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正確なシステムは寄付きで売買する [システムトレード]

トレーディングシステムにとって最も重要なのは、トレードに必要十分な項目を正確に評価することです。
一般には優れたロジックの開発に注目が集まりますが、それを正しく評価できてこそのロジックであるに過ぎません。

今、引値でシグナルを出すとともに、引値で売買を行なうシステムを考えてみます。もちろん、このようなシステムは論理的に破綻しているのですが、未だに公の場でまかり通っているのを目にすることがあります。

例えば当日株価が陽線ならばその日の引けでロングする、というロジックを考えた場合、これは常識的には実現できないわけです。
しかし、引けの3分位前の株価や板情報を見れば、その日が陽線で終わるかそうでないかは、かなりの確率で予測できるという主張を唱える人もいるでしょう。

あるいは、寄付き前の板情報を見てその日のエントリーを判断する、ということもありそうです。その際、直近のNY市場の株価を判断材料に加えて、ロングかショートかを決定する、とすれば、一見もっともなシステムに見えてきます。

でも、これらは100%ではないんですね。もちろん、前日のNY市場の株価は事実ですから、それを組み込んだシステムそのものには問題ありません。
しかし、引け前や寄付き前の板情報を判定材料に加えることで、すでにシステムの重要な要件である正確な評価が行なえなくなってしまうわけです。

よしんば100歩譲って、3分前の板情報を元にシグナルを発生するロジックを組み込んだとしましょう。例えば、寄付き3分前に気配値が前日終値より1%以上高かったらロング、1%以上低かったらショート、いずれでもなかったらエントリーなしとでもしてみます。

多少無理はありますが、売買を実行できないことはなさそうです。しかし、過去に遡ってこのシステムが機能するかどうかを、確認することは恐らくできないでしょう。
そもそも、3分前という基準そのものが、どの程度の正確さを要するものなのかすらはっきりしません。

3分前丁度に板が動いたら(これは普通にありえることです)、どのように判定すれば良いのでしょう?
残念ながら、この方法はシステムトレードと呼ぶには少々苦しいように思います。

実はこれと同じようなロジックを、「正確」なシステムとして採用する事例はわりとよくあります。例えばデイトレシステムにおいて、寄付き後30分の株価を見てその日の売買を決定する、という手法は、かなりメジャーなのではないでしょうか?

寄付き前の板情報と比べれば、確かに株価データは残りますし、ある程度過去に遡ったバックテストもできそうです。
では、これは正確な評価を行なっているのでしょうか?

残念ながら、正確ではありません。第一に、前述の時間の正確さの問題があります。私はティックデータをシステムに用いたことはありませんが、例えば30分後の株価がどの程度の正確さを持っているのか分かりません。

また、それが正確であったとしても、そのデータを取得するまでに若干の遅延が生じますし、更にはそれをシステムに取り込んで売買判定を下すまでにも遅延が生じ、更に売買を執行したことで株価が飛ぶという問題もあります。

これらを総じて、いわゆるスリッページと呼ぶわけですが、原理的にスリッページを避けられないシステムでは、通常、スリッページの大きさを仮定してシステムを設計するわけです。
これはあくまで仮定ですから、もちろん正確ではありません。スリッページの大きさをどのように決定するかによって、システムの性能は大きく違ってきてしまいます。

これはシステムに手数料を付加するかどうかとは、本質的に異なる現象です。すなわち、手数料の額は基本的にシステム運用者が管理・決定することができるわけですが、スリッページに関しては管理できません。極論を言えば、売買してみないと分からないわけです。

そのようなスリッページを内包したシステムでは、正確な評価を行なうことができないことは明らかです。
もちろんそのような場合でも、スリッページを考慮してもなお、十分な利益が得られるようにシステムを設計すれば良し、という考えもあるでしょう。

スリッページのことを十分によく理解した上で、自分でシステムを作成して運用するような場合であれば問題ないのですが、他者が作成したシステムを導入する場合には十分な注意が必要です。
特に、スリッページを過小に見積もっているようなシステムでは、バックテストと実運用との間に大きな乖離が生じるかもしれません。

ちなみに、スリッページがシステムに与える影響はけして小さなものではありません。例えば、手持ちのシステムにおいて、手数料をスリッページに見立てていろいろと変化させて見ると、その影響の大きさに驚かされることになるでしょう。

では、スリッページを含まないできるだけ正確なシステムを得るには、どうしたら良いのでしょうか?

その解の一つが、必ず寄付きで売買するというものです。あるいは、若干の不正確さは生じますが、引けで売買するというものです。
それらを前提としたシステムであれば、比較的正確な評価が可能となるでしょう。

もちろん、これはシステムの評価に関する正確性です。けして、その後のシステム運用の有効性(堅牢性)を保証するものではありません。
システムの堅牢性に関しては、全く別次元の話となります。

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コメント 2

jj

この記事、自分の考えと同じでしたので面白かったです。
by jj (2010-01-08 08:02) 

Kフロー

jjさん、はじめまして。
コメントをいただき、ありがとうございます。
今後もよろしくお願いいたします。

by Kフロー (2010-01-08 09:13) 

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