システムトレードを行なっていると、非常に利益が上がりやすかったり、逆に、なかなか利益が増えなかったりする時期が存在することに気が付きます。
システムは確かに機能しているはずなのに、何故か収益が上がらない。そんな経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか?

いろいろな方々のブログ等を訪ねてみると、昨年秋くらいから収益が上がりにくくなったという話を見聞きします。
もちろん、それはシステムそのものに起因する場合もあるでしょうが、市場環境の変化に依るところも大きいのではないかと思います。

先日来お話している理想システムの資産カーブを、日経平均株価について求めてみると、昨年以降、資産カーブの傾きが小さくなっていることが分かります。
株価水準の影響を受けないように、単利基準の資産カーブを求めても、その傾向ははっきりと確認できます。

また、寄付売買システムのみならず、寄引売買システム(デイトレードシステム)の資産カーブを見ても、同様の現象が確認できます。
すなわち、これは日経平均株価(東京市場)に関する、大抵のシステムに共通する現象だと考えられます。

それらの傾斜は元々急峻であり、少しくらいの緩慢はあまり影響がないように思われるかもしれませんが、実システムのシステム効率が高々数%しかないとすると、実際にはかなり大きな影響を受けるであろうことが想像できます。

なぜなら、実システムにおいては、理想システムでは有り得ない損失が必ず存在するわけですが、理想システムにそれを反映させようとすると、その資産カーブの傾斜が大きく押し下げられる場合があるからです。

その影響は、当然、資産カーブの傾斜が緩い箇所に現れやすくなります。すなわち、ある程度の損失を想定した理想システムの資産カーブは、ほとんど上昇しなくなってしまう事態も起こり得るわけです。

理想システムに損失項を設定する場合、例えば売買手数料を設定する方法が考えられます。
それは、売買の度に損失要因として働きますので、強いトレンドが発生している場合は、あまり損失が増えず、方向感がない場合はより多くの損失が発生することになります。

あるいはまた、ボラティリティが大きい変動周期が小さい時期は、損失項の影響もまた大きくなるものと考えられます。そうすると、昨年秋以降に、損失項を考慮した一部の理想システムの資産カーブが、頭打ちに近い状態にある、という事実も説明できます。

さて、良く機能する実システムは、本来、理想システムと強い相関を持つはずです。その結果、システム効率がほぼ一定で推移しているかもしれません。
そうであれば、理想システムの資産カーブが頭打ちの状態にある時期は、実システムの資産カーブもまた、頭打ちの状態になりやすくなるでしょう。

すなわち、それまで良く機能していた実システムで、突然収益が上がらなくなる現象は、システムそのものの原因以外に、理想システムの変化、すなわち市場環境の変化の影響も大いに考えられるのではないかと考えます。

では、それを打開するためにはどうしたらいいのでしょう?

理想的には、損失項の小さい理想システムと強い相関を持った実システムを開発し、運用することでしょうが、それができれば最初から苦労はしません。
すると、カーブフィッティングの可能性を内包しながらも、理想システムと整合の取れないシステムを敢えて開発し、運用する、ということになるのかもしれません。

しかし、それは危険な賭けでもあります。一時的には良く機能しているように見えても、一気に機能停止に陥る可能性が大きいように思えます。
そのこと自体は如何様にも対処のしようがあるかと思いますが、怖いのはそのシステムを妄信してしまうことです。

私個人としては、システム管理基準を厳しくし、機能低下したシステムには直ちに見直しを掛ける、という程度のことしかできません。
機能するシステムを、市場環境の変化に合わせて的確に切り替えていければいいのでしょうが、理想システムで上限が決められてしまうのであるとすれば、それは難しいようにも感じます。