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「勝率80%の逆張りシステムトレード実践テクニック」(書評) [雑感]

先日、表題の書籍を購入いたしました。これは、著者である斉藤正章氏の前著「勝率80%の逆張りシステムトレード術」の続編で、斉藤氏が提唱する逆張りシステムトレードに関する実践テクニックを解説した書籍です。
前著と合わせて、以下にご紹介します。

斉藤正章の「株」勝率80%の逆張りシステムトレード実践テクニック

斉藤正章の「株」勝率80%の逆張りシステムトレード実践テクニック

  • 作者: 斉藤 正章
  • 出版社/メーカー: 日本実業出版社
  • 発売日: 2008/09/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



株 勝率80%の逆張りシステムトレード術

株 勝率80%の逆張りシステムトレード術

  • 作者: 斉藤 正章
  • 出版社/メーカー: 日本実業出版社
  • 発売日: 2006/07/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


斉藤正章氏は、エンジュクでブログを掲載していらっしゃり、また、前著も版を重ねるほどのヒットとなっていることから、ご存知の方も多いのではないかと思います。
特に、システムトレードに関心のある方なら、ご存じない方が少ないのではないでしょうか。

前著については、2006年7月20日のコラムで触れていますので、ここでは説明は割愛いたします。今回は、続編の方に的を絞って、じっくりと解説してみたいと思います。

まず、全体的な印象としては、非常に読みやすい内容となっています。ページ数は200P強ありますが、文字が大きく字間も広く、図表が豊富なため、一気に読み進めてしまいます。
内容的にも、平易で具体的な説明となっており、システムトレードに馴染みのない方でも、容易に読み進めることができるでしょう。

本来、ここまで具体的な数値で示すことは、よほどの自信がないとできないものと思います。その点につきましては、著者の斉藤氏も絶対の自信をお持ちなのでしょう。
本書を読み進めていくにつれ、なるほどと思わせる箇所も豊富にでてきます。

前著において曖昧だった、銘柄選定やマネーマネジメントについても、今回は豊富な事例を用いて丁寧に解説しています。
というよりも、前著への指摘や疑問に対しての回答が本書である、と言えるのではないかと思います。

しかし、具体的な数値を用いての解説であるが故に、いくつかの矛盾点も目に付いてしまいます。それによって、斉藤氏を批判するわけではけしてありませんし、単なる(私もしくは斉藤氏の)勘違いや表記ミスかもしれませんが、以下にいくつかの疑問点を掲げてみます。

本書には、逆張り投資法の検証結果がいくつも出てきますが、その中で奇妙に感じたのは、平均損益率の項目です。
それと言いますのも、平均損益率として20%や30%などといった値が、頻繁に出てくるのです。

本書によりますと、平均損益率の定義として、「勝ったトレードも負けたトレードもすべて含めた平均の損益をパーセントで表したもの」としています。
まあ、これは一般的な定義と同じものと言って良いかと思います。

すなわち、ある一連のトレードにおいて、例えば10回の売買で、10%のプラスが8回、5%のマイナスが2回であったとすれば、その平均損益率は7%ということになります。
私が行なっているようなシステムの場合、銘柄は単一ですから、時間軸方向の平均損益率を求めることになります。すなわち、全テスト期間内の全トレードの平均損益率を求めるわけです。

一方、斉藤氏の用いる平均損益率は、1セットのトレードにおける損益率の平均を求めることになります。詳しくは本書をご覧いただきたいのですが、逆張りシステムトレードのマネーマネジメントとして、資金を等分割し、それぞれの資金枠内でそれぞれの銘柄を売買します。

例えば、資金を10分割した場合は、最大10種類の銘柄を売買するわけです。また、もしも買い条件に合致する銘柄が10に満たない場合は、その分の資金枠はそのままキャッシュポジションとなります。
そして、その後いくつかの銘柄で買い条件が整った時に、資金枠が空いていれば、その銘柄を購入することになります。

また、逆張りシステムトレードにおいて、実例として紹介されている手仕舞い条件は、株価終値が買値から10%以上上昇した時か、10%に達しない場合は買ってから30日以上が経過した時、翌営業日の寄付きで決済するとなっています。

すなわち、10%以上の利益になったら利益確定するわけですから、平均損益率が20%や30%以上になるということは、ちょっと考えられないわけです。
また、検証結果を見ると、10トレード(あるいは2トレード)を1セットとして、1セット分の平均損益率をセット数倍したものを年間利回りとしていることが分かります。

なぜ、このような定義になっているのか、いろいろと考えてみたのですが、私には理解できませんでした。年間利回りが正しくて、平均損益率はそれを便宜的にセット数で割った値を採用したのか、あるいは、平均損益率が正しくて、年間利回りはそれをセット数倍したものなのか、私には分かりません。

