ドルビーノイズリダクション(NR)システムをご存知でしょうか?
ドルビーと言いますと、最近はドルビーサラウンドのことを指す場合が多いようですが、以前は主にカセットテープのヒスノイズ(高音域のノイズ)を低減するための信号処理技術を指していました。

安価なラジカセやカーステレオには搭載されていない場合もありましたが、大抵のカセットデッキにはドルビーBが、高級デッキにはドルビーCが搭載されていました。
これらは、信号を伸張して記録し、再生時にそれを元に戻す(圧縮する)ことにより、磁気テープ特有の「サー」というノイズのレベルを下げるというものでした。

しかし、最近はデジタルデバイスの普及により、アナログのドルビー方式は完全に廃れてしまっています。
しかし、記録前に信号を変換処理し、再生時にそれを元に戻すという基本概念は、今でも重要な要素技術の一つとなっています。

さて、この技術を株式のテクニカル分析に利用できないかと考える人がいても、不思議ではありません。
通常のテクニカル分析は、信号を何らかの形に変換するところまでは一緒ですが、それを元に戻すという処理がないわけです。

それをあえて元に戻すことに、何の意味があるのでしょう?

もう一度、ドルビーの基本概念に戻って考えますと、これは主に高音域のノイズを低減するための技術でした。
テクニカル分析における高音域のノイズとは何でしょう?そう、それは日々の細かな株価変動を指すことになります。

トレードで安定した利益を得る方法の一つに、トレンドを利用するというものがあります。これは、トレンドが継続している限りは買い(売り)保有を続け、トレンドが崩れたら手仕舞いするという方法です。

トレンドの判定方法は別として、この方法の大きな問題点の一つに、ダマシによる判断ミスがあります。
日々の株価変動によって、株価が一時的にトレンドラインを割り込んでしまい、間違った判断をしてしまうというものです。

それを起き難くするために、判断基準を緩めてしまうと、今度はトレンドの終了時期の判定が遅れてしまいます。
そこで、日々の株価変動をノイズとしてうまく除去できるなら、それは有用な方法になるものと思われます。

実は、日々の株価変動を除去するために、一般的には移動平均などの方法を用いています。しかし、移動平均には処理の遅延という問題があるため、トレンドの終了時期の判定もまた遅れてしまいます。

処理を遅らせることなく、日々の株価変動を取り除く方法はないのでしょうか?
その可能性を示唆してくれるのが、ドルビーNRシステムということになります。

実は、それに近い分析手法は既に周知のものとなっています。それは、FFT解析を利用するというものです(私の思い違いでなければロケット分析法と呼ばれていたような気がします)。
これは株価の変動周期を分析し、それによって何らかの判断を行う手法ですが、残念ながら私は詳しくは知りません。

ただ、もしもドルビーの手法を適用するのであるならば、FFT解析によって分解した各周波数成分の内の高周波成分を除去し、それらを再合成することで、日々の変動分が低減された遅延のない株価推移が得られる可能性があります。

それに基づいてトレンド分析等の処理を行うことで、ダマシが少なくかつ遅延のない判断が可能になるかも知れません。
なお、これはアイデアに過ぎません。したがって、考察の内容に重大な欠陥があるかもしれませんが、その際はご容赦ください。