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トレンドの安定指数 [トレード新思想体系]

前節では、最適トレンドラインについて述べました。これは、直近の株価トレンドを知るための有効な指標ですが、では、それはどれくらい信頼に足るものなのでしょうか。
また、複数の最適トレンドラインの内、どれが最も支配的なのか知る術はないのでしょうか。

トレンドの信頼性、あるいは安定性を測る指標があれば、その数値を比較することによって、上記の疑問に対する一つの回答が得られます。
今回は、そのような指標について考えてみます。なお、以下では簡単のため、上昇トレンドを例に述べますが、下降トレンドでも議論の本質は変わりません。

一連の株価推移に対して最適な上昇トレンドラインは、EERがプラスの極大値を取る日から現在までの間の回帰直線に平行で、そこから標準誤差の2倍分だけ下方に平行移動した直線であることは、これまでに説明した通りです。

しかし、このラインは一つではなく、EERの極大値の数だけ存在します。例えば、直近で複数のトレンドラインが接近している時、はたしてどのトレンドラインに乗ればよいのか、判断しなければなりません。

今、株価がトレンドラインを割り込んでストップとなる場合を考えます。それにはまず、株価がトレンドライン及び回帰直線に対して、どの位置にあるかを決めてやらなければなりません。
これは、平均的には回帰直線上にあることが期待できます。当然、実際はどこにあるかは分からないのですが、あくまで平均的に見てみようという訳です。

そうした時に、株価がその後どのように推移するかを考えてみます。株価が上昇すれば、トレンドラインを割り込んでストップとなるまでの日数は長くなります。逆に、下落すれば短くなります。
株価が上昇するか下落するかは五分五分ですから、平均的な株価推移は上昇でも下落でもない、すなわち変化しないと考えてみます。

その時、回帰直線上にある株価がトレンドラインを割り込むまでの平均日数が、一意的に決定できます。それを、標準猶予日数と呼ぶことにします。
これは、1年を365日として、2×365日/EERとなります。あるいは、2×標準誤差/期待収益率でも表されます。

標準猶予日数とは、その定義からも分かるように、株価がトレンドラインを割り込むまでの平均的な日数です。
これは一見、長い方が良いように見えますが、定義からも明らかなように、短い方が優れています。

標準猶予日数が短いほど、トレンドが崩れた時からストップまでの日数が短く、損失を小さく抑えることができます。
すなわち、それだけ低リスクなトレードを行なうことができる訳です。

では、この標準猶予日数を比較すれば、トレンドの信頼性や安定性が判定できるのでしょうか。
実は、それだけでは十分ではありません。

株価が短期的に急騰した場合、標準猶予日数は極めて短くなります。しかし、このようなトレンドは、安定していると言えるのでしょうか。
重要なのは、このトレンドが継続している期間であることは明白です。

短期トレードに徹するのであれば、このような短期トレンドに飛び乗って、素早く降りるやり方も有りですが、中長期的なトレードを目指すのであれば、標準猶予日数だけに頼るわけにはいきません。
一般に、標準猶予日数が短いトレンドは短期であり、長いトレンドは長期となります。

この短期、長期とは、トレンドが継続している日数、すなわち、統計期間のことです。あるトレンドの標準猶予日数が長くても、それ以上に統計期間が長ければ、そのトレンドは安定していると言えるでしょう。

逆に、いくら標準猶予日数が短くても、統計期間がそれ以上に短ければ、そのトレンドは不安定であり、それを頼りにトレードを行なうことは危険です。
このように考えると、統計期間と標準猶予日数との比を採ればいいことが分かります。これを、トレンドの安定指数と呼ぶことにします。

安定指数が大きいほど、信頼性が高く安定したトレンドであると言えます。株価推移のトレンドの場合は、安定指数は一桁台がほとんどですが、システムトレードにおける資産カーブの安定指数の場合、二桁台となることも珍しくありません。

