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売りは短く、買いは長く(解析編) [投資・経済全般]

4月8日のコラムにおいて、売り建ての場合は目標株価(最終決済価格)までに何度かの売り直しを行うことで、トータル収益を増加させることができることを示しました。
今回は、このことを数学的(解析的)に考察したいと思います。

最初に、計算に必要な数値を定義します。まず、初期資金残高をE[0]、n回売り直し後の資金残高をE[n]、最終資金残高をE[e]、そして、初期売り建て株価をs[0]、n回売り直し時の株価をs[n]、目標株価をs[e]とします。
さらに、売り直し基準幅を⊿sとします。株価が⊿s下がる毎に、売り直しを行うわけです。

続いて、これらの関係を表す計算式を求めます。最初に求めるのは、お馴染みの漸化式です。

 E[n]=(1+⊿s/s[n-1])*E[n-1]   ・・・(1)
 s[n]=s[n-1]-⊿s   ・・・(2)
 s[0]-s[e]=n*⊿s   ・・・(3)

(1)式は、n回目の売り直し後の資金残高は、直前の資金残高にその売り直しによって資金が増加する割合を乗じたもの、という意味です。
(2)式は問題ないと思います。(3)式は、⊿s毎のn回の売り直し後に、株価がs[e]になることを示しています。

さて、これらの漸化式から、どのような結論を導き出せばいいのでしょうか?最終的には、E[e]をE[0]や⊿sなど、nを含まない数式で表したいわけです。
そこで、(1)式に(2)式を代入していくことで、まずはE[n]をs[n-1]を用いずに表すことを考えます。

(2)式は漸化式ですから、s[n-1]=s[n-2]-⊿s などとも表すことができます。それらを用いると、(1)式は次のように変形できます。

 E[n]=(1+⊿s/(s[n-2]-⊿s))*E[n-1]
    =(1+⊿s/(s[n-3]-2*⊿s))*E[n-1]
       ・・・
       ・・・
    =(1+⊿s/(s[0]-(n-1)*⊿s))*E[n-1]   ・・・(4)

同様に、E[n-1]、E[n-2]、・・・E[1]は、次式で表されます。

 E[n-1]=(1+⊿s/(s[0]-(n-2)*⊿s))*E[n-2]
 E[n-2]=(1+⊿s/(s[0]-(n-3)*⊿s))*E[n-3]
       ・・・
       ・・・
 E[1]=(1+⊿s/s[0])*E[0]

これらを(4)式に順次代入していくと、E[n]は結局、次式で表されることになります。

 E[n]=(1+⊿s/(s[0]-(n-1)*⊿s))*(1+⊿s/(s[0]-(n-2)*⊿s))*
    ・・・*(1+⊿s/(s[0]-⊿s))*(1+⊿s/s[0])*E[0]   ・・・(5)

簡単になるどころか、ますます複雑になってしまいました。しかし、それぞれの()内を通分してやると、各項が互いに約分できて非常に簡単な数式になります。
例えば、

 1+⊿s/(s[0]-(n-1)*⊿s)=(s[0]-(n-2)*⊿s)/(s[0]-(n-1)*⊿s)
 1+⊿s/(s[0]-(n-2)*⊿s)=(s[0]-(n-3)*⊿s)/(s[0]-(n-2)*⊿s)
       ・・・
       ・・・
 1+⊿s/(s[0]-⊿s)=s[0]/(s[0]-⊿s)
 1+⊿s/s[0]=(s[0]+⊿s)/s[0]

となるため、E[n]は結局、次式で表されます。

 E[n]=((s[0]+⊿s)/(s[0]-(n-1)*⊿s))*E[0]   ・・・(6)

これに(3)式を代入すると、結局、

 E[n]=((s[0]+⊿s)/(s[e]+⊿s))*E[0]   ・・・(7)

と、とても簡単な式になります。
ここで、⊿s=0とすると、無限に売り直しを行った場合に得られる最大収益が求められます。

 E[n]=(s[0]/s[e])*E[0]   ・・・(8)

例えば、株価が1,000円の時に新規売り建てを行い、株価が200円になるまで売り直しを続けたとすると、極限的な最終資金残高は初期資金残高の5倍になります。
売り直しを行わない場合は1.8倍ですから、売り直しの効果は極めて大きいことが分かります。

ちなみにこの場合、(7)式において⊿s=1,000-200=800円とすれば、売り直しを行わない場合の資金残高を求めることができます。
(1000+800)/(200+800)=1.8で、確かに1.8倍になっています。

もちろん、実際には値幅に制限がありますし、売買単位も考慮しなくてはなりません。また、売り直しの度に手数料が掛かってしまいます。
そのため、(8)式のような極限値を取ることは現実にはできません。また、先日のコラムでも述べましたように、売り直しの際にはリスク管理をより厳密に行う必要があります。

最後に、売り直しではなく買い直しの場合についても求めてみます。
買い直しの場合は、(1)式は変わらず、(2)式と(3)式が次のように変わります。定義については、「売り直し」を「買い直し」、「下がる」を「上がる」と読み替えてください。

 s[n]=s[n-1]+⊿s   ・・・(9)
 s[e]-s[0]=n*⊿s   ・・・(10)

途中の計算方法は、売り直しの場合と全く同じです。その結果、最終的には次式が得られます。

 E[n]=(s[e]/s[0])*E[0]   ・・・(11)

これは⊿s=0の極限を取ったわけではありません。計算の過程で、⊿sの部分がきれいに消えてしまったわけです。
すなわち、買い直しの場合には、最終資金残高は⊿sに依存しないことが分かります。

これは、買い直しを行っても買い保有し続けても、最終資金残高に違いはないことを意味します。先日のコラムの結論を、解析的に求めたわけです。
結局、買い建ての場合には、買い直しを行うほど手数料が掛かってしまいますので、目標株価まで買い保有を続けた方が良い、ということになります。

よく、売り建ては最大利益が投入資金の2倍止まりであるにも関わらず、損失は無限大なので割に合わないといったことを見聞きしますが、効果的に売り直しを行っていくことで、レバレッジを上げることなく収益を飛躍的(2倍以上)に増加させることが可能となるわけです。

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