損益の源泉(2) [システムトレード]
昨日、ちょっと書き忘れましたが、マルチファクターモデルと自己相関モデルには、もう一つ、決定的な違いがあります。
そして、そのことがマルチファクターモデルの優位性を高めている、とも言えるかもしれません。
それは、(株式を売買対象とする)自己相関モデルの前提となる株式市場においては、株価が変化する時間帯が限定されている、ということです。
当日の場が引けてから翌日に寄付くまでの間は、株価が変化しない、すなわちシステムを適宜更新することができないわけです。
その間に何らかの重要な発表があったとしても、それが株価に織り込まれるのは、翌日の始値まで待たなければなりません。
当然、その情報を織り込んだシグナルを出すためには、翌日の寄付き以降まで待つ必要があります。
自己相関モデルにおいては、あくまで株価のみを情報源とするわけですから、株価が動いていない時間帯においては、その間の重要な情報を織り込むことができないわけです。
一方、マルチファクターモデルであれば、翌日に場が開くまで待つ必要はありません。重要な発表、あるいはそれに連動する指標を用いて、システムを更新することができます。
その結果、より迅速な売買が可能になるかもしれません。ただし、そのことが必ずしも直ちに収益に結びつくわけではない、ということに注意する必要があります。
自己相関モデルであっても、夜間PTSを利用したり、寄付き前の板情報を参照すれば、寄付き前にアクションが取れると考えるかもしれません。
しかし、それは厳密には自己相関モデルではありません。PTSは実質的には異なった市場ですし、板情報に至っては、株価データですらありません。
すなわち、それらは本質的にはマルチファクターモデル以外の何者でもないわけです。
自己相関モデルというのは、あくまで単一市場・単一銘柄における、場中の株価データのみを判断材料としたシステムである、ということになります。
このように考えると、自己相関モデルとは何とも不利なシステムである、と思えるかもしれません。しかし、次のような手法を用いることで、ある程度はその状況を改善することができます。
まずはデイトレシステムにおいてですが、この場合は分足もしくは時間足データを用い、寄値に基いてシグナルを出した後、一定時間後もしくは一定の条件が満たされたらエントリーするようにすれば、寄付き前の情報を織り込むことが可能です。
続いてスイングトレードにおいてですが、この場合は基本的に寄付き前の情報による影響は「諦める」ということになります。
ただし、ある程度の期間に渡ってポジションを維持しているわけですから、平均的には寄付き前の情報による影響はキャンセルされると考えることができます。
最後の手仕舞いもしくはドテンの段階になって、直近の情報による影響が強く現れることになりますが、その寄与度は保有日数分の1に薄められると考えることができます。
すなわち、マルチファクターモデルと比べれば不利には違いありませんが、思ったほどには不利でもないわけです。
しかし、不利な情報が連続して出てきた場合には、どうしても手仕舞いが一歩遅れてしまう可能性があります。
そこで、例えばシステム当たりの運用資金を小さくしたり、レバレッジを低くしたりすることで、その分のリスクを低減する、などといった手法を考えることができます。
ちなみに、以上は株式トレードにおける場合の話ですが、為替の場合は基本的に24時間売買可能ですので、株式のような情報ギャップは存在しません。
すなわち、そのような意味においては、マルチファクターモデルと自己相関モデルの優位差は小さいと考えられます。
今回は、当初の予定とは異なった内容になりました。次回は、自己相関モデルについて、もう少し考えてみたいと思います。
なお、明日は「今週の投資成績」を掲載予定ですので、次回は来週月曜日になる見込みです。
PS.昨日の引け後にゼンショーから重要な情報が開示され、今日の株価は非常に大きな影響を受けました。ただ、結果的には思った以上に下げずに済んで、ほっとしています。
こんな時、システムだとどうなるんでしょうね?マルチファクターモデルなら、恐らく寄付きで売りだったのかもしれません。
そして、そのことがマルチファクターモデルの優位性を高めている、とも言えるかもしれません。
それは、(株式を売買対象とする)自己相関モデルの前提となる株式市場においては、株価が変化する時間帯が限定されている、ということです。
当日の場が引けてから翌日に寄付くまでの間は、株価が変化しない、すなわちシステムを適宜更新することができないわけです。
その間に何らかの重要な発表があったとしても、それが株価に織り込まれるのは、翌日の始値まで待たなければなりません。
