永遠に機能し続けるトレーディングシステムは、恐らく存在しません。遅かれ早かれ、システムはいずれ機能を停止します。
それは、あたかもエントロピーが最大となって熱的死に陥った宇宙のようなものです。「孤立系のエントロピーは増大する」という、熱力学第二法則からの帰結でもあります。

もちろん、株式市場は孤立系ではありませんし、そもそも、物理法則とは何の因果関係も(恐らく)ありません。
それでも、システムが機能停止する状況は、宇宙の熱的死を想起させます。

次図は、私が実際に2008年12月末から2009年3月末にかけて運用した、三菱UFJRSI順張りシステムの資産カーブとドローダウンです。
運用開始後しばらくして20%ほどのドローダウンに見舞われた後、一時は回復するかに見えましたが、その後再び急落してシステム停止(システム死)に陥っています。


この事例に限らず、システム死のパターンはほぼ共通しています。それは、資産カーブが管理限界線を割り込んだ後、長期に渡って資産残高がほとんど変化しない(ドローダウンが最大化した状態で安定する)、ということです。
これはまさに、システムの「熱的死」(機能死)です。

システムがひとたびこの状態に陥ると、回復することほとんど絶望的となります。そのため、できるだけ早い段階で、このシステムに見切りを付ける必要があります。
そのための一つの方法が、最小2乗誤差を用いた管理限界の適用、ということになります。

もちろん、資産カーブが一旦管理限界を割り込んでも、その後回復することもあります。そのため、管理限界の設定は元より、回復時の対処方法についても、予め決めておく必要があります。
それでもなお、システムに回復の兆しが見られない時、そのシステムは完全に機能死に陥ったと判断します。

では、ひとたび機能死に陥ったシステムのロジックは、その対象銘柄においては2度と用いることができないのでしょうか。
実は、必ずしもそうではないことが分かっています。

次図は、機能死に陥った冒頭のシステムを、十分な時間経過後に再最適化したシステムです。それまでとは異なったパラメータが最適となり、それに伴って資産カーブの推移も異なっています。
従来パラメータは(41,49%)でしたが、それが(3,34%)に代わっています。また、これは2009年末で最適化していますが、直近まで同一パラメータで機能しています。


再最適化したシステムの性能は、機能死したシステムの性能よりも、最適化時点において劣ります。これは当たり前の話であり、もしも再最適化したシステムの性能の方が良かったとしたら、最初からこのシステムが選ばれることになるはずです。

すなわち、最初の最適化の段階では下位ランクに位置していたパラメータが、時間の経過と共に最上位ランクにシフトしたわけです。
もしも最初からこのパラメータを選択する方法があったとしたならば、資産の伸びは小さくなるものの、より安定した運用が可能だったと思われます。

さて、この話は三菱UFJRSI順張りシステムに限ったものではありません。実は、現在運用中の日産順張り正逆合成システムを構成する逆システムでも、過去に一度機能死に陥っていました。
そこから現在のパラメータにシフトして復活したのは、2007年中のことです。それ以降現在まで、システムは同一パラメータで機能を継続しています。

システムの機能死を考えることで、逆にシステムが機能するとはどういうことかを、イメージすることができます。
結局のところ、(解析的)システムが機能するとは、そのシステム(ロジック)がどれだけの異なる有効なパラメータグループを有しているか、に帰結するのではないかと思えます。


PS.今日、ゼンショーから配当と優待が届きました。100株株主でも代替品を申し込めば3,000円分の優待(牛丼の具セット)を貰えると思っていたのですが、どうやら代替品には代えられないようです。何か釈然としませんが、私の勘違いだったみたいです。
そうなると、保有戦略も変わってきますが、はてさてどうしたものでしょう。