すなわち、それだけトレーディングシステムの信頼性が高い、すなわち資産カーブがトレンドライン(管理限界)を割り込む可能性が小さいことを意味します。
システムが長期に渡って機能し続けるためには、安定指数を高めることが重要となる訳です。

以上では主に上昇トレンドについて述べてきましたが、安定指数は下降トレンドに対しても同様に定義することができます。
もし、直近に上昇トレンドと下降トレンドが存在した場合、両者の安定指数を比較することによって、今後の株価の推移を占うことができます。

上昇トレンドの安定指数の方が大きい場合は、上昇トレンドが支配的になり、下降トレンドの方が大きい場合は、下降トレンドが支配的になると考えられます。
ただし、それが有意であるためには、両者の安定指数に大きな開きがあることが必要かもしれません。

以上、述べてきましたように、トレンドの安定指数という指標を導入することによって、複数のトレンドラインの内、どれが最も支配的であるかを決定することができます。
それによって、トレードにおいて参照するトレンドラインが明確になり、的確なストップ、すなわちリスク管理を行なうことが可能になる訳です。

また、トレーディングシステムの開発においては、安定指数の最大化を目標に設定することで、システム性能を客観的に比較・評価することができます。
なお、これは過去に述べてきたEERの最大化と競合する概念ではなく、出来るだけ長い統計期間において、出来るだけ大きいEERを追求するということに他なりません。


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最適トレンドライン [トレード新思想体系]

前節で、EERが極値を取った時が、回帰トレンドの統計期間として最も適していると述べました。このようにして定義されるトレンドラインを、最適トレンドラインと呼ぶことにします。
最適トレンドラインは、EERが極値を取った日から、現在を経由して未来に向かって引かれる直線です。すなわち、過去の事象を説明するのみならず、未来のトレンドを予測するという側面を有しています。

ただし、これは何度も言いますように、過去の一定期間において、株価が統計的に意味があると思われる振る舞い(例えば回帰直線を中心としたガウス分布)をしている場合に、その分布の範囲を推測するものであり、あくまでそのような状態が継続している限りにおいて意味があります。

この最適トレンドラインは、必ず現在を通過するラインであり、過去の特定期間において後付けで書き記されるラインではありません。そういった意味では、より実戦的に使える指標となります。
さらには、最適トレンドラインは1本ではなく、通常は複数のラインが存在します。

これは、EERが極値を取る場合が、一つだけとは限らないからです。現在から過去に遡ってEERの推移を調べてみると、何回も極値を取りながら変化している様子が分かります。
これらの極値を取った日から、現在に向かって引かれるトレンドラインは、全て最適トレンドラインということになります。

これらは、通常は長期トレンドラインや中期トレンドライン、短期トレンドラインなどと呼ばれるでしょう。そして、その時々の相場展開に応じて、様々な影響を及ぼすかのように振舞います。
短期トレンドラインの寿命は比較的短い場合が多いのですが、長期のそれは数年にも渡る場合があります。もっとも、そのようにして永らえてきたからこそ、長期トレンドラインと呼ばれるのですが。

このような最適トレンドラインですが、EERの全ての極値に対応する全てのトレンドラインを扱っていたのでは、かえって見通しが悪くなる場合があります。
そこで、通常は主要な数本のラインを選択することになります。

それは、直近のラインと、最も古いライン、そして、その中間に存在する何本かのラインです。
直近のラインは、現在の株価から最も強い影響を受けています。そして、最も古いラインは、最も過去からの株価の影響を受けています。この2本は、トレンドラインの骨格を成すものであり、重要です。

そして、中間のラインですが、これは慎重に選別する必要があります。基本的には、EERがプラスの極大値を取る場合と、マイナスの極小値を取る場合を選びます。
前者が上昇トレンド、後者が下降トレンドということになります。

しかし、EERの推移を注意深く観察すると、EERがマイナスの極大値を取ったり、プラスの極小値を取ったりする場合があります。
通常はこれらは無視するのですが、次のような場合には、一概に無視し切れないことがあります。

