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リードタイムをいかに縮めるか [雑感]

リードタイムは一般に短い方が良いとされています。それを実現するために、各分野では様々な努力や工夫が成されてきました。
例えば工業分野においては、トヨタのカンバン方式やソニーのセル生産方式などが挙げられます。

今さら説明するまでもありませんが、カンバン方式は仕掛かり在庫を極力持たないことで、全体のリードタイムを短縮しています。
また、セル生産方式は経路長を極限まで短くすることで、リードタイムを短縮しているわけです。

このように、産業界においては生産効率向上の大きな柱の一つとして、リードタイムの短縮に取り組んできたわけです。
その結果、製品の大幅なコストダウンや品質向上をも合わせて実現することができました。

その一方で、未だにリードタイムの短縮とは無縁な世界が存在します。それは言うまでもない、いわゆる公共事業です。
これらは予算年度と予算枠が決まっているため、必ずしもリードタイムの短縮が歓迎されるわけではありません。

事業規模が大きくなるほど、膨大な時間と費用をかけて事業を進めていくわけですが、技術的には時間を短縮できることでも、その年度の予算枠の関係で、結局は"ちんたら"と進めざるを得ない場合が多々あるのではないでしょうか。
現在問題になっているダム関連事業などは、その際たるものだと思います。

リードタイムが長いということは、計画当初の時点とは環境要因が大きく異なってくることもあるわけで、計画に柔軟性がないと、たちまち行き詰まってしまう場合が生じます。
それでも計画を通そうとすると、当初予定にはない膨大な追加費用や軋轢が生じることになります。

このように、リードタイムが長くなってしまう原因は、いったい何処にあるのでしょう?

公共事業と言いましても、個々の技術は一般の産業技術と変わりません。すなわち、産業技術が進歩してリードタイムが大幅に削減できるのであれば、公共事業においてもその恩恵を享受することは可能です。

しかし実際には、最短時間で事業が完了することは、ほとんど無いように感じます。結局、当初設定した期間を目一杯使って、当初の予算枠を使い切る業者が、最も優秀な業者であるというわけです。
予算を余らせることすら許されません。工期を半減するなんて、もっての外です。

これは、例えば1年後に終点に辿り着く、長大なベルトコンベアのようなものです。その速度は1年後に終点に達するように設定されており、途中で変更することはできません。
もちろん、途中で製品をベルトコンベアから外して移動することも不可能です。

結局、その途中の個々の工程で作業が予定より早く終了したとしても、ベルトコンベアを迂回して次の工程に送ることはできません。仕掛かり品がベルトコンベアの上をゆっくりと移動して行くのを、ただじっと見守るしかできないわけです。

これが民間企業なら、そんな会社はあっという間に潰れてしまうでしょうし、そもそもそんな生産ラインは笑い話にもなりません。
ベルトコンベアをできるだけ縮めることが、さらにはコンベアを撤去することが、企業が生き残っていくための重要な戦略だからです。

コンピュータの世界では、データの高速転送を行う場合、以前はSCSIに代表されるパラレル転送が主流でした。しかし、最近はSATAなどのシリアル転送が主流になっています。
これは、パラレル転送では各データ間の同期が取り辛く、転送速度向上に限界が見えてきたことに加え、電子デバイスの高速化によりシリアル転送でも十分な速度が得られるようになったからです。

もちろん、その高速シリアル転送を更に並列化した超高速パラレル転送も、RAIDなどで実用化されていますが、それはまだ特殊な事例です。
一方、CPUにおいては、一時はクロックの向上による速度向上を目指しましたが、現在は再び並列化の方向に向かっています。

結局、これらの技術が互いを高め合うことで、より高度な段階にスパイラルアップするわけです。

さて、話を公共事業に戻しますと、これは一昔も二昔も前のパラレル転送だと言わざるを得ません。個々のラインの同期は乱れ、互いに干渉し合っているようでは、生産性の向上など夢のまた夢の話です。

民主党政権になって、複数年度予算構想など、多少は前進が見られますが、民間企業やIT技術の事例と比べればまだまだです。
鳩山首相は理系出身のPh.Dということで、従来の閣僚にはない新しい視点で、国家運営をしていただきたいものです。

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