システム設計の方法論(5) [システムトレード]
本テーマについては、前回の掲載から8年近くが経過してしまいましたが、その間に様々な知見を得ることができました。
先日のコラムでも述べましたように、順張りシステムは大規模な市場の変動に対して十分な堅牢性を維持することができます。それはすなわち、システム設計における必要十分条件の一つの候補と考えることができます。
システム設計にあたっては、全ての市場、全ての銘柄で機能する唯一無二のロジックを見出すことは出来ません。これは、私が長年システムトレードを研究してきた結果得られた結論です。
それでは、有効なトレーディングシステムを見出すことは不可能なのでしょうか?
けしてそんなことはありません。唯一無二のロジックは存在しませんが、銘柄毎に、そして期間毎に機能するロジックは存在します。
それらを効率良く見出す手法は存在するかもしれませんが、一番確実なのは総当たりで確認することです。
ある銘柄の運用に最適なシステムを得るためには、とにかく総当たりで確認するしかありません。私の環境では、現状、18種類のロジック毎に凡そ150×150通りのパラメータを走査し、更に時系列でそれらを分析するという、途方もない作業を行っています。
その結果得られる有効なシステムは、1銘柄当たりせいぜい数個程度、場合によっては現行ロジックではうまく機能しない銘柄も存在します。
機能するロジックがない場合、その銘柄でのシステム運用を諦めるか、新たなロジックを開発する必要があります。ただし、新たなロジックの開発は、システムの多様性を広げる反面、分析作業をより困難なものにします。
余談ですが、現状の分析能力は、4コアPCをフル稼働して1銘柄当たり丸1日近く掛かっています。分析能力を増強するために、Corei5搭載PCを新たに数台導入しました。ただし、お金は掛けられないので、メルカリ等でジャンクPCやパーツを購入し、カスタマイズして使用しています。
こうやって分析したシステム群の中から、有効なシステムを抽出するために、いくつかの条件を設けています。
一つ目は、当然ながら高い期待値を有しているということです。現状では、資産増減率が年率換算で概ね15%以上、できれば20%以上を目標としています。
これを達成できなければ、システムトレードの優位性を保つことはできません。
二つ目は、直近2年以上に渡って、パラメータが変わらない、もしくはシステムの性能指標がほとんど変わらない、ということです。
これは時系列分析により、確認することができるようになりました。
三つ目は、直近2年程度の資産残高がプラスであること、あるいは少なくとも大幅なマイナスではないことです。
あくまで私の基準ですが、システムトレードにおいて最長3年程度のドローダウンは避けられないと考えます。しかし、直近2年で大幅なマイナスになっている場合、残り1年でドローダウンから抜け出すことは難しいかもしれません。
そして四つ目は、今回のコロナショックによる大暴落で得られた知見です。ある銘柄で上記の3つの条件を全て満たしたシステムが複数得られた場合、可能ならば順張り系システムを選択する、ということです。
それでも順張り系以外のシステムを選択する場合は、その運用にはストップ等の十分な対策を講じる必要があるかもしれません。
逆張り系やオシレータ系のシステムは、一般的にロバスト性が高く、平時では非常に優れた性能を示す事例が少なくありません。一方、今回のような大暴落は滅多に起こるものではなく、それによる損失も致命傷にならない限りいずれは回復する可能性があります。
そのため、四つ目の要件に関しては、もう少し時間を追ってみないとはっきりしたことは言えないのかもしれません。
これについては、コロナショックによる市場の揺動が落ち着いた時に、改めて検証したいと思います。
以上のルールを適用して、実際に90以上の任意銘柄についてシステム分析を行った結果、ほとんど全ての銘柄で前述の条件に合致するシステムを得ることができました。
もちろん、だからと言ってそれらが全て、今後も機能し続けることを保証するものではありません。
事実、先日のコラムでも示しましたように、一部のシステムでは直近2年強の資産増減率が大幅なマイナスになっています。
それらは全て非順張り系ではありますが、だからと言って順張り系システムが今後も機能する証拠ではありません。
ただ、株価増減率と比較すると、多くの銘柄のシステムにおいて資産増減率が大きく上回っている事例が少なくありません。
この事実だけでも、システムトレードを実践する動機付けの一つになるのではないかと思います。
先日のコラムでも述べましたように、順張りシステムは大規模な市場の変動に対して十分な堅牢性を維持することができます。それはすなわち、システム設計における必要十分条件の一つの候補と考えることができます。
システム設計にあたっては、全ての市場、全ての銘柄で機能する唯一無二のロジックを見出すことは出来ません。これは、私が長年システムトレードを研究してきた結果得られた結論です。
それでは、有効なトレーディングシステムを見出すことは不可能なのでしょうか?