例えば、元々は強かった下降トレンドの勢力が弱まって、EERがプラスの極小値を取ったりするような場合です。
このような場合で、元々の下降トレンドが株価に強く影響を受けていたならば、その傾きがプラスに転じても、しばらくはトレンドラインとして残しておく必要があります。

また、EERがプラスの極小値と、その両側にある極大値との差が大きい場合にも、その極小値に対応するトレンドラインを選択することがあります。
これは、株価がボックス圏で推移する場合に起こりやすく、投資判断としてはやはり重要だと考えられるからです。

このようにして、中間期間における何本かのトレンドラインを選択すれば、それに直近ラインと最古ラインを加えて、一連の最適トレンドラインが出来上がります。
このようにして、日経平均株価の最適トレンドラインを求めた結果が、毎週金曜日のコラムで示しているチャートです。

もちろん、これは日経平均株価に限らず、任意の銘柄でも全く同様に求めることが出来ます。あるいは、まだ試したことはないのですが、資産カーブの推移に対しても適用することが出来るのではないかと考えています。

すなわち、リスク管理(ストップ基準)の一手段として、最適トレンドラインを用いることができるということです。

株価の場合は言うまでもないでしょう。例えば、株式購入時に参照した最適トレンドラインを、株価が割り込んだらストップとなります。
ここで重要なのは、株式購入時点でトレンドラインを固定しなければなりません。すなわち、それ以降は、日々のEERを計算してトレンドラインを最新のものに更新してはいけない、ということです。

トレンドラインの更新作業は、当初に定めたストップ基準の変更に該当します。それは、避けなければなりません。
トレンドラインを割り込んでしまったが、どうしてもホールドを続けたいというのなら、一旦手仕舞いして、改めてトレンドラインを計算し直し、その上で必要数を買い建てるべきでしょう。

資産カーブの最適トレンドラインですが、この場合、最古のトレンドライン(通常はそのシステムの管理限界ライン)が最も重要となります。ただし、それでは従来の管理手法と変わりません。

そこで、直近の最適トレンドラインを用い、それによってシステムのON/OFFを判断する手法が考えられます。
ただし、これは完全にアイデア段階です。結果についてはどうなるか分かりません。

以上、述べてきましたように、最適トレンドラインを用いれば、効果的なストップの設定が可能となり、投資成績の向上が期待できます。
ただ、けして勘違いしてはいけないことは、トレンドラインは株価の影響を受けて形成されるものであり、トレンドラインが株価を形成するのではない、ということです。


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標準誤差とEER(2) [トレード新思想体系]

前節では、標準誤差および、それに基づいた回帰トレンドについて述べました。標準誤差は、資産カーブもしくは株価推移の、回帰直線に対するバラツキ具合を表すものであり、標準誤差で規定された限界線が回帰トレンドということになります。

資産カーブや株価推移の状態を表す指標には、上記の標準誤差の他に、期待収益率というものが考えられます。
これは、標準誤差の前提となった回帰直線の傾きで定義され、単位時間・単位株数当たりの平均的な資産あるいは株価推移を示します。

すなわち、この値が大きいほど、より短期間、より少ない株数(資金)で収益を上げることが期待できます。
理想的には、期待収益率が大きく、かつ標準誤差が小さい状態が、長期間継続するほど、ローリスク・ハイリターンのトレードが実現できます。

さて、標準誤差と期待収益率という2つの指標が出てきましたが、これらを抑えれば十分なのでしょうか。
統計的に考えれば、資産や株価の推移の平均的な動向と、個々の値のバラツキ具合が分かれば、十分のように思われます。

私の知る限りにおいては、B・マルキール氏に代表されるテクニカル否定派に、科学的に意味があると自信を持って言える指標には、少なくとも上記の2つが含まれるものと思います。

また、テクニカル否定派もまた、回帰直線と標準誤差を否定することはできないものと考えます。なぜなら、これらを否定することは、統計学的手法に基づいた現代経済学を否定することに、他ならないからです。

