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「『金融工学』は何をしてきたのか」 [書評]

①専門に集中して一流の専門家となり、仲間の尊敬を受けることを目指す。
②他の分野の専門家の仕事には軽々に口出ししない。
③仲間(上司)から頼まれたことは断らない。また他人に頼んでやってもらったことに対する恩義を忘れない。
④時間に遅れない(納期を守る)。
⑤仲間や学生をけなさない。
⑥人の言うことは最後まで聞く。

これらは、次の書籍の中で著者の今野浩氏が掲げる「エンジニア倫理」です。今野氏が東大工学部や東工大で付きあってきた人の約8割は、これらの条件に当てはまるそうです。
私は自分では、この原則に忠実な「純正エンジニア」だとは思っていないのですが、④を除いて(ただし待ち合わせなどには遅れませんが)概ね当てはまっているように感じます。

「金融工学」は何をしてきたのか(日経プレミアシリーズ)

「金融工学」は何をしてきたのか(日経プレミアシリーズ)

  • 作者: 今野 浩
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2009/10/09
  • メディア: 新書


何故、今野氏がこのようなことを述べているかというと、それは金融工学を築いてきた多くの人たちがエンジニアだからです。そのようなエンジニアだからこそ、MBA出身(非エンジニア)の上司の命ずるままに金融商品を開発してきたのですが、残念ながら最終的にはそれが社会に大きな混乱と不安を与える要因になってしまいました。

すなわち、サブプライム問題などの原因は、金融商品を開発したエンジニアや金融工学にあるのではなく、あくまでそれを金儲けの道具としてきた(MBA出身の)上司や経営者にある、というのが、今野氏が本書で訴えたいことだと思います。

本書の前半は、強欲な経営者の手先となってしまったエンジニアの視点に立って、「金融工学悪玉論」に対する反論が述べられています。
そして後半では、金融工学が歩んできた道程が語られています。

金融工学の中身そのものについては、数式等をほとんど使わず、簡単に述べられているだけですが、それゆえに数式が苦手な人にとっても、金融工学のエッセンスを知ることができる内容になっています。

特に、シングルファクターの平均・分散モデルからCAPMにブームが移り、その後再び平均・分散モデルがマルチファクター・アプローチとなって復活するくだりは、最近のシステムトレードの流れを見ているようで、興味深く読みました。

また、金融工学を原子力に例え、リスク回避の手段として利用する分にはそれは発電だが、投機目的のために設計された商品(エキゾチック・オプション)の研究は核爆弾の研究に等しい、との言及に、今野氏のエンジニアとしての誇りを感じさせます。

最後に、今野氏も述べていますが、金融工学についてより詳しく知りたい場合は、次の書籍が参考になると思います。

金融工学の挑戦―テクノコマース化するビジネス (中公新書)

金融工学の挑戦―テクノコマース化するビジネス (中公新書)

  • 作者: 今野 浩
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2000/04
  • メディア: 新書




PS1.今日の大幅高で、日産に手仕舞いシグナルが点灯しました。明日の寄付きで、返済売りとなります。一時はどうなることかと思いましたが、何とかプラスで終えられそうです。

PS2.暴行、薬物、賭博、八百長、しかし保身、隠ぺい、しかも財団法人

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