当然、その情報を織り込んだシグナルを出すためには、翌日の寄付き以降まで待つ必要があります。
自己相関モデルにおいては、あくまで株価のみを情報源とするわけですから、株価が動いていない時間帯においては、その間の重要な情報を織り込むことができないわけです。
一方、マルチファクターモデルであれば、翌日に場が開くまで待つ必要はありません。重要な発表、あるいはそれに連動する指標を用いて、システムを更新することができます。
その結果、より迅速な売買が可能になるかもしれません。ただし、そのことが必ずしも直ちに収益に結びつくわけではない、ということに注意する必要があります。
自己相関モデルであっても、夜間PTSを利用したり、寄付き前の板情報を参照すれば、寄付き前にアクションが取れると考えるかもしれません。
しかし、それは厳密には自己相関モデルではありません。PTSは実質的には異なった市場ですし、板情報に至っては、株価データですらありません。
すなわち、それらは本質的にはマルチファクターモデル以外の何者でもないわけです。
自己相関モデルというのは、あくまで単一市場・単一銘柄における、場中の株価データのみを判断材料としたシステムである、ということになります。
このように考えると、自己相関モデルとは何とも不利なシステムである、と思えるかもしれません。しかし、次のような手法を用いることで、ある程度はその状況を改善することができます。
まずはデイトレシステムにおいてですが、この場合は分足もしくは時間足データを用い、寄値に基いてシグナルを出した後、一定時間後もしくは一定の条件が満たされたらエントリーするようにすれば、寄付き前の情報を織り込むことが可能です。
続いてスイングトレードにおいてですが、この場合は基本的に寄付き前の情報による影響は「諦める」ということになります。
ただし、ある程度の期間に渡ってポジションを維持しているわけですから、平均的には寄付き前の情報による影響はキャンセルされると考えることができます。
最後の手仕舞いもしくはドテンの段階になって、直近の情報による影響が強く現れることになりますが、その寄与度は保有日数分の1に薄められると考えることができます。
すなわち、マルチファクターモデルと比べれば不利には違いありませんが、思ったほどには不利でもないわけです。
しかし、不利な情報が連続して出てきた場合には、どうしても手仕舞いが一歩遅れてしまう可能性があります。
そこで、例えばシステム当たりの運用資金を小さくしたり、レバレッジを低くしたりすることで、その分のリスクを低減する、などといった手法を考えることができます。
ちなみに、以上は株式トレードにおける場合の話ですが、為替の場合は基本的に24時間売買可能ですので、株式のような情報ギャップは存在しません。
すなわち、そのような意味においては、マルチファクターモデルと自己相関モデルの優位差は小さいと考えられます。
今回は、当初の予定とは異なった内容になりました。次回は、自己相関モデルについて、もう少し考えてみたいと思います。
なお、明日は「今週の投資成績」を掲載予定ですので、次回は来週月曜日になる見込みです。
PS.昨日の引け後にゼンショーから重要な情報が開示され、今日の株価は非常に大きな影響を受けました。ただ、結果的には思った以上に下げずに済んで、ほっとしています。
こんな時、システムだとどうなるんでしょうね?マルチファクターモデルなら、恐らく寄付きで売りだったのかもしれません。
寄り値の情報をシステムに取り入れるために、一定時間後に参入するようにしたシステムではスリッページが発生しますが、デイトレシステムではこれがほとんど致命傷になるくらいのインパクトがあります。これはシステムデイトレーダーとして自信を持って言えます。
外部のファクターに加えてこれらの情報を取り入れるようにしたシステムが、皆知っているベンダーから出ていますが、あそこの過去の成績は平均1トレードにつき1tick多く見積もっていると言っていいです。
デイトレシステムにおいては「スリッページは考慮に入れていません」は「このシステムは機能しません」と同義だと考えています。
よってkフローさんの言う方法を取る場合は、必ず成り行きで参入していることを前提にして検証する必要ありますね。
by Y102 (2010-08-05 20:48)
初めまして、いつもROMばっかりで初カキコさせていただきます。
レベルは全然劣りますが、私も自己相関ストラテジーを使っているのでいつも楽しく拝見させていただいています。
自己相関とマルチファクターの比較についてはほぼKフローさんとほぼ同意見ですが、デイトレードで比べるとマルチファクターと自己相関では天と地程の差が出る気がしています。