さて、この標準誤差と期待収益率ですが、例えば、期待収益率は高いが標準誤差が大きいシステムと、期待収益率は小さいものの標準誤差もまた小さいシステムとでは、はたしてどちらが優れたトレーディングシステムなのでしょうか。

期待収益率は、収益、すなわちリターンを表す指標です。一方、標準誤差は、バラツキ、すなわちリスクを表す指標です。
システムとしては、リターンが大きく、リスクが小さいほど良いわけですから、期待収益率を標準誤差で割った数値を比較すればいいことが分かります。

この指標を、EER(Efficiency to Error Ratio)と呼ぶことにします。これは、一般的にはリスク・リワード・レシオ(RRR)と呼ばれることもありますが、定義が一定しておらず、誤解を招く恐れがあるので、ここではEERと呼ぶことにします。

さて、このEERですが、いったいどのように考えればいいのでしょうか。

答えは簡単です。EERが大きいトレーディングシステムほど優れたシステムである、とすればいいのです。これで、期待収益率と標準誤差の対立は、回避されました。
しかし、EERが同じでも、期待収益率が異なれば、やはりシステム性能に差があると言えるのではないだろうか、という疑問もあるでしょう。

もちろん、EERが同じ複数のシステムがあったなら、その中で期待収益率が大きいシステムほど良いことは言うまでもありません。
しかし、その違いは、投下資金量の違いでしかありません。

回帰トレンドは、トレーディングシステムの機能停止を判定する役目を担っていることは、前節で述べたとおりです。すなわち、資産カーブが回帰トレンドを下回ったら、そのシステムは停止しなければならない訳です。

もしも、期待収益率は異なるがEERは同じである2つのシステムがあった場合、許容損失が同額であれば、実効的な期待収益は両者で等しくなります。

すなわち、期待収益率が小さいシステムは、期待収益が等しくなるように、建て玉数を増やす必要がありますが、単位株数当たりの標準誤差も小さいため、システム停止時の損失額は、期待収益率が大きいシステムと同額になる訳です。

もちろん、資金量によって建て玉数に制限があるため、期待収益率が小さすぎるシステムでは運用が困難になる場合がありますが、それを補って余りあるほどの十分大きな収益が期待できるのであれば、それなりにやり様はあるのではないかと思います。

さて、本来であれば上記のようにシステム管理に用いられるEERですが、このEERの性質を利用すると、トレンド判定に用いることが可能となります。

今、ある株価の推移に基づいて、トレンドラインを引くことを考えます。トレンドとしては回帰トレンドを用いることにしますが、その統計期間をどうやって定めればよいかが課題だった訳です。

ここで、EERを考えます。直近株価から過去に遡って日々のEERを求めると、EERが極値を取る日が存在することが分かります。
実は、この極値を取る日から直近日までが、回帰トレンドの統計期間として最も適しているのです。

EERは、回帰直線の傾きが大きく、標準誤差が小さいほど大きくなります。一般的なトレンドの性質としては、株価のバラツキが小さく、平均的に大きな傾きを維持して、株価が推移して行く訳です。すなわち、これはまさにEERが大きいという条件と合致します。

上述の方法でEERを求めて行きますと、EERがいくつかの極値(極大値および極小値)を取りながら推移して行く様子が分かります。
そして、EERがプラスの時に極大値を取ると上昇トレンドに、マイナスの時に極小値を取ると下降トレンドになります。

それらの回帰トレンドは、うまく株価の天底を捕らえている場合が多くあります。厳密にトレンドとして認定するためには、その回帰直線を中心とした株価の分布を求めて、それがガウス分布になっていることを確認する必要がありますが、簡易的にはEERの極値を取るだけで十分でしょう。

トレンドというものを、以上のようにEERから定義してやると、マルキール氏らが批判するオカルト的な要素を消し去ることができます。
そして、純粋に統計学的な指標として生きてくる訳です。

