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トレーディングシステムにおける最適化対象期間の違いによる性能差 [システムトレード]

前回の記事で、伊藤忠商事の累乗平均逆システムを例に、最適化対象指標の違いが最適パラメータ及びシステム性能に与える影響について説明しました。
その際、期待効率や損益累計を最適化対象とした場合に、直近15年程度とそれ以前とで、資産カーブの振る舞いが大きく変化していることが分かりました。

そこで今回は、8001伊藤忠商事の累乗平均逆システムを、2005年11月1日~2020年11月27日の約15年間で再度時系列分析を行い、その条件下での最適パラメータ及びシステム性能を求めた結果を公開いたします。

1993年11月1日からの27年間における最適パラメータは、最適化対象指標が期待効率の場合で(134,12)、損益累計の場合で(130,12)でした。
一方、2005年11月1日からの15年間では、期待効率の場合で(14,106)、損益累計の場合で(117,12)であり、特に期待効率では大きく異なる結果となりました。

最適パラメータの直近継続期間(立会日基準)が最も長かったのは、KFインデックスAの1,213日、続いて単利KFインデックスAの1,116日であり、最適パラメータはいずれも(14,116)でした。
以下に、その時の性能指標と資産カーブを記します。これをシステムAとします。
システムトレード_性能指標_20201204a.png
システムトレード_資産カーブ_20201204b.png

資産カーブとしては、直線性が良好とはけして言えませんが、平均リターンは22.67%であり、前回の記事で示した分析期間27年間の場合の16.80%の1.35倍となっています。
また、累積リターンはCSRの向上もあって、1.70倍に達しています。

また、資産カーブの直線性が最も良好な指標は単利KFインデックスと単利EERで、最適パラメータは共に(130,12)であり、分析期間27年における損益累計が最大となる条件と一致します。
しかし、これらの直近継続期間は、それぞれ226日と593日であり、けして十分とは言えません。

以下に、その時の性能指標と資産カーブを示します。これをシステムBとします。
システムトレード_性能指標_20201204c.png
システムトレード_資産カーブ_20201204d.png

資産カーブの直線性は、システムAと比べて一見良好に見えます。ただし、資産が標準誤差の±2倍幅を超えて変化する場面が随所に見られます。
これが影響しているのかは不明ですが、平均リターンは20.77%とやや落ちます。ただし、CSRは0.85で変わらず、複利効果への悪影響は見られません。

両者の違いをより明確に示すために、次図に示す累積損益率で比較してみました。上段がシステムA、下段がシステムBです。
システムトレード_累積損益率_20201204e.png
システムトレード_累積損益率_20201204f.png

両者を見比べると、カーブの上昇の仕方はシステムBの方が自然ですが、システムAの方が累積損益率が全体的に大きいことが分かります。
また、システムBの方が、直近における落ち込みが急峻であることが見て取れます。

以上のように、同一銘柄、同一ロジックのシステムであっても、最適化対象指標や分析期間によって、得られるシステムに大きな違いが生じる場合があります。
それらのシステムを比較して、明確な優劣が付けられればいいのですが、そうでない場合は選択に悩むことになります。

本来であれば、その選択も自動的、客観的に行われるべきなのですが、なかなか一筋縄ではいかないというのが現状です。
上例のシステムAとBとの比較一つとっても、性能や直近継続期間はシステムA、資産カーブの直線性はシステムBが優れており、結局、どのような項目を重視するかによって選択すべきシステムもまた異なります。

例えば、セカンドパラメータによるシステムの性能で比較するという手段もありますが、今回の事例の場合、実はそれでも決着が付きません。
結局は運用者の好みということになるのかもしれませんが、どちらかに決めて運用を続けた場合、最終的には運用結果の優劣という格好で決着することになります。

それを避けるためには、2020年10月6日の記事「自己合成システム」でご紹介したような、自己合成システムとして運用する、という方法もあります。
2つのシステムの対等な合成であるならば、特別な資金管理は必要ありません。

話を戻しますが、システムAとBとを比較した場合、セカンドピークにおけるシステムに明確な優劣がないのであれば、私ならシステムBを選択します。
何故なら、やはりロバスト性という原点に立ち戻って考えれば、それは私がシステムトレードを始めた当初からずっと唱え続けてきた原理原則に則っているからです。

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