3月16日のコラムで、高レバレッジの複利運用が続くと、リスク率が増大していくことを述べました。では、リスク率が増大すると、どのような事態に陥るのでしょうか?また、そのことを定量的に判定する手段はあるのでしょうか?

その一つの回答が、破産確率を評価することです。

破産確率は、次のようにして求められます。なお、導出の方法や考え方などにつきましては、それに関する解説書やサイト等をご参照ください。
ここでは、結果のみを示します。

 破産確率=Y^(総資産/運用資金)

ここで、Yは次式の解となります。

 Y=勝率×Y^(損益レシオ+1)-勝率+1

ちなみに、総資産/運用資金はリスク率の逆数に等しいですから、破産確率は次のようにも表すことができます。

 破産確率=Y^(1/リスク率)

なお、ここで一つ注意すべき点があります。それは、破産確率は元々、総資金の内いくらを掛けるかというゲームが前提となっているということです。
すなわち、そのゲームに勝てば掛金の何倍かの配当を受け取り、負ければ掛金を全額没収されます。

要するに、配当/掛金が損益レシオに相当し、そのようなルールの元でどれくらいの勝率、どれくらいの掛率(掛金/総資金)でゲームに参加すれば、破産する確率がどうなるかを論じているわけです。

したがって、株式トレードの場合とはゲームのルールが異なるわけで、破産確率をそのまま当てはめるわけにはいかないことに、注意する必要があります。
実際には、掛金に相当する運用資金には、平均損失率もしくは最大損失率を乗じるべきかもしれません。あるいは、最大ドローダウンを乗じるべきかもしれません。

いずれにしましても、その場合はリスク率が小さくなる可能性が高いため、上記した破産確率の計算式は、最悪の事態(運用資金がゼロになる)を想定しているとも考えることができます。
そこで、ここでは破産確率をその数式のまま用いることにします。

さて、これまで例示してきたシステムの勝率と損益レシオは、それぞれ46.69%、2.03になります。もちろん、レバレッジをいくつにしても、これらの数字に変動はありません。
この時、Yの値は0.676になり、破産確率とリスク率の関係が一意的に求まります。あとは、リスク率に対して破産確率がどうなるかを計算するだけです。

例えば、リスク率が3%の時は、破産確率は0.00%になります。ほとんど破産する心配はない、ということです。
しかし、リスク率が60%に増大すると、破産確率は52.07%に達します。すなわち、半分以上の確率で破産する危険性があるということです。

さすがに、このような状況においては、リバランスを行なわざるを得ないでしょう。では、どれくらいのリスク率まで許容できるのでしょうか?
適正な破産確率がどのていどか判断することは困難ですが、一応10%を限度としてその時のリスク率を求めますと、17%になります。

すなわち、初期リスク率3%で運用を開始して、その後順調に資産が増大していったとしても、リスク率が17%に達したらリバランスを行なった方が良い、ということです。
破産確率の定義や判定基準に課題は残りますが、リスク率がどれくらいまで許容できるかという問いに対する、一つの回答にはなっているものと考えます。

最後に、破産確率を求めるためのエクセルシートを、研究所サイトの無償ダウンロードコーナーにて公開しています。
興味のある方は、ダウンロードしてご利用ください。