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システムトレードの適用限界とテスト運用 [システムトレード]

システムトレードには多くのメリットがある反面、デメリットもあります。システムトレードのメリットにつきましては、今までのコラムの中で何度も繰り返し述べてきました。
一方、デメリットに関しては、直接的には言及してこなかったかもしれません。

そこで今回は、システムトレードのデメリット、特にその適用限界について、考えてみたいと思います。
なお、ここではKFシステムクリエイターのような、自己相関型のシステムについてのみ考えます。マルチファクターモデル等のシステムに関しましては、また違った考え方になる場合があるかもしれません。

さて、このところ日経平均株価の上昇が著しく、29年振りに25,000円台を回復するなど、新型コロナ禍による株価下落分を完全に取り戻しました。
しかし、日本経済全体では未だ再建の道は険しく、流行の第三波到来で先行きが不安視されています。

そもそも、経済はまだ回復途上にあるのに、何故株価はこれほどまでに上昇しているのでしょう?
これについては、識者らにより様々な見解が出されています。

一つは、新型コロナウイルス用ワクチン実用化の目処が立ったこと。米ファイザー社が開発中のワクチンは、臨床第三相(P3)試験における中間解析結果で、90%を超える予防効果が確認されたと報じられました。
まだまだ課題はあると思いますが、希望の光が見えてきたことは確かであり、株式市場はそれに強く反応したと見られます。

さらに、各国の大規模財政出動により国債等の債券価格が上昇したため、債権の満期保有を前提とした生保や年金等の資金が、高利回りを求めて株式市場に流入しているという見方もあります。
ただ、これは昨日今日に始まったことではないようにも思われますが、米バイデン新政権誕生及び、FRBによるゼロ金利政策や量的緩和策の維持決定が、債券市場からの資金流出に拍車をかけている可能性はあります。

理由はともあれ、このような株価上昇時には、システムトレードによる運用は長期保有投資と比べて不利になります。もちろん、けして利益が出せないという訳ではありませんが、少なくともインデックスに勝つことは極めて困難です。

その理由は明白です。それは、株式の長期保有は複利運用と同義であることに所以しています。
レバレッジを考えなければ、株価上昇時の複利運用は最強です。単利運用や単株運用では到底追い付けないような資産上昇をもたらします。

システムトレードの場合、株価上昇時に買いHOLDを継続して初めてインデックスに肩を並べることが出来ますが、少しでも売りトレードが介在すると、そこで成績を落としてしまう可能性が少なくありません。
何故なら、買いHOLDを継続しやすいシステムというのは、通常、トレンドに乗りやすいシステムであり、それは裏を返せば、下降トレンド時に売りHOLDを継続しやすいシステムであるとも言えるからです。

株価上昇時においては、通常、長期の上昇過程に対して短期の下落局面が重なります。株価は押し目を付けながら、上昇を継続していきます。
システムがそれらの短期下落局面に反応しないか、反応しても収益を上げられればいいのですが、大抵の場合は過度に反応して損失となってしまいます。

一体なぜでしょう?
その答えは、システムの最適化過程にあります。

システムの最適化においては、出来るだけ長期に渡る分析期間が有効とされています。それは、出来るだけ多くの事象、あるいはチャート的には様々なパターンを取り込んで、それら全体の平均として、比較的期待効率が高く、なおかつロバスト性が良好なシステムとなるパラメータを選定することになります。

そのようにして設計されたシステムは、多くの株価推移パターンに対して柔軟に対応しますが、細かな局面に対しては必ずしも平均的な期待値になるとは限りません。
あくまで、中長期的に見た場合に、平均的に期待される性能を発揮するに過ぎません。

今回の株価上昇局面においては、そのような局面でのみ最適化されたシステムならば、理想的な追従が可能かもしれませんが、例えば長期間に渡る下降トレンドも考慮したシステムの場合、細かな下落局面での収支は損失となり、ちょっとしたドローダウンとして計上されるに過ぎません。

しかし、その期間だけを見ていると、あたかもそのシステムがうまく機能していないように見える場合があるわけです。
結局、その過程においては、システムはインデックスに勝つことが困難となります。場合によっては、売りトレードにおける損失が買いトレードの利益を上回り、システム全体として損失になってしまう場合もあります。

