トヨタ自動車(7203)順張りシステム(2) [フォワードテスト]
最初に、資産vs株価チャート(株価に対する資産増減比率)について、補足説明を行ないます。これは、時価累積損益率と株価増減率との比を取ったもので、株価を保有し続けた場合の時価資産残高に対して、システムを運用した場合の時価資産残高がどれくらいになるかを示しています。
時価累積損益率と株価増減率は、テスト開始日の資産残高および株価終値を基準として、時間の経過と共にそれらが何倍に変化したかを示したものです。
ここで重要なのは、損益率に関しては累計ではなく累積を用いるという点です。
なぜならば、以前からコラム等で述べていますように、株価推移というのは複利損益に他ならないからです。
これは、手数料を考慮せずに毎日大引けで買い建てると同時に、前日買い建てた分を大引けで売り返済するトレード(クロストレード)を考えれば明らかです。
その場合の新たな株式の購入金額は、同時に売却した株式の売却金額と一致します。売却金額を全て次回の購入金額に充当することは、明らかに複利運用です。
そして、上記のトレードは、株式を最初に買ってからずっと保有し続けることと同義です。
株価の推移が複利運用の結果なのですから、それに対する資産の推移もまた複利運用、すなわち、累積資産でなければなりません。
これは基準値に対する比率で考えても同じですから、株価増減率に対しては時価累積損益率を対比させるのが妥当ということになります。
チャートを見ると明らかなように、株式を買い保有している間は、資産vs株価は一定値で推移します。すなわち、その間の資産の増減率と株価の増減率とが等しいということです。
これは、ごく自然な結論です。
さて、昨日のコラムの最後に、基準となる順張りシステムに2nd Layerシステムを適用した結果を示しました。
2nd Layer1は、基準システムのETDがある値以下になると、ドテンを行なうシステムです。また、2nd Layer2は、基準システムの損益率がある値以下になると、ドテンを行なうシステムです。
これらの効果については、チャートから明らかであり、1997年から1999年に渡ってのドローダウンが緩和されていることが分かります。
特に、2nd Layer2の効果が著しいことが確認できます。
資産vs株価チャートを見ると、この期間に基準の順張りシステムを運用していたとすると、その運用成績はインデックス(株式長期保有)の7~8割程度に留まっていましたが、2nd Layer2においては、インデックスに対して若干のマイナスで済んでいます。
2005年7月以降のフォワードテスト期間においては、2nd Layer1で基準システムに対して若干の性能低下が見られますが、2nd Layer2では逆に性能が向上しています。
フォワードテストという観点から捉えれば、これらのシステムはいずれも機能を維持していると結論付けられます。
順張りシステムの動作は、基本的には株価が上昇すれば買い参入し、下落に転じれば売り手仕舞いとなります。
システムパラメータは、そのタイミングを調整するものであり、銘柄特有の「癖」を反映します。
トヨタ自動車のように、時価総額が大きく古くから売買されているような銘柄については、この「癖」がかなり固定化されているのではないかと思います。
そのため、フォワードテストに対しても、システムが機能し続けるのではないかと考えます。
なお、順張り買いシステムの場合、株価の下落局面においては、ほとんどがドローダウン期間になってしまいますが、これはシステムの性格上止むを得ないことです。
それを避けるためには、ドテンシステムを運用すればいいのですが、そのためには当然のことながら、信用取引を利用する必要があります。
買いシステムのみなら、現物取引だけで運用できるというメリットがあります。例えば、トヨタ自動車と長期に渡って付き合いたいという投資家にとっては、買いシステムだけで運用する方が良いのかも知れません。
ファンダメンタルによる長期投資に、システムトレードという鼻薬をちょっと加えるだけで、単に長期保有するよりも効率的な運用が可能になります。
市場が不利な状況で株式を保有し続けるだけでなく、一旦手放してから安いところで買い直すという選択肢もあるのではないでしょうか。
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