも気力的にも、10年以上前のようには動けないかもしれません。
当ブログの更新ペースも落ちていますが、何卒ご容赦くださいませ。
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