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自己合成システム [システムトレード]

トレーディングシステムの性能を向上させる方法の一つに、複数システムの合成があります。システムの合成により、元となるそれぞれのシステムのドローダウンを平準化し、合成システム全体のドローダウンを低減することが出来ます。
その結果、システムのロバスト性が向上し、複利リターン(年率リターン)の上昇が見込めます。

これは通常、出来るだけ相関の小さい、もしくは理想的には逆相関の関係にあるシステム同士で実行します。その為、一般には異なるロジックを有するシステム同士を合成します。
あるいは、同一ロジックであっても、正システムと逆システムのように、売買が逆関係にあるシステム同士を合成します。

今、あるシステムにおいて最適パラメータを決定する過程を考えます。通常は、複数の最適化対象指標に対して時系列分析を行い、各時間(日時)における各指標の値が最大となるパラメータを、その指標、その時間における最適パラメータとして決定します。

そして、直近における各最適パラメータの内、その継続時間が長く、かつ、システム性能が良好であるものを、そのシステムの最適パラメータとして採択します。
多くの場合、複数の主要な最適化対象指標において、各々の最適パラメータは概ね一致することが多いのですが、中には最適パラメータが大きく異なる事例もあります。

各最適パラメータにおけるシステム性能に、明らかな優劣が見られればいいのですが、性能に大きな違いが見られなかったり、一長一短がある場合には、どのように対処すべきでしょうか?

その答えの一つが、自己合成システムです。
これは、同一ロジックであるが最適パラメータが異なる複数のシステムを合成する、というものです。

元となる各システム間の性能差が小さい場合は、それらの合成システムの性能も大差ないものとなり、わざわざ合成システムを生成する意味はほとんどありません。
しかし、例えば単利系指標と単株系指標との性能や資産カーブの形状などに、著しい差が見られる場合などは、自己合成システムによって性能が改善する場合があります。

以下に、5110住友ゴム工業のRSI順張りシステムの事例で考えます。

本システムは、単利KFIndexを最適化対象指標とした場合と、平均リターンを同指標とした場合とで、最適パラメータが異なり、資産カーブ形状に著しい違いが見られます。
次図の上段に単利KFIndex、下段に平均リターンの場合の資産カーブを示します。なお、事情により、最適パラメータの値は伏せさせていただきます。

201006a.png

201006b.png

これらを見ると、単利KFIndexを最適化対象指標とした方が良好に見えます。しかし、累計損益率で比較すると、直近においてはどちらもほとんど同じであることが分かります。
そして、最適パラメータの直近継続期間を比較すると、単利KFIndexの場合が2015年2月13日以降、平均リターンの場合が2012年11月21日以降で、平均リターンの方が2年以上長く継続しています。

詳細な考察は一先ず置いて、両者を50:50で合成したシステムの資産カーブを次図に示します。

201006c.png

チャートの形状は、当たり前ですが、元となるシステムの資産カーブを平均したものとなっています。しかし、大きな特徴として、資産カーブの下振れが大幅に低減されていることが分かります。
具体的な性能指標で比較すると、以下のようになります。

 性能指標  [単位]  :(単利KFIndex/平均リターン)⇒合成システム
 --------------------------------
 期待効率  [円/株日]:( 0.49/ 0.36)⇒ 0.43
 EER         :( 0.49/ 0.26)⇒ 0.85
 損益累計   [円]  :( 4,874/ 3,047)⇒ 3,962
 PF      [倍]  :( 3.34/ 3.75)⇒ 4.46
 トレード数  [回]  :( 115/ 27)⇒ 71
 勝率     [%]  :( 70.43/ 74.07)⇒ 71.83
 損益レシオ  [倍]  :( 1.40/ 1.31)⇒ 1.75
 平均損益率  [%]  :( 4.33/ 19.08)⇒ 6.92
 累積損益率  [%]  :( 59.95/ 44.47)⇒ 61.19
 平均リターン [%/年]:( 18.79/ 19.14)⇒ 18.53
 年率リターン [%/年]:( 16.72/ 15.40)⇒ 16.82
 時価最大DD率 [%]  :(-61.15/-79.56)⇒-43.02
 簿価最大DD率 [%]  :(-33.28/-33.13)⇒-22.03
 単利期待効率 [%/年]:( 20.22/ 22.38)⇒ 20.68
 単利EER       :( 0.78/ 0.26)⇒ 0.47

資産カーブでも見て取れるように、ドローダウンが2つの元システムと比較して大幅に低減していることが分かります。その結果、PF、損益レシオ、累積損益率等の改善が見られます。

これらのシステムには、実はもうひとつ面白い特徴があります。それは、平均リターン基準システムの最適パラメータのセカンドピークが、単利KFIndex基準システムの最適パラメータのメインピークになっている、ということです。

言うならばこれは、平均リターン基準システムのメインピークとセカンドピークとを合成したシステムになっている、ということです。
すなわち、時間軸方向に合成した自己合成システムである、とも言えます。

メインピークとセカンドピークとを合成したシステムは、安定性の向上が期待できます。メインピークの機能低下により性能が低下したとしても、セカンドピークの性能上昇がそれを補うことで、これらの合成システムの性能は大きく崩れることなく、機能を維持できる可能性があります。

もちろん、自己合成システムにおける元システムの組み合わせは、これらに限定されるものではありません。セカンドピークを含む全ての知り得る有効なパラメータの中から、相関が低いシステム同士を抽出して組み合わせることも考えられます。

また、2つのシステムを50:50で組み合わせるだけではなく、最適性能が得られるよう重み付けを行ったり、更には3つ以上のシステムを合成することも有効かもしれません。

いずれにしても、自己合成システムという新たなパラダイム/パラダイスの下で、より有効でかつ安定なシステムが生成されるであろうことを期待したいと思います。

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