こうやって求めた回帰トレンドは、けして未来を予測するものではありません。しかし、統計期間中における株価の振る舞いを説明し、同様の振る舞いが続く限りにおいては、そのトレンドの上方で株価が推移するだろうことを期待することができます。

そして、株価が(上昇)回帰トレンドを下回った時、株価がそのトレンドの上方で推移するという期待が打ち破られたことが明確になります。
その場合は、そのトレンドがもはや機能しなくなった訳ですから、直ちに手仕舞いをする必要が生じることになります。

以上、述べてきましたように、標準誤差やEERという指標は、システムトレードのみならず、通常の裁量的トレードにおいても重要な役割を果たします。
そして何よりも、一部の経済学者らによるテクニカル批判に対する、明確な反証となるのではないかと考えます。


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標準誤差とEER(1) [トレード新思想体系]

前節では、ストップ基準について解説しました。システムか裁量かを問わず、株式トレードにおいてストップ基準を設けることは、非常に重要なことです。
ここでは、テクニカル面から見たストップ基準の前提となる指標について、考えてみたいと思います。

さて、テクニカルなストップ基準とは、いったいどのようなものなのでしょうか。買値から何%下げたら損切りというのは、明らかにテクニカルなストップ基準ではありません。

例えば、直近の最安値を下回ったらストップ、過去n日の最安値を下回ったらストップ、m日移動平均を割り込んだらストップ、トレンドラインを割り込んだらストップ、等は、テクニカルなストップ基準となり得ます。

さて、ここでは上例にも出てきたトレンドラインについて考えてみます。トレンドラインは通常、過去における主要な安値同士、または高値同士を直線で結んだものとして定義されます。
株価が上昇基調にある時、主要な安値を結んだラインは上昇トレンドとなります。一方、株価が下落基調にある時、主要な高値を結んだラインは下降トレンドとなります。

これらの説明からも分かるように、一般的なトレンドラインは多分に感覚的な側面を有しています。すなわち、どの安値や高値に着目するかで、千差万別のラインが引けるからです。
このままでは、トレンドラインを客観的に定義することは難しくなります。

そこで、回帰直線という指標を用いることを考えます。これは、過去の株価の推移を線形近似した直線で、株価の平均的な推移を示します。
ただし、これだけではトレンドラインとして用いることはできません。なぜなら、このラインは株価推移の中央付近を通るため、株価を下支えする役目はないからです。

いくつかの書籍やブログでは、トレンド継続期間内の最安値および最高値を通り、回帰直線に平行な直線を引けば、それがトレンドラインやレジスタンスラインとなる旨の説明がなされている場合がありますが、やはり客観性に乏しいように思えます。

では、いったいどうすればいいのでしょうか。そのための方法は、工業科学分野では既に当たり前のように用いられています。
それは、標準誤差を用いるということです。

標準誤差とは、回帰直線を中心に分布した測定値(株価)のバラツキ具合を示す指標で、この値が大きいほど、個々の株価が平均的に回帰直線から離れていることを表しています。
標準誤差をδ(デルタ)という記号で表しますと、回帰直線に平行でそこから±δ離れた2本の直線間に含まれる株価の割合は68%、±2δ離れた場合では95%になります。

標準誤差は一見、標準偏差に似ていますが、標準誤差が回帰直線の周りに分布するデータを扱うのに対し、標準偏差は平均値(x軸)の周りに分布するデータを扱います。
したがって、標準誤差が0であっても、同一区間の標準偏差は必ずしも0にはなりません。

株価の95%は回帰直線±2δの範囲に収まるという統計則を用いれば、この±2δラインをトレンドラインと見なしても差し支えないということになります。
なお、この統計則が成り立つためには、厳密には、回帰直線を中心とした株価の分布がガウス分布である必要がありますが、とりあえず「ほぼそうであろう」という前提で話を進めます。

こうして、回帰直線から±2δ離れたラインが、トレンドラインとして機能することが分かりました。株価が上昇基調にあるときは-2δラインが、下落基調にあるときは+2δラインが、トレンドラインとなります。
このようにして決められたトレンドを、回帰トレンドといいます。

