前回、税について少し触れたが、今週は税についてもう少し掘り下げて考えてみたい。

我々専業トレーダーがもっとも困るのが、身分保障である。即ち、どんなに収益を上げていたとしても、法律上は「無職」である。
法的な拘束力がない、アンケート程度のものであれば、職業欄には「自営業」とか、「自由業」とか、もっと突っ込んで「株式トレーダー」とか書いても何ら問題はないのだが、役所や金融機関への届出などでは、職業は「無職」と書かなければならない。さもなければ、虚偽申請として後々不利な状況になる可能性がある。

しかし、まあ役所であれば、無職の人間を不当に差別することはないとは思うのだが、金融機関の場合は、ローンが組めないとか、差別とは言わないまでも不利な扱いを受ける可能性がある。
特に深刻なのが、自分の子供に係わる問題だろう。以前、あるネット掲示板で、専業トレーダーの方が自分の子供を私立校に入学させるためだけの理由で会社を興した、という話を聞いたことがある。

経済的には、個人としての専業トレーダーであっても、法人としてのトレーダーであっても、大差はないだろう。むしろ、現在の証券優遇税制下においては、個人としてトレードを行なった方が有利な場合が多い。
しかし、社会的なステータスは大きく異なる。個人の場合は、いくら稼ごうが「無職」である。一方、法人になってしまえば、たとえ利益が出なくても「社長」である。
まあ、私には子供がいないこともあり、今時点では別に「無職」でも構わないのだが、でも、全く同じ経済活動をしていながら、「無職」と「社長」に分かれざるを得ない今の制度は、時代の流れに即していないと言わざるを得ない。

その根本原因は、現行の課税制度にあると考える。

株式の売買譲渡益は分離課税として、総合課税の範疇から外れている。したがって、いくら株を売買して利益を上げても、それは生計を立てるために行なった労働の対価としての収益とは認められないのである。
しかし、我々が行なっている行為はまさしく生計を立てるために行なっているものであり、個人事業主と何ら変わるものではない。

極論を言えば、パチプロの方がまだ社会的には身分を保証されている。何故なら、もしまじめに勝ち金を確定申告しているパチプロがいたとしたら、その所得は雑所得として総合課税され、従って基礎控除や社会保険料控除を始めとする様々な税制控除が受けられるのだ。[この件については私の勘違いでした。分離課税分の所得でも、基礎控除を始めとする税制控除は受けられる、とのことです。]

パチプロは、税制上は個人事業主と変わりない。

もっとも、パチンコの場合は収益全体に課税され、その収益を得るために費やした投入資金は経費として認められない。そのため、まともに申告している人などほとんどいないであろう。
これは、制度は存在するものの実効力はほとんどないということであり、この件については、後日考察したい。

さて、では私はどうして欲しいのか?

答えは明白である。株式譲渡益を総合課税の対象にして欲しいということである。また、その際、一般の個人事業主同様に、必要経費を認めて欲しい。
ようするに、今まで会社組織にしなければ認めてもらえなかったことを、個人事業主レベルの手間で済むようにして欲しい、ということである。

もちろん、そうすることによって、不利益を被る場合もあるだろう。利益が大きくなるほど、現行制度の方が税金が安くて済む。しかし、それ以上に「個人事業主」という社会的身分保障が得られるメリットの方が大きいと考える。

もちろん、専業トレーダーなどまだ少数派であり、多くの人は主たる生計を持ちながら投資を行なっているのだろう。また、「無職」でもいいから、少しでも税金を安く上げたい、という人もいるだろう。そのような人たちにとっては、現行制度の方がメリットが大きいのかもしれない。
そういう場合を考慮して、限度額を設けて現行制度も並存させることを提案したい。例えば、年間1,000万円までの利益の場合は、分離課税と総合課税のどちらも選択できるが、1,000万円を超えたら総合課税として申告する、とすればよい。

国家としても、より税収が増える可能性があり、メリットは大きいのではないだろうか?

もっとも、すでに第一線を退かれ、誰に気を使うこともなく「無職」を謳歌しておられる方々にとっては、「余計なことを言うな!」との気持ちを持たれるかもしれない。ならば、昔のマル優のような制度を設け、現行制度を継続できるようにすることを提案することで、ご容赦願えないだろうか。