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経済物理学(エコノフィジックス) [投資・経済全般]

私は学校で物理学を専攻していた経緯もあり、以前から、物理学を経済学に応用できないかと考えていた。フィスコの黒岩泰氏が、「窓・ひげ理論」で力学の考え方を適用している事例はあるが、他にはあまり例を見なかった。

そんな折、ある掲示板で「経済物理学」という学術分野があることを知った。

先日、書店で「経済物理学の発見」(光文社新書:高安秀樹著)という本を偶然手に取り、購入した。

経済物理学の発見

経済物理学の発見

  • 作者: 高安 秀樹
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2004/09/18
  • メディア: 新書


まだ半分程度しか読んでいないが、大変興味深い内容である。

経済物理学は、経済学ではなく物理学の一分野である。様々な経済現象を、物理的な思考やツールを用いて解き明かそうという試みである。
”物理学”とは、元々”科学”と同義であり、経済物理学も”科学”であるため、現在では物理学の一分野として認められているが、創成期には論文の掲載を断られたりと、いろいろと苦労があったようである。

本書の中で特に興味深かったのが、為替レートの変位は正規分布ではなくベキ分布になる、というものである。

例えば、ガラスを割った時の破片の大きさの度数分布がベキ分布となるのだが、最も数が少ない比較的大きな破片を集めただけで、ガラスの元の形状をほぼ復元できる。
一方、正規分布では、この大きな破片は2σ以上に分類され、除外される。そのため、残った大多数の破片を使ってガラスを復元しようとしても不可能となる。

以上の例と同様のことが、為替レートで起こっているというのである。通常の経済学で扱う範囲では、為替レートの急激な変動(大きな変位)を説明することは出来ないが、経済物理学の結論(ベキ分布)を使えば、それらを説明することが出来るのだ。

経済物理学には上の例以外にも、様々な研究分野があり、現在、多くの物理学者や経済学者、実務者らが、研究を進めている。ヘッジファンドの中には、経済物理学の手法を用いてシステムトレードを行い、安定した運用益を上げ続けているものもあるらしい。
私たち個人投資家レベルでも、経済物理学の恩恵に預かれる日が来るのは、そう遠いことではないのかもしれない。

最後に、本書の著者である高安秀樹氏は、経済物理学の創設に関わった一人であり、近い将来、日本人初のノーベル経済学賞受賞者になるのではないかと期待している。
もっとも、経済物理学は物理学の一分野であるわけだから、ノーベル物理学賞ということになるのかな?


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コメント 2

大黒天

物理学を応用する方法としては価格変動をデジタル信号として処理する方法もありますね。
私は英語が苦手なのでなかなか先に進みません。
ヒルベルト変換についてやさしく書かれた解説書などあるとありがたいと思っています。
by 大黒天 (2005-11-01 15:17) 

Kフロー

そうですね。

物理学とは少し異なりますが、以前勤めていた会社で、「タグチメソッド」を少しかじったことがあります。
今はまだ、ロバスト性等の言葉や考え方を流用しているだけですが、「タグチメソッド」を応用した投資システムが出来るのではないかと考えています。
by Kフロー (2005-11-01 17:49) 

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