けしてそんなことはありません。唯一無二のロジックは存在しませんが、銘柄毎に、そして期間毎に機能するロジックは存在します。
それらを効率良く見出す手法は存在するかもしれませんが、一番確実なのは総当たりで確認することです。
ある銘柄の運用に最適なシステムを得るためには、とにかく総当たりで確認するしかありません。私の環境では、現状、18種類のロジック毎に凡そ150×150通りのパラメータを走査し、更に時系列でそれらを分析するという、途方もない作業を行っています。
その結果得られる有効なシステムは、1銘柄当たりせいぜい数個程度、場合によっては現行ロジックではうまく機能しない銘柄も存在します。
機能するロジックがない場合、その銘柄でのシステム運用を諦めるか、新たなロジックを開発する必要があります。ただし、新たなロジックの開発は、システムの多様性を広げる反面、分析作業をより困難なものにします。
余談ですが、現状の分析能力は、4コアPCをフル稼働して1銘柄当たり丸1日近く掛かっています。分析能力を増強するために、Corei5搭載PCを新たに数台導入しました。ただし、お金は掛けられないので、メルカリ等でジャンクPCやパーツを購入し、カスタマイズして使用しています。
こうやって分析したシステム群の中から、有効なシステムを抽出するために、いくつかの条件を設けています。
一つ目は、当然ながら高い期待値を有しているということです。現状では、資産増減率が年率換算で概ね15%以上、できれば20%以上を目標としています。
これを達成できなければ、システムトレードの優位性を保つことはできません。
二つ目は、直近2年以上に渡って、パラメータが変わらない、もしくはシステムの性能指標がほとんど変わらない、ということです。
これは時系列分析により、確認することができるようになりました。
三つ目は、直近2年程度の資産残高がプラスであること、あるいは少なくとも大幅なマイナスではないことです。
あくまで私の基準ですが、システムトレードにおいて最長3年程度のドローダウンは避けられないと考えます。しかし、直近2年で大幅なマイナスになっている場合、残り1年でドローダウンから抜け出すことは難しいかもしれません。
そして四つ目は、今回のコロナショックによる大暴落で得られた知見です。ある銘柄で上記の3つの条件を全て満たしたシステムが複数得られた場合、可能ならば順張り系システムを選択する、ということです。
それでも順張り系以外のシステムを選択する場合は、その運用にはストップ等の十分な対策を講じる必要があるかもしれません。
逆張り系やオシレータ系のシステムは、一般的にロバスト性が高く、平時では非常に優れた性能を示す事例が少なくありません。一方、今回のような大暴落は滅多に起こるものではなく、それによる損失も致命傷にならない限りいずれは回復する可能性があります。
そのため、四つ目の要件に関しては、もう少し時間を追ってみないとはっきりしたことは言えないのかもしれません。
これについては、コロナショックによる市場の揺動が落ち着いた時に、改めて検証したいと思います。
以上のルールを適用して、実際に90以上の任意銘柄についてシステム分析を行った結果、ほとんど全ての銘柄で前述の条件に合致するシステムを得ることができました。
もちろん、だからと言ってそれらが全て、今後も機能し続けることを保証するものではありません。
事実、先日のコラムでも示しましたように、一部のシステムでは直近2年強の資産増減率が大幅なマイナスになっています。
それらは全て非順張り系ではありますが、だからと言って順張り系システムが今後も機能する証拠ではありません。
ただ、株価増減率と比較すると、多くの銘柄のシステムにおいて資産増減率が大きく上回っている事例が少なくありません。
この事実だけでも、システムトレードを実践する動機付けの一つになるのではないかと思います。
順張りに勝るものなし! [システムトレード]
お久しぶりです。
最近の株価の暴落には驚かされます。
リーマンショックの時は、金融市場の問題が露呈した結果の暴落であり、金融不安が徐々に実体経済に影響を及ぼしました。この時は大規模な公的資金の注入で、NYダウは1年半ほどで底を打ち、その後は急速な回復へと向かいました。
