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勝率と損益分岐点 [投資・経済全般]

6月5日のコラムで、勝率と必要リターンについて考察した。これは、投資成績を1ヶ月毎に集計した場合の勝率と必要リターンの関係について、年間リターンをパラメータにして求めたものである。
しかし、年間リターンを曲がりなりにもプラスとして説明したため、損失を抱えた状態での必要リターンについては十分な説明がなされなかった。

よく引き合いに出される例であるが、勝率50%の場合に5%の損失を出した時、平均(単利)リターンで考えると、それを挽回するためには5%の利益を上げる必要がある。
平均リターンの場合には、このトレードにおける元本は (0.95+1.05)/2=1 であり、勝率50%である限り、これを何度繰り返しても元本は変わらない。

このように、トレードを何度繰り返しても元本が変化しない条件を損益分岐条件と呼ぶことにし、その中でも変数が一つで、元本が変わらない条件がただ一点だけ存在する場合、その条件を実現する変数の値を、損益分岐点と呼ぶ。これは、会計学等における損益分岐点と同様のものである。

さて、では複利リターンの場合はどうかと言うと、5%の損失に対して5%の利益では足りないことになる。すなわち 0.95*1.05=0.9975 であり、わずかながら1に足りない。
「なんだ、ほとんど変わらないじゃないか」と思われるかもしれないが、きっちり50%の勝率で、5%の勝ち負けを延々繰り返した場合、元本は次第に減少していく。

これらのトレードを10セット繰り返した場合には、元本は97.5%に減少する。これが50セットになると88.2%となり、100セットでは元本は77.9%にまで減少する。
この元本の減少を防ぐには、勝った時の利益率を5.26%にするか、利益率は5%のままで勝率を51.25%にする必要がある。

通常のトレードでは、損切りを行うことで損失(率)をコントロールすることができる。あとは、勝率が決まれば損益分岐点となる利益率(均衡利益率)を決定することができる。
それは、平均リターンと複利リターンの場合で異なり、それぞれ次式で計算できる。

[平均リターン]:均衡利益率=(1-勝率)*損失[損切]率/勝率
[複利リターン]:均衡利益率=(1-損失[損切]率)^(1-1/勝率)-1

これらを損失[損切]率をパラメータとしてチャートにすると、下図のようになる。なお、チャートは勝率25%~75%の範囲で表示している。
システムトレード_損益分岐点
チャートからは、損失率が大きいほど平均リターンと複利リターンの均衡利益率の乖離が大きいことが見て取れる。
複利リターンの均衡利益率は、勝率がいくらであっても平均リターンの均衡利益率より低くなることはなく、勝率が低いほど両者の乖離は拡大する。

6月5日のコラムで説明した例では、複利リターンの場合の方が有利になる条件が存在したが、損益分岐点、すなわち、総リターンがゼロとなる条件下においては、複利リターンが有利になることはけしてない。

複利の恩恵に預かるためには、積極的に利益を追求する姿勢が必要なようである。


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