SSブログ

シャープレシオの計算方法 [投資・経済全般]

シャープレシオとは、投資ファンドなどの運用効率を評価する際に用いられる指標で、この値が大きいほど運用効率が高いということになります。その値は、1以上、できれば2以上が良いとされています。

これは、1960年代に米国のシャープ博士が提唱し、同氏はその後1990年にノーベル経済学賞を受賞しています。

シャープレシオについては今まで触れる機会がありませんでしたので、最初にその定義を説明したいと思います。
シャープレシオは、一般に次式で求められます。

  シャープレシオ=(リターン-無リスク短期金利)/リスク

これだけだと、具体的にはどうやって求めたら良いのか、分かりにくいと思います。私もいろいろなサイトで調べましたが、表現方法は各者各様です。
上記の表現は、それらの最大公約数的なものとしてご理解ください。

まずはリターンですが、これは年率換算したリターン(収益率)を示します。例えば、長期に渡った実績データが存在する場合は、その期間のリターンを1年当たりに換算します。
10年間でリターンが160%だった場合は、1年当たりのリターンは10%ということになります。

ここで注意したいのは、これは複利運用を前提としている場合であるということです。その場合は、複利リターンが適用されます。
一般には、n年のリターンがa%の時、1年当たりのリターンは次式のようになります。

  年率リターン(%)={(1+a/100)^(1/n)-1}×100

なお、毎年配当金を出すなどとした単利運用の場合は、単利リターンとなり、単純にa/nで求められます。
一方、実績データの期間が十分でない場合には、どうしたらいいのでしょうか。

その場合も基本的な考え方は同じですが、今度は月当たりのリターンを元に年率換算することになります。
年単位の場合と同様に、nヶ月のリターンがa%の時、1年当たりのリターンは次式のようになります。

  年率リターン(%)={(1+a/100)^(12/n)-1}×100

指数の肩に掛かる数字が変わっていることに注意してください。なお、単利リターンの場合は、単純に12×b/nで求められます。

次に、無リスク短期金利ですが、通常は無担保翌日コールレートの平均値を指すようです。日本の場合は現時点において年0.5%で、日本円を基準としたシャープレシオの計算においてはほとんど無視できますが、ドルなどを基準とした場合には、それなりのウェイトを占めることになります。

最後に、リスクについてですが、これは1年当たりのリターンの標準偏差を用います。例えば、10年に渡る実績データがあるならば、各年のリターンを計算してそれらの標準偏差を求めます。
しかし、実績データの期間が短い場合は、標準偏差を計算しても信頼できる結果が得られません。

そこで、リターンの場合と同様に、月当たりのリターンの標準偏差を求め、それを年率換算することになります。
そのためには、まずは基準となる決算日を決める必要があります。これは任意でよいのですが、通常はその投資の開始日を基準に決算日を決めるでしょう。

そして、前月決算日の資産残高に対して、当月決算日の資産残高が何%増減したかを計算し、それを当月のリターンとします。
あとは、それらのリターン全体の標準偏差を求め、それを年率換算します。

年率換算の方法は、上で求めた標準偏差に√12(=約3.5)を掛けてやればOKです。これで、年当たりの標準偏差が求まります。

以上の計算で、ようやくシャープレシオを求めることができるようになります。

さて、シャープレシオを求める際には、リターンやリスクを年率換算する必要があるということが分かりました。上記の例では、月次リターンを年率換算するに留まりましたが、これを日次まで広げていったらどなるかということを考えます。

なお、当面は日本円における運用ということにして、無リスク短期金利の項は無視することにします。
まずはリターンですが、立会日ベースで全n日のリターンがa%であったとすると、今までと同様に年率換算したリターンは次式のようになります。

  年率リターン(%)={(1+a/100)^(246/n)-1}×100

ここで、指数の肩に掛かる数字が365日ではなく246日となっているのは、立会日基準で計算しているためです。
ここ10年余りの年間立会日数を平均すると、246日となります。

上の式は、年単位や月単位の場合と全く同じです。例えば、2,460日(=10年分の立会日)で160%のリターンであるならば、それは10年で160%のリターンの場合と全く同じになります。
また、単利リターンの場合は、246×a/nとなります。

さて、問題は年率換算した標準偏差ですが、これは日々の損益率の標準偏差を√246(=約15.7)倍してやることになります。
ここで、ルートの中が365日ではなく246日となっているのは、リターンの場合と同様に、立会日基準で計算する必要があるからです。

何故わざわざ、日次ベースでのシャープレシオを定義する必要があるかと言いますと、例えばトレーディングシステムにおいては、年次や月次ベースよりも日次ベースにした方が、計算が容易になるからです。

日足基準のトレーディングシステムの場合、通常、一組のデータは1日単位となっています。すなわち、1日単位でデータ処理した方が、計算が容易になります。
もしも1ヶ月単位などとすると、1ヶ月ごとにデータを一旦集計してやる必要が生じますが、それは大変煩わしい作業となります。

もちろん、月単位でしか損益などの集計を行なわないのであれば、月次リターンを基準にすればいいですし、デイトレのような分単位での売買をシステム化している場合などは、分次リターンなどを基準にすることも考えられます。

また、売買毎に集計してシャープレシオを求めることも可能です。その場合は、リターンの式の指数の肩の値を、1年当たりの売買回数/全売買回数に、標準偏差に掛けるルート内の数値を、1年当たりの売買回数にしてやればいいでしょう。

さて、このようにして計算されるシャープレシオですが、その値は私が以前から述べてきたEERと近いものとなります。
さすがに、完全には一致しませんが、凡そのスケールや大小関係はほぼ一致するようです。

これは、EERは1年当たりの期待リターンをリスク(標準誤差)で割った値であり、その意味合いはシャープレシオとほとんど同じであるからだと考えられます。
ただ、両者の定義が異なるために、厳密には違ったものとなります。

両者の関係を定式化しようと試みたのですが、計算が複雑すぎて実現できていません。機会がありましたら、もう一度挑戦してみたいと思います。
ただ、シャープレシオであってもEERであっても、複数のシステム間の相対比較であれば、どちらを用いても大差はないと思います。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。