以前お話したことがあるかもしれませんが、私は学生時代、卒業ゼミとして「相対性理論」を専攻していました。
とは言いましても、別に何か新しい理論を発見するなどという大それたものではなく、既存のテキストの読み合わせを行なうといった、他愛のないものでした。

しかし、実はそれがなかなか大変な作業で、例えばテキストには結果としての数式が載っているのですが、その数式を導く過程は示されておらず、それらを参考文献や論文などを参照しながら、導いていかなければなりません。

また、数式には誤植や間違いも多く、それらを一つずつ吟味しながら検証を進めて行く必要がありました。
特に論文を書くということはなかったのですが、それらの誤植や間違いをまとめて出版社に報告する、ということが、卒論代わりだったように思います。

大学を卒業してからは、テレビや書籍などを通じて相対性理論や宇宙論に親しむことはありましたが、学生時代のように数式を解いて理解を深めるなどということからは遠ざかっています。
したがって、最近のこれらの動向につきましては、ほとんど一般的な理解レベルしかありません。

昨年は、南部先生や益川・小林両先生のノーベル物理学賞受賞に日本中が沸き立ちましたが、その業績なども宇宙論と密接に関わっているわけです。
更に遡れば、ニュートリノの観測による小柴先生のノーベル物理学賞受賞など、近年は宇宙論関連の研究が注目されているように思います。

先日、ふと目にした新聞記事で、ハワイにある日本のすばる望遠鏡が10周年を迎え、その成果の一つとして宇宙最遠の銀河を発見したことが語られていました。
現在、宇宙の年齢の最有力学説は137億年ということのようですが、すばる望遠鏡で宇宙誕生後8億年の銀河を観測したというものでした。

また、別の新聞記事では、すばる望遠鏡が宇宙誕生後9億年の巨大ブラックホールを観測したものの、これほどの短期間でそこまで大きなブラックホールが成長するメカニズムが分かっていない、などといった解説を目にしました。

宇宙誕生の瞬間というのは、紛れもなく特異点の一つだと考えられるわけですが、そうであるが故に、その近傍における状態はよく分かっていないわけです。
現在、最も有力とされている説は、真空状態に微小な揺らぎが生じてそれが分離し、急激に膨張して現在の宇宙に成長した、というものですが、本当のところはよく分かりません。

これはいわゆるビッグバン理論として、今や多くの人の知るところとなっているわけですが、もちろん、これが正しいと100%証明されたわけではありません。
宇宙初期の状態は、素粒子物理学などの研究成果によって解明が進んではいますが、上述しましたように、例えば初期宇宙で巨大ブラックホールが成長する過程などは、説明出来ていないわけです。

そのため、ビッグバンなど起きていないという定常宇宙論を唱える人たちも、少数派ながら未だに存在しているようです。
かのアインシュタイン博士も、一般相対性理論発表当初は定常宇宙論者でしたが、後にビッグバン宇宙論者に転向しています。

話は変わりますが、2006年10月11日のコラムで、磁気ヘッドの共振周波数について述べています。この共振周波数はいわば特異点のようなもので、この周波数では磁気性能を表すインダクタンスが"0"になります。

磁気ヘッドを高周波駆動する場合、インダクタンスと周波数に比例して抵抗値が上昇し、その結果、電流を流すことが困難になるわけですが、共振周波数においてはインダクタンスが"0"になるため、小さな電圧で大きな電流を流すことが可能となります。
実際、当時は共振周波数を用いた磁気ヘッドの駆動回路や記録方式などが提案されたりしました。

でも、よく考えてみると、磁気性能を表すインダクタンスが"0"になったら、いくら電流を流しても磁界はほとんど発生しないように思えます。
すなわち、共振周波数においては、確かに電流は流しやすくなるものの、磁界を発生させることはできないわけです。

何か変ですね?そう、実は共振周波数においても磁界は発生しますし、さらにはインダクタンスも"0"ではなく、有限の値が存在します。
これを実効インダクタンスと呼びますが、共振周波数において測定上のインダクタンスが"0"になっても、実効インダクタンスは存在しているわけです。

その値は周波数の上昇につれて徐々に減少はしますが、それはコアを形成する磁性体の物性に応じて変化するのであり、けして"0"になったり、ましてやマイナスになったりするものではありません(電気的に測定されるインダクタンスは、共振周波数を超えるとマイナスになります)。

言い換えれば、インダクタンスは普通に(電気的に)測定すると、共振周波数という特異点が存在するのですが、現実にはそのような特異点など存在せず、磁性体の物性に依存して変化しているわけです。

さて、ここから先は完全に私の妄想なのですが、宇宙誕生の瞬間を共振周波数、宇宙に存在する物質の総量(質量)をインダクタンスに置き換えて見たらどうでしょう?
そこにはビッグバンなど存在しない、定常宇宙が広がっている姿が見えてくるわけです。

上では触れませんでしたが、実効インダクタンスを求めるためには、定常的なキャパシタンスの存在を仮定する必要があります。
キャパシタンスに相当するのは、妄想宇宙論においてはいったい何なのでしょう?

何度も言いますが、これは私の妄想です。トンデモ科学にすらなっていません。でも、ちょっと面白いと思いませんか?