この回帰トレンドは、かなり堅牢な基準であり、株価が上昇中に回帰トレンドを下抜けると、トレンド転換のサインとなります。
もちろん、株価が回帰トレンドを一旦下抜けた後、再び上昇することもあります。その場合は、その時点で新たに投資判断を行う必要があるでしょう。

この回帰トレンドは、システムトレードでも裁量トレードでも用いることができます。システムトレードの場合は資産カーブの管理に、裁量トレードの場合は手仕舞いの判断に用います。
すなわち、資産カーブが回帰トレンドを下回ったらシステム停止、あるいは株価が回帰トレンドを下回ったら手仕舞いするわけです。

また、回帰トレンド付近まで落ちた後の反発局面でEntry、あるいは買い参入するという、逆張り的なシグナルとしても使用することができます。
この場合は、下値(ストップ基準までの値幅)が限定されているので、比較的低リスクなトレードが可能になります。

ここまで述べてきて、一つ重要な事柄に触れていないことに気付かれた方もおられるでしょう。そう、この回帰トレンドの統計期間(移動平均などで言う25日等の期間)についてです。
この期間が明確にならなければ、回帰トレンドを有効活用することはできません。

システムトレードの場合は、バックテストを行なった期間を、そのまま回帰トレンドの統計期間にすればいいのですが、裁量トレードなどで株式を買い建てた場合などは、どのくらいの統計期間を用いればいいのか、判断に悩みます。

回帰トレンドには標準的な統計期間は定着していませんし、また、銘柄や相場環境によって最適統計期間が大きく異なってきます。
この問題を解決するためには、新たな指標が必要になってきます。

次回は、この新たな指標であるEER(Efficiency to Error Ratio)について考えてみたいと思います。


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ストップ基準 [トレード新思想体系]

システムトレードに限らず、株式トレードを行う上では、トレードを手仕舞いする意思決定が重要となります。これには多くの要因が考えられますが、特にシステムトレードにおいては、資産カーブが減少に転じ、予め決めておいた基準を下回ったら、直ちにシステムをストップする必要があります。

このような基準は予め決めておく必要があるのですが、今回はその決定方法について考えてみたいと思います。
なお、この種の議論は多くの書籍やブログなどでもなされており、私の考えもそれらと大差ないことを、予めお断りしておきます。

ストップ基準には、実は2種類あります。一つは、自己資金から見た基準であり、もう一つはシステム(あるいは投資戦術)から見た基準です。
本来、これらは明確に分けて考える必要がありますが、両者をごっちゃにしている人もいるかもしれません。

自己資金から見たストップ基準とは、投資資金に対して何%の損失まで許容できるかということです。まずは、これを決定する必要があります。
その水準や考え方は人それぞれでしょうから、ここでは一般論として説明します。

例えば、年間20%までの損失なら已む無しとする、とした場合、1回のトレードで許容できる損失は、通常20%よりも小さくなります。
個々のトレード当たりの許容損失をどれくらいにするかは、投資スタイルなどによって異なります。

中長期トレードが中心の場合は、1トレード当たりの許容損失は比較的大きいものとなります。これは、年間の平均売買回数や勝率、最大連敗数、あるいは平均連敗数などの情報を元に決定します。

例えば、最大連敗数を基準とした場合、年間許容損失を最大連敗数で割った値が、1トレード当たりの許容損失となります。年間許容損失が20%で、最大連敗数が4の場合、1トレード当たりの許容損失は5%ということになります。

また、年間平均売買回数が8回だったとした場合、勝率が50%であれば、年初からの4連敗の可能性を考えて、やはり1トレード当たりの許容損失は5%ということになります。
なお、これらは最悪のケースを想定した場合であり、通常は初っ端から最大連敗などということは、あまり起こらないかもしれません。

