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ノイズキャンセリング技術 [家電]

前にもちょっと触れたことがあるかと思いますが、最近、ノイズキャンセリングヘッドホンが開発され、商品化されています。
これは、外部からのノイズを検出し、それと逆位相の音を原音に重畳することで、ノイズを聞こえにくくする技術です。

ご存知のように、音は音波と言うように波動であるわけですから、ある大きさの振幅と周期を持っています。
それらは刻々と変化し、それが音程(周波数)や大きさ(振幅)の変化となって、耳に達するわけです。

自然現象とは実に不思議なもので、この音の変化を、周波数はそのままに振幅を逆転させて(位相を反転させて)も、普通に聞くことができます。
しかし、元の音と位相を反転させた音とを同時に出す、すなわち重ね合わせると、互いの振幅が相殺されて無音状態になってしまいます。

これがノイズキャンセリングヘッドホンの原理です。

もう少し難しいことを言うと、位相を反転したノイズを原音に混ぜた時、それらの音は互いに混じり合い、一見ノイズとは異なった音の波形になります。
それに元のノイズを加えるとノイズ成分がキャンセルされるのは、一般に波動は振幅や周波数が異なる正弦波の集合に分解できるからです。

しかもその分解の方法は、一通りしかありません。これをフーリエ展開と言います。すなわち、ノイズを構成する正弦波の集合と、原音を構成する正弦波の集合とを混ぜ合わせても、それらに含まれない全く異なる周期と振幅を持った正弦波が、新たに発生することはなく、単に元の音を構成する正弦波の集合になるに過ぎません。

そして、元のノイズと位相が反転したノイズをフーリエ展開すると、それは元のノイズを構成する各正弦波の各々について、位相を反転した、すなわち振幅を逆にした正弦波の集合になるのです。
それらを混ぜ合わせると、対応する正弦波同士がきれいに打ち消しあって、消滅してしまいます。

すると、後には原音を構成する正弦波の集合のみが残ります。これを元通りに足し合わせると、原音のみが忠実に再現されることになります。
こうやって、不要なノイズを大幅に低減することができるわけです。

では、実際にこの技術を使うためには、具体的にどのようにしたらいいのでしょう?私は既にエンジニアではありませんので、以下はあくまで私の推測です。
したがって、実際とは異なっているかもしれませんし、その可能性は大いにあります。

ノイズキャンセリング技術を実用化するためには、まず最初に、ノイズを測定しなければなりません。ただし、漠然と適当なマイクで集音すればいいと言うものではなく、原音を再生するヘッドホンと周波数特性が同じになるようにしなければいけません。

そして、その信号を増幅し、元のノイズに遅れることなく、ヘッドホンから流さなければなりません。その際、音圧レベルの調整が必要になります。
すなわち、外部からヘッドホンを通過して聞こえてくる元のノイズの大きさを正確に見積もり、もしくは測定し、それとレベルが等しい逆位相のノイズをヘッドホンから流す必要があるわけです。

このような過程を経て、ようやくノイズをキャンセルすることが可能になります。

なお、この場合は原音をいかに忠実に再生するか、すなわちノイズをいかに小さくするかに重点が置かれましたが、そこまで厳密なノイズキャンセルが必要ない用途、例えば工事現場の重機が発生する騒音の低減などにも、この技術は利用されているようです。

この場合は、外部に向けて重機が発する騒音と逆位相の「騒音」(逆騒音)を、大音量で流すことになります。この場合、騒音の発生源と逆騒音の発生源とを、できるだけ近付ける必要があります。
そうでないと、ある方向では騒音が小さくなるものの、別の方向では逆に騒音が大きくなってしまうことになりかねません。

以上、ノイズキャンセリング技術について考えてみました。

「何を唐突に」と、いぶかった方もいらっしゃるでしょうが、実はこの話は昨日のコラムの続きでもあります。
その理由は、ちょっと考えていただければ、お分かりになるかと思いますが、いかがでしょう?

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たかとび

家電メーカーで働かれていたときに得た知識なのでしょうか?
面白いです。。
私もちょっとオーディオメーカーでアルバイトしたりしてましたので
なつかしい感じがしますw

by たかとび (2010-08-10 21:44) 

Kフロー

たかとびさん、こんにちは。

メーカーでは、全然異なる対象を扱っていましたから、必ずしもその時に得た知識ではありません。
でも、物事の考え方とか、そういったことは、メーカー時代の経験が大きいと思っています。

でも、それがすべてプラスに働いている保証はなく、ひょっとしたら障害の元になる先入観の源になっているのかもしれません(^_^;)

by Kフロー (2010-08-11 09:20) 

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