SSブログ

システムにおける性能指標の定義と位置付け(4):投資効率と平均損益率 [システムトレード]

投資金額に対してどの程度の利益を上げることが出来るかを表した指標が、投資効率です。投資効率は、次式で定義されます。
  投資効率=(総利益+総損失)/(総利益-総損失) (総損失≦0)
      =(総利益-|総損失|)/(総利益+|総損失|)

上式の分母は、一連のトレードによってどれだけのキャッシュフローが生じたかを示しています。そして分子は、その内どれだけが利益になっているかを示しています。
すなわち、投資効率はその名の通り、トレードの効率性を示す指標であり、この値が大きいほど効率よく稼げることを示しています。

投資効率は、PFを用いて、次のように表すことが出来ます。
  投資効率=(PF-1)/(PF+1) (PF≧0)
  PF  =(1+投資効率)/(1-投資効率) (-1≦投資効率≦1)

これから、PFが0だと投資効率は-100%、PFが1だと投資効率は0%、そしてPFが無限大でようやく投資効率は100%になることが分かります。
また、投資効率が50%になるためにはPF=3、80%になるためにはPF=9が必要になります。

一連のトレードにおける損益率を平均した指標が、平均損益率です。これは全てのトレードにおける損益率の合計、すなわち累計損益率を、トレード数で割った値となります。
平均損益率は、次式で表すことが出来ます。
  平均損益率=累計損益率/トレード数
       =(累計利益率+累計損失率)/トレード数
       =平均利益率×勝率+平均損失率×(1-勝率)

平均損益率は、システムトレードを行う上で非常に重要な指標です。それは、トレードに掛かるコストとの関係が、最も顕著に示されるからです。
例えば、売買1回当たり0.1%の売買手数料が掛かる証券会社でトレードを行う場合、平均損益率が0.2%以下のシステムでは全く利益が得られません。

これは、エントリー時に0.1%、エグジット時に0.1%の計0.2%の損失が、トレード毎に必ず掛かってくることを意味します。すなわち、平均損益率が0.2%のシステムでは、期待収益分が全て手数料に取られてしまい、手元には何も残らないわけです。

そのため、いくら他の性能が優れていたとしても、平均損益率が売買手数料率よりも小さいシステムは、使い物になりません。
ただし、売買手数料率は証券会社によって異なりますし、ロット数によっても異なります。特に最近は、各証券会社で手数料の値下げが相次いでおり、平均損益率のハードルは以前と比べて随分低くなっています。

例えばauカブコム証券などでは、信用取引における売買手数料を無料としています。その代わりに、買方金利や貸株料がやや高めに設定されているようです。
ただし、貸株料に関しては通常、買方金利よりも低く設定されているため、システムに与える影響はより軽微となります。

これらの金利は年利ですので、通常はシステムの期待収益率(平均リターンや年率リターン)から減じられます。例えば買方金利が4%の場合、システムの期待収益率が24%以上であれば、金利を差し引いても20%以上の収益が期待できることになります。
これならば、十分システム運用可能な水準と言えるでしょう。ドテン運用も然ることながら、そのような事情もあるため、システム運用は信用取引で行うことが鉄則です。

ただし、現物取引であっても、売買手数料が無料であったり、非常に安く設定されている証券会社もあるかと思います。現物取引でシステムトレードを行う場合は、そのような証券会社を利用するか、あるいは手数料負けしないような十分大きな平均損益率のシステムを運用するか、もしくは相対的に手数料率が減少するような十分大きなロットで運用するか、いずれかの対策が必要になります。

以上のように、平均損益率は非常に重要な指標ですが、システムによってはその精度に疑問が生じる場合があります。例えば、トレンドフォロー型のシステムの場合、各トレードにおける損益率が大きくバラつきやすくなります。
そうすると、一部の極端なトレードの結果が、全体に大きな影響を与えてしまう可能性を否定できません。

この、平均損益率の信頼性とでも言えるような問題を判断する材料として、最大利益率や最大損失率、損益率標準偏差といった指標を考えることが出来ます。
これらはいずれも、損益率のバラつき度合いを示す指標です。

最大利益率は、全ての勝ちトレードにおける最大の利益率を表します。これは完全に独立した指標であり、統計的な意味合いもありません。
あくまで、過去において最大でどれだけ勝ったことがあるか、を示す指標に過ぎません。そのため、基本的にはシステム運用を行う上で、重要な要素とはなりません。

最大損失率は、全ての負けトレードにおける最大の損失率を表します。これも完全に独立した指標であり、統計的な意味合いはありません。
あくまで、過去において最大でどれだけ負けたことがあるか、を示す指標に過ぎません。そのため、基本的にはシステム運用を行う上で、本来は重要な要素とはなりません。

しかし、ドローダウンを考えた場合、最大損失率の影響を無視することは出来なくなります。ドローダウンについては、後日、詳細に解説しますが、最大損失率を含む連続した損失が発生すると、システム運用を脅かすほどの大きなドローダウンが生じてしまいます。

そのため、最大損失率は出来るだけ小さく抑える必要があるわけですが、システムによって完全にコントロールできるわけでもないため、対応が難しくなります。
ちなみに、ロスカットを設定すれば、最大損失率を一定範囲内に抑え込むことも可能ですが、多くの場合、ロスカットの設定はシステム性能を著しく低下させてしまいます。

損益率標準偏差は、全てのトレードにおける損益率の標準偏差です。もしも損益率の分布が統計的な振る舞いをするのであれば、そしてそれが正規分布に従うのであれば、平均損益率±損益率標準偏差に含まれる損益率の割合は68%、平均損益率±2×損益率標準偏差に含まれる損益率の割合は95%、そしてほぼ全ての損益率が平均損益率±3×損益率標準偏差の範囲に収まることになります。

しかし、多くの場合、最大利益率や最大損失率は、平均損益率±3×損益率標準偏差の範囲を超えてしまいます。もちろん、それを厳密に論じるためには、実際に損益率の度数分布を求めて、正規分布との整合性を判定する必要があります。

次図は、3407旭化成の回帰順張り逆システムにおける、損益率分布(ヒストグラム)を示したものです。実際の度数を棒グラフで、統計的に求めた正規分布(スケール調整済)を折れ線グラフで示しています。

3407旭化成_損益率_度数分布_20210309a.png

これは、損益率の階級を0%を境に3%刻みで設定したものです。そのため、近似値(正規分布)のピークがずれてしまっています。また、損益率がマイナスの方向に、分布が広がっているように見えます。
そこで、損益率の中心を平均損益率に設定し、階級をそこから3%刻みとした場合の損益率分布を次図に示します。

3407旭化成_損益率_度数分布_20210309b.png

すると、損益率が逆にプラス方向に偏っているように見えます。結局、階級の幅や中心をどのように取るかによって、度数分布の見え方が違ってくることになります。
ただ、いずれの場合でも、度数分布は釣鐘型ではありますが、階級の中央における度数が正規分布よりも突出して大きい、すなわち尖度が大きいことが分かります。

もちろんこれは、システム性能を否定的に捉えるものではありません。むしろ、分布の尖度が大きい分、安定した運用が見込めることになります。
しかし、このチャートでは分かりませんが、分布の裾野には正規分布では説明できないロングテールが広がっています。それは最大利益率や最大損失率に該当するわけですが、この存在が時にシステムの安定性を大きく損ねる要因になっているのです。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。