もちろん自己相関ストラテジーでもデイトレードで勝てるストラテジーを作成することは可能だと思いますが、実運用に耐え難いストラテジーになる気がします。
スイング以降の時間軸については、そこまで差が出ないと思っていますし
運用面を考えると自己相関システムの方が有利かもしれません。
ただファンダメンタルのチェックは行い、引け後に明らかにストラテジーに不利になる要因が発生した場合はスルーする必要はあるかと思いますが。
でもこのような考え方をしている時点で純粋な自己相関システムではないかもしれませんね。
初心者の考えですので失礼な内容だったらすいません。
by Ina (2010-08-06 01:33)
Y102さん、こんにちは。
全くおっしゃる通りです。そして、それが私を寄付き売買に拘らせる、最大の理由でもあります。
精度はかなり落ちますが、ザラ場で売買する代わりに、後場寄りで売買するという手法も考えられなくはないですね。
ただ、最近はアジア市場の影響力が増大し、前場と後場とで相場ツキがガラリと変わってしまうことも珍しくありませんから、それも難しいかもしれません。
もっとも、来年には昼休みがなくなってしまう可能性もありますし、日経平均先物ではもうすぐ昼休みが撤廃されてしまいます。そうなると、現行後場寄りシステムの見直しを急ぐ必要はあっても、これから後場寄りシステムを開発するメリットは、全くないのかもしれません。
by Kフロー (2010-08-06 08:57)
Inaさん、はじめまして。
お名前は、あちらこちらで拝見しております。
自己相関で、実用レベルのデイトレシステムを作成することは、私もかなり難しいと考えます。
ただ、一部の銘柄に限って言えば、株価推移に一定の傾向が見られる場合が存在しますから、それを利用すれば、寄引け売買のデイトレシステムの作成も不可能ではないような気がします。
でも、それに他のファクターを加味すれば、更なる性能の向上が明らかに見込めるわけですから、そういう意味では、少なくともデイトレシステムにおいては、自己相関モデルに拘る必要性は小さいとも考えられます。
ただ、超高速のコンピュータと通信環境があったなら、一部のヘッジファンドのように完全テクニカル(自己相関)でもやれるのかもしれません。
まあ、それは個人投資家には明らかに無理な話ですし、以前ならともかく、今ではそんなことを考えることすらしていません。
by Kフロー (2010-08-06 08:57)
すみません。
超初心者なもので質問させてください。
「一方、マルチファクターモデルであれば、翌日に場が開くまで待つ必要はありません。重要な発表、あるいはそれに連動する指標を用いて、システムを更新することができます。」
とありますが、マルチファクターモデルのシステムって、例えばドル円を説明変数に用いる場合、例えば1分毎とかにドル円の値を取り込んでシグナルチェックをするのでしょうか?
24時間動作し続けるシステムって事でしょうか?
by marbee (2010-08-28 18:17)
marbeeさん、こんにちは。
マルチファクターモデルのシステムは、あくまで自分自身以外の説明変数を含んだシステムであると理解しています。
したがって、24時間動作し続けるシステムである必要はありません。
例えば、個別銘柄や日経先物システムにおいて、ドル円を説明変数に用いる場合、寄付き1時間前の値を説明変数として用いても良いでしょうし、システムの更新が数分で完了できるのであれば、10分前の値を用いても良いかもしれません。
あるいは、値そのものではなく変化率を説明変数に用いても良いかもしれません。
どの時点のどのような情報を用いるかについては、システム設計の重要な要素となるでしょうし、通常はそれらの情報とそれに基づいた運用の収益率との相関を調べて、最も相関が高くなる情報群を説明変数に選ぶことになるのではないかと思います。
ちなみに、「翌日に場が開くまで待つ必要がない」というのは、あくまで株式の自己相関モデルとの対比です。株式の自己相関モデルシステムの場合、どう足掻いても、当日15時以降(大証の場合は15時10分以降)に新たに判明した情報に応じて、翌日寄付きの売買を変更することはできませんが、マルチファクターモデルシステムであれば、説明変数によってはその限りではない、ということになります。
by Kフロー (2010-08-29 16:17)
解説ありがとうございます。
マルチファクターモデルに関しては勉強し始めたばかりなのでわからない事だらけです。
少し理解が進んだように思います。
ありがとうございました。
by marbee (2010-08-29 17:56)