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ストップ基準とATRおよびNファクター [システムトレード]

昨日ご紹介した「タートル流投資の魔術」によれば、タートルではリスク管理の物差として、Nファクターという基準を用いていました。
これは、真の値幅の移動平均(ATR:Average True Range)の何倍をストップに設定するかという尺度で、通常は1とか2とかといった値を用いていたようです。

ATRとは、1日の平均的な値動きのことで、当日の高値と安値との差、当日の高値と前日の終値との差、前日の終値と当日の安値との差、の3つの値幅の内、最大の値幅の過去一定期間の平均値を指します。
タートルでは20日間の平均を用いていたということですが、なぜ20日間なのかは分かりません。

ATRをエクセルで求めることは、簡単にできます。まず、当日のトゥルーレンジ(TR)を次式で求めます。当日高値をH、当日安値をL、前日終値をCとすると、

 TR=MAX(H-L,H-C,C-L)

となります。これを、各日付毎に計算しておきます。

あとは、当日を含めて過去20日間の平均(=Average())を求めれば、それが当日のATRということになります。ATRの計算そのものは、配列数式を用いれば単一のセルのみで可能です。
ここで注意したいのは、TRとは、前日の場が引けてから当日の場が引けるまでの最大値幅であり、そこには前日の引けから当日の寄付きまでの値幅も含まれるということです。

さて、Nファクターが1ということは、エントリー価格から1*ATR下げた価格にストップを置くということです。
そして、その時の損失額が、総投資資金の何%(事前に決めておく必用がありますが、タートルでは1%だったようです)かになるように、建て玉数を決定します。

例えば、総投資資金が1,000万円あった場合、損失額を投資金額の1%以内に抑えるには、最大許容損失額は10万円ということになります。
一例として、昨日(10月31日)時点のトヨタ自動車株で考えてみると、過去20日間のATRは154.29円であり、N=1とすると、建て玉可能株数は100,000/154.29=648で、600株購入可能となります。

ただし、トヨタ自動車株の呼値は10円単位ですから、厳密にはATR=150円、もしくはATR=160円で考える必要があります。
この場合は、いずれの値を用いても、建て玉可能株数は600株となり変わりません。仮にATRきっかりの下落でストップになると、その損失額は、それぞれ9万円と9万6千円になります。

さて、ここで、Nファクターの値を変えてみると、どうなるでしょう。例えば、損失額を変えずにN=2にすると、建て玉可能株数は1/2の300株となります。そして、300円の下落でストップとなります。
逆に、N=1/2とすると、建て玉可能株数は2倍の1,200株となります。そして、80円の下落でストップとなります。

すなわち、Nファクターを大きくするほど、ストップに引っ掛かる可能性は低減しますが、建て玉数が減少する分、利益額もまた減少します。
一方、Nファクターを小さくすれば、ストップに引っ掛かりやすくなりますが、うまくトレンドに乗ることができれば、利益額は大きなものとなります。

例えば、今日の寄付きでトヨタ自動車株を買建てたとすると、寄値と安値との差額は90円でしたから、N=1/2戦略を取った場合は、直ちにストップとなっていたことになります。
ちなみに、冒頭の書籍の著者であるフェイス氏は、しばしばN=1/2で運用していたということですが、不利なエントリーを避けるために、成行買いは避けて指値を用いていたそうです。

もっとも、N=2などの大きなNファクターでトレードしたとしても、トレンドに乗って利益が出てきた場合には、小さなロットのままでのトレード継続に甘んじる必用はないようです。

例えば、価格がN=1/2分上昇する度に、ポジションを追加して行き、合わせてストップ基準を上げていきます。事前に決められた最大ポジションまでポジションを追加することで、効率的なトレードを可能としているとのことです。
このあたりにつきましては、いろいろと考えるところがありそうです。

さて、ストップ基準にATRを用いることの裏付けは、統計的な見地から来ています。ATRとは見方を変えればリスクのことであり、各トレードの損益をリスクで割ったR倍数という尺度を用いて、一連のトレードの分布を求めると、エッジのあるシステムでは、R倍数がプラス側に伸びた非対称分布となります。

マイナス側のR倍数は、ほとんどがR=1以内となっており、これがN=1前後にストップを置く根拠となっていると思われます。
ただ、これは固定的にストップを置くことを要求しますが、多くの場合、ストップを置くとシステム性能が低下してしまうことはフェイス氏も認めています。

ストップに関しては、まだまだ考えなければならないことが多くあるように思います。KFシステムクリエイターを用いて、ストップに関する様々な検討を行なっていますが、まだマネーマネジメントと絡んだ考察ができる段階には達していません。

ATRを用いたストップも参考にしながら、KFシステムクリエイターに適したマネーマネジメントプランの構築を急ぎたいと思います。


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コメント 2

みっちゃま

タートルを読んでて、わからない部分を検索してたら、このブログに到達しました。
※「ATRとは?」でぐぐってました。
どうもありがとうございます。とてもわかりやすいブログだと思います。
定期的に読ませていただきます。
by みっちゃま (2010-07-12 23:46) 

Kフロー

みっちゃまさん、はじめまして。
ご訪問いただき、ありがとうございます。

by Kフロー (2010-07-13 08:36) 

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