しかし、今回のコロナショックは、いきなり実体経済を直撃しました。NYダウ下落の急峻度はチャートを見れば明らかで、リーマンショックの時とは様相を異にしています。
これは、敢えて言うならば、リーマンショックの時に打ち出した政策では役に立たないのではないか、という不安を感じさせます。今、各国政府に求められているのは、金融市場の安定ではなく、実体経済への緊急かつ大規模な資金注入なのではないでしょうか。
さて、私は昨秋来久しぶりに大規模なシステム分析を行ってきました。そこへ、タイミングを見計らったように、今回の大暴落が襲ってきました。
日経平均株価の明確な下落が認められたのは、先月末のことでしたが、その時点でほぼ全てのシステムの分析は終了していました。
したがって、大規模な揺動に対してシステムがどのようにふるまうかを見るには、今回の大暴落は結果的に格好の機会となりました。
その結果を、以下に示します。成績は3月19日時点のものです。
なお、分析した株式の選択は、私が過去に売買した銘柄を中心に、各業種の主要銘柄やkabuステーションで予め登録されていたリストの上位にある銘柄を順次抽出しました。そのため、分析完了日は銘柄によって異なり、最も古いものは昨年9月19日、直近は今年の2月28日となっています。
なお、選択した銘柄の中には、実際には売買できない日経平均株価とTOPIXが含まれており、更に東京電力に関しては長期と震災以降の2つの期間のシステムで分析しています。
システムは、全9ロジックについてそれぞれ正と逆で時系列分析を行い、得られた18システムの中から最も良好と思われる一つを選択しています。そこには多分に主観が含まれますが、それについては別の機会で解説したいと思います。
全体的な結果としては、全90システム中、昨年末来で勝率は55.56%、平均資産増減率は3.74%となっています。一方、株式の長期保有の場合は、勝率は2.22%、平均株価増減率は-29.58%です。
それだけ見ると、平均的な振る舞いとしては当たり前の結果です。システムの勝率が5割前後なのは、システムの選択がランダムに行われている為であり、暴落時の売持と買持との割合がほぼ半々だった結果です。
注目すべきなのは、システムの仕様と成績との関連です。
KFシステムクリエイターでは現状、トレンドフォロー型の順張りシステムが6種、逆張りシステムが6種、オシレーター系システムが4種、それ以外が2種あります。
今回のシステム群では、トレンドフォロー型の順張りシステムが27個あり、その内、昨年末来資産増減率がプラスのシステムが22個あります。これらのシステム内での勝率は81.5%となっており、27個全体の平均資産増減率は20.6%でした。
一方、逆張りシステムで昨年末来資産増減率がプラスとなったものは、全16システム中3個、勝率はわずか18.8%で、16個全体の平均資産増減率は-17.1%でした。
また、オシレータ系システムでは、41個中19個がプラスで勝率46.3%、平均資産増減率は-0.3%でした。
オシレータ系システムは便宜上、順張り系と逆張り系に分けていますが、同じロジックでもパラメータの取り方によって順張り的にも逆張り的にも振る舞う場合があるため、一括りにしています。
更に、いずれにも該当しないシステムが6個ですが、勝率は100%、平均資産増減率は10.9%となっています。
こちらは勝率こそ現時点で高いものの、資産増減率は比較的低く、状況によっては容易にマイナスに転落する可能性があります。
以上より、市場の大規模な揺籃に対し最も安定性のあるトレーディングシステムは、トレンドフォロー型の順張りシステムであると言えるでしょう。
今回分析した90システムの内、トレンドフォロー型の順張りシステムは27個で、全体の丁度30%に相当します。そのようなシステム群を意識的に選択し運用することにより、優位性のあるトレードが実現できるものと考えます。
なお、逆張り系やオシレータ系のシステムに関しても、ストップや反転フィルタ等を設定することにより、ある程度のリスクヘッジが可能だと考えます。その方法につきましては、過去に考察したこともありますが、また日を改めて話したいと思います。
最近の株価の暴落には驚かされます。
リーマンショックの時は、金融市場の問題が露呈した結果の暴落であり、金融不安が徐々に実体経済に影響を及ぼしました。この時は大規模な公的資金の注入で、NYダウは1年半ほどで底を打ち、その後は急速な回復へと向かいました。
