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システムを妄信するべからず [システムトレード]

過去のデータを用いて将来のリターンをプラスにできるかどうかは別として、少なくとも将来のリスクを予測することは不可能なのかもしれません。
それについては、次の書籍に分かりやすく解説されています。

リスクをヘッジできない本当の理由 (日経プレミアシリーズ)

リスクをヘッジできない本当の理由 (日経プレミアシリーズ)

  • 作者: 土方 薫
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2009/03
  • メディア: 新書


本書は、経済物理学や行動ファイナンスのエッセンスを用いながら、市場崩壊の様子やそれに関連する投資家の行動や心理を説明しています。
特に、LTCMの破綻を例に、理論を妄信することの危うさについて述べています。

市場や銘柄の現在価値が理論価値から大きく乖離した場合、それを修正するような力が働くことは、今や広く信じられています。
そして、それを前提とした投資手法は、機関や個人を問わず一般に用いられています。

この手の手法の特徴は、非常に高い勝率が得られる反面、そのままでは投資効率が低くなりがちであるため、比較的多くの資金を投入する必要があります。
通常は、多くの資金を投入すればそれだけリスクが増大し、ドローダウンが大きくなるものですが、高勝率を背景にリスクはさほど大きくないように見えてしまいます。

LTCMの手法は、まさにこのようなものだったわけです。
そして、破綻する直前までの順調な投資成績が、彼らの理論を絶対的なものと信じさせ、予期せぬ事態に対してその原因を市場に被けたことによって、一気に破綻へと突き進んでしまいました。

その理論(システム)は市場が定常状態である場合には有効だったのですが、異常な状態となった途端、有効性が著しく損なわれたということです。
本来であれば収束に向かう関係が、一気に拡大の方向に動いたために、敢え無く破綻したわけです。

システムトレードを行なうに当たり、システムのエッジの原因を探ることは重要です。しかし、余りにもそれに固執し過ぎてしまうと、LTCMの二の舞いに成りかねません。
システムを信じることは重要ですが、信じ過ぎてもいけません。上手くいかなくなったシステムを見限る、客観的な基準が必要なのです。

その基準の一つが管理限界の設定であったり、レジーム判断を用いた、より上位概念のシステムであったりします。
それらは少なくとも、実運用を行なうシステムよりも優先順位の高い、できれば否定系のシステムであるべきだと考えます。

すなわち、そのシステムが運用中のシステムを停止させるべきと判断したならば、それまでにどんなに大きな収益を上げていたとしても、直ちに運用を停止しなければなりません。
そのシステムの判断が結果的に間違っていたとしても、そこに裁量を入れてはいけません。

仮に判断を間違えたとしても、それは機会損失に過ぎません。それよりも、判断に従わなかったことによる実損失の方が、遥かに怖いのです。
そのための、否定系システムということになるわけです。

なお、もしも上位システムの判断が度々間違えるようであるならば、そのシステム自身を変更する必要があるかもしれません。
しかし、それは慎重を要します。少なくとも、より甘い判断を容認するような方向には、持って行くべきではないと考えます。

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コメント 2

たかとび

おはようございます。
いつも面白い記事ですね。たった一つのシステムというか
ストラテジーだけで資産運用しているじぶんにとっては
のどから手がでるくらいに今欲しいシステムです。。
実はそのシステムがどうやって作るのか?どれがいいのか?
悩んでおりましてとりあえず今のストラテジーに裁量でシグナルの
判断をしてるのですが、やっぱりきっちりしたメカニカルなシステム
のほうが絶対安定しますよね。。


by たかとび (2010-05-14 10:05) 

Kフロー

たかとびさん、こんにちは。
いつもありがとうございます。

一つのシステムだけだと、なかなか難しいものがありますね。少なくとも数個は使えるシステムを用意しておかないと、システム判定(管理)にしてもレジームスイッチにしても、事実上使うことができないわけですから。

取敢えずは、異なるストラテジーのシステムを複数個作成することを、検討されたら良いのではないかと思います。

by Kフロー (2010-05-14 11:24) 

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