そういった場合には、平均連敗数を基準にするということも、考えられます。しかし、運が悪いと、年末までかなりの日数を残して、その年は市場から退場ということになってしまいます。
そうならないためにも、1トレード当たりの許容損失は厳しめに見た方がいいのかもしれません。

一方、短期トレードが中心の場合も、考え方は同様です。ただ、最大連敗数などが中長期トレードの場合よりも大きくなりやすく、その結果、1トレードあたりの許容損失は、中長期トレードと比較して小さくなるでしょう。

なお、システムトレードにおいては、そのシステムが機能している限り、それを1トレードとして考えるべきです。すなわち、システム運用を開始してから停止するまでを、1トレードとするわけです。
システム運用下における個々の売買による損失は、許容損失にはカウントしません。あくまで、システム全体で1トレードとみなすということになります。

システムトレードでは、システムの機能停止は起こるべきでない事象です。希望的には、年間を通してそのシステムを運用し続けられることを目指します。
したがって、システムに適用される許容損失は、ほぼ年間許容損失と等しくなるでしょう。あるいは、システム寿命が数年に渡ると想定される場合は、さらに大きな許容損失となるかもしれません。

さて、資金面から見たストップ基準は以上の通りです。次に、システムから見たストップ基準について考えてみたいと思います。
なお、ここではシステムという言葉を用いていますが、これは個別の売買戦術などを含みます。

ストップ基準というと、通常よく目にするのは、移動平均やトレンドラインを割り込んだり、直近最安値を下回ったら、手仕舞いする、というものです。
あるいは、悪材料が出たら手仕舞いする、という基準もあるでしょう。

これらのストップ基準は、比較的合理的なものですが、そのままでは資金面から見た1トレード当たりの許容損失と整合しません。
分かりやすい例で言うと、直近最安値が買値よりも10%下にあるとした場合、それを下回ったらストップするという基準を設けると、10%を超える損失が生じる可能性があります。

一方で、資金面から見た1トレード当たりの許容損失は5%だとします。しかし、株価が5%下落したら損切ってしまうと、ストップ基準をテクニカル的に決めた意味が消失してしまいます。
さて、いったいどうしたものでしょうか。

答えは簡単です。株式を購入する資金を、全資金の半分にすればいいのです。
投下資金が半分であれば、株価が10%下がっても、資産は5%しか減りません。すなわち、資金面から見た許容損失を5%に抑えつつ、株価の下落は10%まで許容することができます。

一般に、資金面から見た1トレード当たりの許容損失をn%とした場合、実際のトレードにおいて設定される合理的な許容損失がm%であったとすると、そのトレードに投下する資金量を、全資金のn/mにすればいいわけです。

これは、悪材料が出たらストップするという、やや抽象的なストップ基準にも適用できます。例えば、ストップ安を一回食らっても、資金の減少が5%に収まるように、投下資金を調整することが考えられます。

また、そこに至る過程で、既にある程度の評価損が出ていたら、いずれ訪れるかもしれないストップ安に備えて、ポジションを縮小しておく必要があるかもしれません。

なお、このように投下資金を減らした場合、当然のことながら、利益が出た時にも、全資金に対する利益率は株価上昇率よりも小さくなります。
また、資金が余っているからと言って、同時に複数の銘柄を売買する場合は、当初に決めた1トレード当たりの許容損失を、もう一度よくチェックする必要があります。

最初から織り込み済みならばいいのですが、単に資金に余裕があるからといって、予定外のトレードを行なった場合、結局、上記のように決めた資金配分を無意味なものにしてしまいかねません。
ポートフォリオを考えて、リスクを低減してトレードするのならいざ知らず、行き当たりばったりの飛びつき買いは慎むべきでしょう。

以上、ストップ基準の一般論について述べてきました。次節以降では、トレーディングシステムに用いられるストップ基準について、その前提となる指標や考え方等を、順を追って説明していきたいと思います。
なお、それらはあくまで私が実践している手法であり、必ずしも一般的なものではないかもしれません。


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