楽天証券サイトにあるレポート情報ページで、山崎元氏が「ホンネの投資教室」というレポートを連載していますが、その最新号「第142回 高齢者のアセットアロケーション」の中で、ちょっと考えさせられる記述がありました。

それは、以下のような指摘です。

『将来の売買は、その時までに得られた情報を加味してその時に判断すべきであって、あらかじめ売買のルールを決めておくことに意味がないということだ。「ルール化」が好きな人の多くは、この点に気づいていないか、将来の自分の判断を信用していない。しかし、将来の自分が信用できないなら、なぜ現在の自分の判断を信じているのか。』

この論に従えば、長期に渡って機能するトレーディングシステムを追及する行為は意味がない、ということになってしまいます。
でも、確かに氏の言われることはもっともであり、それに対する明確な反論を見出すのは、一見難しいようにも思われます。

恐らく問題となるのは、「売買のルール」という部分だと考えます、何を持って「あらかじめ決めておく」のかが明確ではないように思えます。
例えば、将来得られるであろう情報に基づいて売買判断を行なうことは、システムトレードでは当たり前の話です。

この「将来得られるであろう情報」というものが、あらかじめ決められたものではないことは明らかです。
したがって、それに基づいた「売買のルール」もまた、その時になってみないと分からない、と言うこともできます。

でも、何かしっくりしません。何故ならば、私たちがシステムを組む時には、「将来得られるであろう情報」をあらかじめ何パターンかに分類しておき、それが実現した時に、どのパターンかを確認して売買ルールに反映させるだろうからです。

そういった意味では、「将来得られるであろう情報」もまた、あらかじめ決められた「売買のルール」によって、粛々と処理されていく、ということになりそうです。
そうなると、これはもっと違った観点から、考えないといけない問題なのかもしれません。

適応進化型のシステムならば良いのではないか、と考えることができるかもしれませんが、それにしてもシステムのパラメータやファクターの比率などが日々更新されるだけであり(間違っていたらすみません)、氏の指摘に反論するにはやや力不足のような気がします。

また、例えば半年毎に新しいシステムを投入していく、などといった方法も考えられますが、新しく投入されるシステムが、それ以前のシステムよりも高性能である、などという保証はどこにもありません。
また、それを確認するには、一般に長い時間を要します。

結局のところ、氏の指摘に反論するためには、次の前提が必要になるのかもしれません。

 『現在の自分が最も信用できる存在である。』

将来の自分が信用できるかどうかなんて、現在の自分には分かりません。だから、現在で最善を尽くそうと努力するのです。
でも、将来の自分から見れば、それは現在の自分なんですよね。