株価が、中長期的には上昇過程と下降過程を繰り返すといった、一般的な推移をするのであれば、システムもまた中長期的には期待収益に戻ってくる可能性があります。
一方、運が悪ければ、その回帰の途中でシステム寿命が尽きてしまい、損失のまま終わってしまうかもしれません。

システム運用のスタートダッシュでつまづいてしまうと、その後に収益を回復するまで、かなりの忍耐を必要とすることになります。
それを少しでも避けるために、システム運用開始時には買いのみでトレードを行うことも考えられます。

もちろんこれは、株価推移が明確な下降トレンドとなっていないことが大前提ですが、いずれにしても買いのみでのシステム運用であれば、インデックスすなわち株式の長期保有に大きく水をあけられることはないでしょう。
株価上昇局面では、頭と尻尾をくれてやる可能性が高いですが、下降局面では株価の下落を多少なりともヘッジできるかもしれません。

そうは言っても、システムを買いシステムとドテンシステムに分けて運用するなんて、面倒なことだと思われるかもしれません。
しかし、多くの場合、ドテンシステムで最適化されたパラメータと、買いシステムや売りシステムで最適化されたパラメータは、完全に一致します。

従って、システム運用上は、ドテンシステムにおいて買いトレードのみに運用フラグを立てるだけで、買いシステムとして機能させることが出来ます。
ある程度の期間、買いトレードのみで運用を継続し、その結果、十分な性能が期待できると確認した時点で、ドテンシステムに切り替えていけば良いのです。

これは、要するにトレーディングシステムのテスト運用です。システムの運用に当たり、通常は最初にバックテストを行い、続いてフォワードテストを行い、そこで問題がなければ実戦投入となります。
そこに新たに、買いトレードのみのテスト運用を追加することで、フォワードテストを補完し、リスクを低減することが可能になるでしょう。

なお、ここで言うフォワードテストには、通常2通りの考え方があります。
一つは、完成したシステムに対してリアルタイムで情報を更新し、性能を確認していく方法。そしてもう一つは、テスト期間をバックテストとフォワードテストの2つに分け、バックテスト期間のみで設計したシステムがフォワードテスト期間でも機能するかを確認する方法です。

前者のフォワードテストにおいて良好な性能が得られた場合、その期間の収益は原則として逸失利益になります。本来は自分の財布に関係ないはずなのですが、気持ち的には損した気分になる、ということです。
更に、実運用後にシステムが期待通りの性能を得られず、損失が拡大していったとしたら、目も当てられません。

一方、後者のフォワードテストの場合、そのような逸失利益は生じませんが、フォワードテスト期間中に最適パラメータが変わってしまう可能性があり、テストそのものの信ぴょう性に疑問が生じます。
ちなみに、KFシステムクリエイターでは、最適パラメータの時系列演算機能によって、その問題を克服しています。

いずれの方法においても、フォワードテスト期間中に期待通りの性能が得られたとしても、実運用後にもその性能を維持できる保証はありません。
結局、フォワードテストは単なる気休めに過ぎないのかもしれません。

そこで考えられるのが、先に述べたテスト運用の実施です。

テスト運用という考え方自体は、決して目新しいものではありません。しかし、多くの場合それはロット数の縮小で実行されます。
システムに大量の資金を投入する場合はそれでいいのかもしれませんが、元々投資資金が少ない場合は困難です。また、フォワードテスト同様逸失利益という問題を避けて通れません。

買いトレードのみによるテスト運用ならば、少なくとも資金不足の問題は解消できます。逸失利益や実損失の可能性はありますが、インデックスとの比較という視点に立てば、その影響は軽減されます。
ただし、値動きの荒い銘柄などでは、それでも大きな損失を被る可能性があることは、否定できません。

なお、FX等で多く用いられているデモ口座によるテスト運用は、実資金の投入を伴わないことから、実質的にはフォワードテストと考えられます。
これはシステムトレード用というよりは、裁量トレードにおける売買テクニックの確認用、と考えた方が良いかもしれません。

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