しかし、今回のコロナショックは、いきなり実体経済を直撃しました。NYダウ下落の急峻度はチャートを見れば明らかで、リーマンショックの時とは様相を異にしています。
これは、敢えて言うならば、リーマンショックの時に打ち出した政策では役に立たないのではないか、という不安を感じさせます。今、各国政府に求められているのは、金融市場の安定ではなく、実体経済への緊急かつ大規模な資金注入なのではないでしょうか。
さて、私は昨秋来久しぶりに大規模なシステム分析を行ってきました。そこへ、タイミングを見計らったように、今回の大暴落が襲ってきました。
日経平均株価の明確な下落が認められたのは、先月末のことでしたが、その時点でほぼ全てのシステムの分析は終了していました。
したがって、大規模な揺動に対してシステムがどのようにふるまうかを見るには、今回の大暴落は結果的に格好の機会となりました。
その結果を、以下に示します。成績は3月19日時点のものです。
なお、分析した株式の選択は、私が過去に売買した銘柄を中心に、各業種の主要銘柄やkabuステーションで予め登録されていたリストの上位にある銘柄を順次抽出しました。そのため、分析完了日は銘柄によって異なり、最も古いものは昨年9月19日、直近は今年の2月28日となっています。
なお、選択した銘柄の中には、実際には売買できない日経平均株価とTOPIXが含まれており、更に東京電力に関しては長期と震災以降の2つの期間のシステムで分析しています。
システムは、全9ロジックについてそれぞれ正と逆で時系列分析を行い、得られた18システムの中から最も良好と思われる一つを選択しています。そこには多分に主観が含まれますが、それについては別の機会で解説したいと思います。
全体的な結果としては、全90システム中、昨年末来で勝率は55.56%、平均資産増減率は3.74%となっています。一方、株式の長期保有の場合は、勝率は2.22%、平均株価増減率は-29.58%です。
それだけ見ると、平均的な振る舞いとしては当たり前の結果です。システムの勝率が5割前後なのは、システムの選択がランダムに行われている為であり、暴落時の売持と買持との割合がほぼ半々だった結果です。
注目すべきなのは、システムの仕様と成績との関連です。
KFシステムクリエイターでは現状、トレンドフォロー型の順張りシステムが6種、逆張りシステムが6種、オシレーター系システムが4種、それ以外が2種あります。
今回のシステム群では、トレンドフォロー型の順張りシステムが27個あり、その内、昨年末来資産増減率がプラスのシステムが22個あります。これらのシステム内での勝率は81.5%となっており、27個全体の平均資産増減率は20.6%でした。
一方、逆張りシステムで昨年末来資産増減率がプラスとなったものは、全16システム中3個、勝率はわずか18.8%で、16個全体の平均資産増減率は-17.1%でした。
また、オシレータ系システムでは、41個中19個がプラスで勝率46.3%、平均資産増減率は-0.3%でした。
オシレータ系システムは便宜上、順張り系と逆張り系に分けていますが、同じロジックでもパラメータの取り方によって順張り的にも逆張り的にも振る舞う場合があるため、一括りにしています。
更に、いずれにも該当しないシステムが6個ですが、勝率は100%、平均資産増減率は10.9%となっています。
こちらは勝率こそ現時点で高いものの、資産増減率は比較的低く、状況によっては容易にマイナスに転落する可能性があります。
以上より、市場の大規模な揺籃に対し最も安定性のあるトレーディングシステムは、トレンドフォロー型の順張りシステムであると言えるでしょう。
今回分析した90システムの内、トレンドフォロー型の順張りシステムは27個で、全体の丁度30%に相当します。そのようなシステム群を意識的に選択し運用することにより、優位性のあるトレードが実現できるものと考えます。
なお、逆張り系やオシレータ系のシステムに関しても、ストップや反転フィルタ等を設定することにより、ある程度のリスクヘッジが可能だと考えます。その方法につきましては、過去に考察したこともありますが、また日を改めて話したいと思います。