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場中における損切り基準 [投資・経済全般]

先週のコラムで、前日比を基準にした損切り基準は、前日比のボラティリティの標準偏差の3倍を目安にしたらよいことを述べた。これは当日の終値がこのように設定された損切り基準を下回ったら、翌日の寄付きで売り注文を出す場合に適用される。
もし、当日の場中に一時的に損切り基準を割り込んだとしても、引けで損切り基準を再び上回れば翌日に損切りすることはない。

では、いわゆる逆指値を設定して、場中でも株価がある基準以下に下落したら損切りを行なう場合は、どのようにしたらよいだろうか。当然、損切り基準は終値基準の場合と比べて緩くなると考えられる。

終値は必ず最高値と最安値の間にある。したがって、当日最高値と前日終値との差、もしくは当日最安値と前日終値との差の、絶対値がいずれか大きい方の値幅をボラティリティと考えて、その標準偏差を取れば、場中の損切り基準を求めることが出来る。

先日のフェイス(4295)の例で言うと、上記の方法で求めた標準偏差は4.63%となり、終値基準の場合よりも1.13ポイント、約1.3倍増加する。したがって、損切り基準を標準偏差の3倍とすれば、およそ14%となる。すなわち、買値よりも14%下がった価格に逆指値を設定しておけばよいことになる。

もちろん、1日でこの割合以上下がる場合もある。フェイスの場合でも、2002年9月以降の最大変動率はプラス側が+16.95%、マイナス側が-14.56%で、1日にして損切り基準を割り込む可能性が皆無ではないことを示している。
ただ、そうは言っても闇雲に基準を緩めることが良いというわけではないことは明らかであろう。

次に、中長期投資として週単位でボラティリティを見た場合はどうなるであろうか。この場合も、基本的な考え方は同じである。
1週間の値動き(週足)の始値、終値、高値、安値を元にボラティリティを計算し、その標準偏差を求めればよい。

今までと同じようにフェイスの例で示すと、終値基準の場合の標準偏差は7.57%となり、損切り基準はその3倍としておよそ23%となる。
すなわち、週末の終値が買値よりも23%以上下落したら、翌週の寄付きで損切りすることになる。

一方、場中での損切りを容認する場合は標準偏差が10.49%となり、損切り基準はその3倍としておよそ31%となる。
すなわち、買値よりも31%下がった価格に逆指値を設定しておけばよいことになる。

以上の手法は、1日若しくは1週間で発生したノイズ的な株価下落による損切りを回避するという前提で、ボラティリティの標準偏差の3倍を損切り基準に設定した例である。
当然、このような前提となる考え方は各者各様であり、よりリスクを嫌うようなら標準偏差の1~2倍に損切り基準を設ければよいだろう。

ただ共通して言えるのは、様々な銘柄や投資期間におけるリスクは一定ではなく、それらのボラティリティの標準偏差に比例する、ということである。
標準偏差に乗じる安全係数は、各投資家の戦略や嗜好に委ねられるが、大元となる標準偏差そのものは、一意的に決定されるものなのである。

すなわち、トヨタとフェイスが同一の損切り基準であるということは、合理的な選択ではないのだ。

なお、以上は順張り投資の場合について述べている。逆張り投資の場合は、異なった基準を設けなければならないことは明らかであるが、その設定は難しい。逆張りの場合は損切りそのものをしないという投資家も少なくない。

また、順張り投資であるならば、直近最安値から少なくとも上記の損切り基準を上回る上昇を果たした場合に、初めて買い建てた方がよい。そうでなければ、順張り投資における損切り基準という意味合いが薄弱になってしまうからである。

買い建て時から損切り基準額分下落した株価が直近最安値であるとした方が、テクニカル的な損切り基準との整合性が高く、自分を納得させやすい。
損切りに伴う最大の困難は、自分の心を納得させることなのである。


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