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トレンド論(2) [投資・経済全般]

前回は、トレンドラインとチャネルラインとを、「錘を吊るしたバネを振動させた状態で横方向に移動した時に、錘が描く包絡線のようである」と述べました。
もちろん、この例えは正確ではありませんが、株価の動きをイメージするためとご理解ください。

この錘の振動を等時間間隔で観察してみます。すると、包絡線付近では多くの割合で錘が観察されるのに対し、バネの中心付近ではあまり錘が観測されないことになるでしょう。
錘の動きを写したストロボ写真をイメージしていただければ、分かり易いと思います。

実は、これは、株価の振る舞いとは決定的に異なる現象だと思われます。逆に言えば、株価の動きは錘の動きとは正反対で、バネの中心付近ほど多く観察され、包絡線(トレンドラインやチャネルライン)に近づくほど観察されることが少なくなります。

これは、2006年12月7日のコラムで示したように、少なくともトレンドが存在する場合は、株価が回帰直線を中心にほぼ正規分布しているということです。
そして、トレンドラインやチャネルラインとは、その分布のほぼ下限と上限ということになります。

繰り返しになりますが、「トレンドが存在するならば、株価はその回帰直線を中心に正規分布する」という仮定をするわけです。
この命題の対偶を考えると、「株価がその回帰直線を中心に正規分布していないならば、トレンドは存在しない」ということになります。

そこで、ある期間の株価推移を考えてみます。株価の回帰直線はすぐに求められます。例えばエクセルを用いれば、容易に計算できます。
そして、株価がその回帰直線からどの程度離れているかをカウントします。

回帰直線からの距離に応じてカウントされる株価の個数を求め、回帰直線からの範囲に対してカウント数をプロットすれば、度数分布が得られます。
そして、その度数分布の形状を見て、それが正規分布とはほど遠いものだったなら、少なくともその期間にはトレンドは存在しない、ということになります。

ここで注意したいのは、分布の形状が正規分布に近いものだからと言って、その期間にトレンドが存在するとは言えないということです。
それは、最初の仮定の「裏」であり、必ずしも「真」ではありません。

しかし、これはあくまで最初の仮定に基づいた推論であり、最初の仮定を「株価がその回帰直線を中心に正規分布するならば、トレンドが存在する」としても、違和感はないように感じます。
そこで、ここでは最初の仮定の「対偶」はもちろん、「裏」も「逆」も「真」であると、「仮定」します。

やや強引ですが、例えば「赤でないもの」には「青」や「緑」などいろいろありますが、「トレンドでないもの」は「トレンドでないもの」としか言ってみようがないことから、この場合の「裏」や「逆」を「真」であるとしても、大きな不都合はないように思います。

さて、これで、ある期間の株価の回帰直線の周りの株価分布を調べれば、そこにトレンドが存在するかどうかが分かるようになりました。
そこで、この期間をいろいろと変えてやれば、トレンドが存在する期間や存在しない期間など、さまざまな結果が得られることになります。

そうは言っても、それをあらゆる日付を起点に、あらゆる期間について調べることは、現実的ではありません。
そもそも、トレンドを必要とするのは将来の傾向を見るためですから、過去のトレンドを調べても無意味です。

そこで、直近の日付のみを起点に、過去に遡って期間だけを変えてトレンドを探すことが、現実的な対応となります。そのようにして求めたものが、最適トレンドラインです。
ただし、いちいち度数分布を調べていたのでは、時間がいくらあっても足りません。

そこで、実際にはEERを用いて最適トレンドラインを決定しているのですが、その話はまた別の機会に行いたいと思います。

今回は、トレンドの定義を統計学的な視点から行なってみました。もちろん、これはいくつかの「仮定」に基づくものであり、学術的な検証に耐えるものではないかもしれません。
しかし、実用的にはこのような定義を用いることで、トレンドを客観的に捉えることができるようになります。

もちろん、度数分布と正規分布との一致の度合など、まだまだ厳密性に欠ける部分はあります。それらを解消するためには、今後、より多くの検証データが必要となるでしょう。

今日の株価は大幅続落となり、長期的なトレンドラインの一つを下回りました。株価がトレンドラインを下回るとは、どういった意味を持つのでしょうか。
次回はこの点について、考えてみたいと思います。


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