トレーディングシステムの最適パラメータは、時間の経過と共に変化します。その変化は、大抵の場合連続的ではなく、不連続な推移となります。
これは、あたかも原子中の電子が、エネルギーを吸収したり放出したりすることで、異なる軌道に遷移する現象に似ています。

システムのある指標に関するパラメータ分布は、十分広い走査範囲においては、複数のピークを持つことが多々あります。
そしてそれぞれのピークは、多くの場合、一定程度の広さの裾野を有しています。

今、もっとも単純なモデルを考えます。それは、一定範囲の裾野を有したピークが複数存在するパラメータ分布で、それぞれのピークを中心とする裾野の値は、富士山のようにピークから離れるに従って、徐々に低下していくものとします。

時間の経過と共に、最適パラメータに位置するピークの大きさは変化します。そのシステムが安定に機能し続けている間は、ピークの大きさが大幅に縮小することはないでしょう。
しかし、システムの運用損失がかさんでくると、そのピークは次第に小さくなっていきます。

その時、他のピークはどのような挙動をするのでしょうか?

あるピークは、メインのピークと同様に、徐々に小さくなっていくかもしれません。しかし、別のあるピークは、メインのピークとは逆に、徐々に大きくなっていくかもしれません。
そして、時間の経過と共に、そのピークはそれまでのメインのピークを追い越して、新たなメインピークに成長します。

その瞬間、システムの最適パラメータは新たなメインピーク(それまでのセカンドピーク)に遷移し、システムの様相は大きく変わります。
新たなメインピークに遷移したシステムは、それまでの不調から脱却できる可能性が広がるわけです(もちろん脱却できない場合もあります)。

システムが不調に陥った時、パラメータ分布のメインピークとセカンドピークの推移を調べれば、そのシステムの切り替えを逸早く行なうことができます。
メインピークが減少を続け、セカンドピークが増加を続けて、両者の入れ替わりが明白になってくれば、完全に入れ替わるよりも前にパラメータを切り替えられます。

セカンドピークにおけるシステム性能は分かっているため、それが運用に値するものであるならば、それまでのメインピークにおけるシステム性能には敵わなくとも、切り替えることによって、以降の期待値を高めることができるかもしれません。

以上のように、パラメータ分布のセカンドピークは、システムの堅牢性を向上させるための重要な意味を持ちます。
しかし、その検出はけして容易ではありません。次回は、その辺りの問題について、考えたいと思います。