分かりやすい例を挙げますと、資金を2分割し安全に運用する例として、170ページに載っている結果において、1997年には5回のトレードで5勝0敗、平均損益率45.54%、利回り113.85%となっていますが、株価上昇10%で利益確定にも係わらず、ちょっと考えられない数字になっています。

その時の具体的な銘柄が分からないので何とも言えないのですが、2銘柄の同時買い付けが2.5回あった(3回あったが内1回は1銘柄しか買えなかった)とすると、全5回の各トレードにおいて、それぞれの利益率が平均で45%もあったことになります。

株価が10%を超えた翌日に手仕舞いするわけですから、10%を超えた日の上昇と翌日のギャップアップで、35%以上も上昇しないといけないわけです。しかも、5銘柄全てにおいてです。
こんなことが可能なのか、甚だ疑問に感じざるを得ません。

また、仮に1銘柄ずつ5回転した場合は、113.85%の1/5で22.77%で済むのではないかと思われるかも知れませんが(それでも大きいですが)、運用条件として、空いている資金枠はキャッシュポジションとするわけですから、全資金を5回転はできないことになります。

考えれば考えるほど、どのように解釈すれば良いのか分からなくなってしまいます。単なる表記や印刷のミスであることを願います。

また、2008年年初からの株価下落(斉藤氏はサブプライムショックと述べていましたが、サブプライムショックは2007年8月の下落ではないかと思います)で、「機械的に選択した」買い付け候補銘柄を示しています。

ちょっと意地が悪いとは思いましたが、それらのトレード結果を調べてみました。その結果、全体としては8勝2敗で勝率80%(本書の表題通り!)、ただし、10%超えでの手仕舞いは6銘柄でした。
さらに、最大利益率は13.24%、最大損失率は-47.26%、そして10銘柄の平均損益率は1.51%に過ぎませんでした。

47.26%の損失が全体の足を引っ張ったことは確かですが、それを除いて平均損益率を求めてみると、6.93%となりました。
これはわりと大きいように見えますが、ここで注意しなくてはならないのは、この一連のトレードによって、全資金の9/10が6.93%増加したに過ぎないことです。

けして6.93%の9倍、すなわち62%もの資金増加があったわけではないことに、注意する必要があります。
ましてや、全10銘柄をトレードした場合、200万円をトレードして1.51%の増加、すなわち、203万円に増えたに過ぎません。下手をすると、手数料でマイナスになるかもしれません。

平均利益率に対して平均損失率が大きい、すなわち、損益レシオが1よりもかなり小さいことは、斉藤氏も認めています。
平均して10%前後の勝ちが8回あったとしても、20%前後の負けが2回あれば、平均損益率は4%程度になってしまいます。勝率8割で10%の利益というのは、結構大変なのです。

最後に、本書ではレバレッジを2.5倍程度掛けての運用例を示していますが、これは参考にされない方が良いのではないかと思います。
システムの潜在的な損益レシオを考えれば明らかですが、意外にあっけなく追証が掛かるのではないかと考えます。

そもそも、運用資金100万円でレバレッジ2.5倍の運用を、現物取引で100万円、信用取引で150万円で合計250万円分の銘柄を買い付けるとしていますが、これが不可能であることは信用取引を行なっている方なら常識だと思います。 もっとも、現物取引なし、信用取引で250万円なら、可能ですが。

以上、結構否定的な指摘も行ないましたが、このような指摘が可能なのも、データを定量的に示されているからです。
そのような斉藤氏の姿勢には感銘を覚えますし、そのような課題があることを踏まえた上であれば、本書は非常に優れたシステムトレードの入門書なのではないかと思います。

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Kフロー

信用取引の部分につきましては、私の勘違いであることが分かりました。斉藤正章様や関係者の方々、ならびに当コラムをご覧いただいた方々に、多大なご迷惑をおかげいたしましたことを、深くお詫び申し上げます。

また、今後2度とこのような間違いがないよう、記事の投稿にはより一層の注意を払っていく所存です。

当該箇所につきましては削除も考えましたが、どの部分が間違いであったかを明確にするため、削除線による修正といたしました。
なにとぞご理解いただけますよう、お願い申し上げます。

なお、今回の間違いは、私の読解力と注意力が足りなかったために生じたものであります。
私は、現物保有分をすっかり忘れて、信用取引分だけで250万円を建てるものと勘違いしていたようです。

現物株を100万円分買い付けてそれを担保にすれば、担保評価を8割として240万円程の資金が調達できます。その内の150万円を信用取引に用いることは、余裕を持って可能となります。

最後に、重ね重ね、皆様にお詫び申し上げます。申し訳ありませんでした。
今後とも、当ブログをご覧いただけましたら幸いです。

by Kフロー (2008-11-27 11:37) 

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