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複利リターンの(Ra,σ)依存性 [投資・経済全般]

昨日のコラムで、複利リターンの近似解について報告した。その結果として、次の解を得ることができた。
  Rc=Ra+(Ra^2-∑_[k=1,n]x(k)^2)/2
  Rc=Ra+(n-1)*(∑_[k=1,n]x(k)^2-n*σ^2)/2

これら2つの式から、∑_[k=1,n]x(k)^2を消去すると、次式が得られる。
  Rc=Ra+(Ra^2-n*σ^2)*(n-1)/(2*n)   ----(1)
これは、nが十分大きければ、次式のようにも書ける。
  Rc=Ra+(Ra^2-n*σ^2)/2

RcがRaよりも大きくなるためには、これらの式の第2項がプラスでなければならず、結局、昨日のコラムの(3)式が得られることになる。

さて、上の(1)式を見ると、RcがRaの2次関数で表されていることが分かる。そこで、Raを変数、σをパラメータとして、Rcをグラフ化することができる。
n=12(12ヶ月)とした場合の結果を下図に示す。
システムトレード_複利リターン
グラフは見やすいように、±60%×±60%の範囲で表示している。σは4%毎に20%まで変化させ、Raとの比較のために、Rc=Raのグラフを合わせて表示している。
Rc=Raの直線よりRcのグラフが上にあれば、複利効果が有効に働いていることになる。

σの増加に伴い、複利リターンが平均リターンを上回る臨界リターンが、急激に高くなっていることが見て取れる。
また、平均リターンが0の時に、複利リターンが平均リターンに対して最もマイナスとなり、σが20%の場合、平均リターンが0%であっても、複利リターンは-20%を下回ることになる。

(1)式において、Rc=RaとおいてRaを求めることで、上記の臨界リターンが次式のように求められる。
  Ra=±√n*σ   ----(2)

Raがプラスの場合だけ考えると、月次単位で1年間のリターンを考えた時、Raが3.46(=√12)×σよりも大きければ、複利リターンで運用したほうが効率的ということになる。
例えばσ=2%の場合は、平均リターンが7%(1ヶ月あたり0.6%)以上であれば、損益を再投資することにより年間収益の拡大が期待できるが、σが10%の場合だと、平均リターンが35%(1ヶ月あたり2.9%)以上ないと再投資が逆効果となる。

一発狙いのギャンブルトレードは当たれば大きいが、必然的に月々の損益の標準偏差σは大きくなるだろう。その結果、かなり高率の年間リターンが期待できるのでないならば、収益の再投資は行なわないほうが懸命、ということになる。

一方、長期投資の場合はどう考えればよいだろうか。
ある株式を1年間ホールドした後売却する場合を考える。便宜的に、毎月末に株式を一旦売却して、同時に同数購入すると考える。手数料を無視すれば、これは株式をホールドし続けていることと同じである。

売却時の株価に応じて資産額が変化し、その範囲で再投資を行なうわけであるから、これは複利リターンと考えてよい。
すなわち、株価の月次変化の標準偏差をσとした時、株価の期待増加率(年率)が(2)式の右辺以上に大きくなることが期待できれば、株式をホールドした方が投資効率がよいことになる。

しかし、そうでないならば、月末毎に株式を一旦売却し、初期資金と同じ額で買える分だけ再購入した方が投資効率はよくなることになる。
重要なのは、株価のばらつき度合い(σ)と増加の度合い(Ra)であり、(2)式における両辺の大小により、ホールドか買い直しかを選択することになる。

ちなみに、2005年のトヨタの月次データで見ると、平均リターンRaは40.6%、標準偏差σは5.6%であり、複利リターンRcは47.0%となる。すなわち、年初から株をホールドしていた方が、毎月買い直すよりも16%(6.4ポイント)利益が多かったことになる。

なお、2004年末の株価に複利リターン分の増加額を加えると、2005年末の株価となる。これは、ホールドが複利リターンをもたらすことを意味している。

最後に、実際の運用局面での結果を見るために、信用取引を開始した2004年9月から今年の4月までの20ヶ月の月別損益率を元に、この間の平均リターンRaと標準偏差σ、複利リターンRcを求めたところ、次のようになった。
  Ra=37.3%   σ=5.1%   Rc=41.4%

辛うじて複利リターンが平均リターンを上回っており、多少なりとも複利効果の恩恵に預かっているようである。
今のところ、現状の運用方法で問題はなさそうだ。


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