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プロフィットファクターの再定義 [システムトレード]

トレーディングシステムの性能(広義にはトレードの成績)を表す代表的な指標に、プロフィットファクター(Profit Factor:PF)があります。それに関しては、過去のコラム等で詳細に説明してきましたが、ここでもう一度おさらいしておきます。

PFは通常、一連のトレードにおける総利益を総損失で割った値として定義されます。一般的に、PFが大きいほど良いとされており、トレーディングシステムの設計においても、その値が出来るだけ大きいシステムを選択する傾向にあります。

これは一見、当たり前のように思えます。PFが大きいということは、総損益が大きいということです。総損益がプラスであればPFは1より大きく、マイナスであれば1より小さくなります。
総損益がマイナスである一連のトレードは失敗であり、そのようなシステムも然りです。

しかし、実はこれは自明ではありません。総損益がマイナスでも、有効に機能しているシステムは存在します。もちろん、過去のある時点までは損失が大きかったが、それ以降は利益に転じている、といった類ではありません。

さて、私たちがトレードを行うに当たり、その運用方法には大きく分けて3つの方法があります。

一つ目は複利運用です。これは、トレードの損益を元本に繰り入れ、それを新たな元本としてトレードを継続する運用方法です。この方法は、資金枠を目一杯使って運用するため、勝ち続けると資産を急速に増やすことが出来ますが、負けが込むと資産を急速に失います。

二つ目は単株運用です。これは、決まった数量の株式の売買を継続する方法です。株価水準が高い時は、より多くの資金を必要としますが、その分損益も大きくなります。水準が低い時は、より少ない資金でトレードできますが、損益も小さくなります。

三つ目は単利運用です。これは、定額資金で運用する方法です。利益が出た場合はそれを投資資金から外し、損失が出た場合はその分を投資資金に補充して、元本が常に一定になるようにします。この方法は、収益を他に利用したい場合に有効ですが、負けが込むと元本以上を失う可能性があります。

通常は、意識するしないに関わらず、上記3つの方法を自然に使い分けて運用していることと思います。

トレーディングシステムを設計するに当たり、前提条件はできるだけ統一する必要があります。例えば、売買単位が統一されていなければ、そのシステムは正常に機能しません。
現在はほぼ全ての上場株式の単元株数が100株に統一されましたが、以前はまちまちでした。途中で単元株数を変更する株式もあり、その際、時価総額が変わらないように株価が調整されました。

株価推移を用いて売買シグナルを出すシステムにとって、途中で株価水準が例えば10倍に変化してしまったら、もはやまともに機能しなくなります。
そのため、トレーディングシステムでは一般に、単元株数を統一した調整済み株価を利用します。システムとしては、これは単株運用システムということになります。

多くのシステムでは、この運用方法が用いられているかと思います。しかし、売買単位を統一しても、株価水準が大きく変動する事例は少なくありません。
そうなると、システムの資産カーブが階段状になってしまう場合があります。これはシステム設計上、好ましいことではありません。

資産カーブが階段状になる理由は、単株運用ゆえに売買損益が株価水準によって大きく変化するからです。
例えば、株価がある時期を境に10分の1ほどに暴落した場合、その方向にうまく乗れたシステムは、資産カーブが急激に上昇します。しかし、株価が下げ止まると、以降はその株価水準レベルでの損益推移しか得られなくなります。

そうなることを防ぐためには、資産の増減を増減率に置き換えてやる必要があります。それが、システム上での単利運用ということになります。
単利運用の資産カーブは資産増減率の累計となりますから、株価水準の変化に対する影響を受け難くなります。ただし、トレード中に株価水準が大きく変化した結果、大きな損益率となった場合は、その限りではありません。

このように考えると、トレーディングシステムは単株運用ベースよりも単利運用ベースの方が、より実態を反映したものになると言えます。
そこで、話を冒頭の議題に戻しますと、一般的なプロフィットファクターというのは、実は単株運用ベースの指標であることが分かります。

例えば、初期の株価が1,000円で10%の損失を出した場合、100円の損失となります。その後、株価が急落して100円まで落ち込んだ場合、10%の利益を出しても10円の利益に過ぎません。
100円の損失を回収するためには、単株運用の場合、10円の利益を10回積み重ねないとなりません。

例えば、全8回のトレードを行うシステムがあった場合、株価が1,000円の時に10%の損失を計上するも、その後株価が100円の時に7回続けて10%の利益を得た場合、単株運用ではトータル30円の損失になりますが、単利運用ではトータル60%の利益になります。
この場合、PFは単株運用では0.7となりますが、単利運用では7.0となります。

なお、単利運用の場合のプロフィットファクター(PFu)は、次式で定義することとします。

  PFu=総利益率(利益率合計)/総損失率(損失率合計)

実際の運用面で考えた場合、最初に100万円の資金があったとすると、1,000円の株式を1,000株購入して900円に下がったところで手仕舞いし10万円の損失となりますが、その後100円で9,000株を買い戻し、110円で手仕舞いすると9万円の利益となります。
当該株式を継続的にトレードする場合、株価が100円に下がっても売買株数は変えずに1,000株のまま、というのは極めて不自然であり、通常は当初の資金枠を目一杯使うことになるでしょう。

そう考えると、少なくとも単株運用ベースのシステムよりは単利運用ベースのシステムの方が、より現実的ということが言えそうです。
それならば複利運用ベースの方がより良いのではないかと思われるかもしれませんが、これはロバスト性が極めて悪く、システム評価という観点から設計基準にはなり得ません。

いずれにしても、従来のプロフィットファクターの定義は現実に即さない一面があるため、システム評価に用いる場合には注意が必要です。
出来うるならば、単利運用基準でのプロフィットファクターを用いるべきだと考えます。

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