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トップダウン型システムとボトムアップ型システム [システムトレード]

トレーディングシステムには、大きく分けてトップダウン型とボトムアップ型があります。トップダウン型は、ほとんど全ての市場や銘柄を対象とし、それらに共通する売買ルール(ストラテジー)でトレードを行なうシステムです。

そのため、一度に複数の銘柄に売買シグナルが出る場合がありますが、運用資金によってはそれらの全てをトレードすることができません。
そこで、どの銘柄を優先的にトレードするかという資金管理が重要となります。

その部分に関しては、明確にルール化することが難しいため、システムトレードとは言いましても、裁量的な要素を含んでしまうという懸念が付きまといます。
それらを厳密に管理するシステムもあるのかもしれませんが、システムが複雑化してしまうため、ストラテジーの検証を行なう以前に、システムそのものの検証を綿密に行なうべきかもしれません。

一方、ボトムアップ型のシステムは個別銘柄毎に売買ルールを作成し、それら単独もしくはいくつかを組み合わせて運用を行なうスタイルです。
サンプル数が少なくなりがちであるため、カーブフィッティングに陥る危険性は高まりますが、銘柄の特性に応じた肌理細やかな運用を行なうことができます。

資金管理面でも、基本的には個々のシステム毎の運用資金を管理するだけで良いため、トップダウン型よりは容易になります。
複数システムを並列運用する場合でも、個々のシステムに対して予め資金枠を設定しておけば、大きな混乱は起きません。

このようなボトムアップ型のシステムを全銘柄に対して作成し、それらを並列運用すれば、それは見かけ上トップダウン型のシステムと同じように見えます。
ただし、トップダウン型のシステムと異なるのは、それらが必ずしも共通の売買ルールで運用されるわけではない、ということと、運用資金は各システム毎に厳密に決まっているということです。

売買ルールという点で言えば、ボトムアップ型システムの集合体の方が、トップダウン型システムよりも優位性があることは明らかです。
一方、資金効率と言う観点で見ますと、ボトムアップ型では運用されずにキャッシュのままのポジションが生じてしまいますが、トップダウン型ではそれを他の銘柄に割り振ることができます。

また、当然のことながら、ボトムアップ型の並列運用の方が、システム開発や日々のシステム更新の負担が大きくなります。
しかし、元々、全銘柄の並列運用は現実的ではありませんから、数~数10銘柄程度に限定すれば、それらの負担はそれほど大きなものとはなりません。

さて、トップダウン型では資金管理が重要であると述べました。これは、慎重に数学的な考慮を行なわないと、思いがけない落とし穴に嵌ってしまう可能性を孕んでいます。
例えば、当ブログの2007年5月30日や6月4日、2008年11月27日のコラムでも述べましたように、並列運用時の損益を平均せずに加算してしまうと、とんでもない結果を導いてしまいます。

一例として、例えば1泊2日のトレードでシステムの期待値(平均損益)が1.0%である場合、1年間の最大収益(年利)がどれくらいになるのかを考えてみます。
もちろん、1泊2日のトレードとは言いましても、1回に1銘柄ずつトレードするとは限りません。

トップダウン型のシステムの場合、シグナルによっては1度に例えば10銘柄の銘柄を売買することもあり得るわけです。
しかし、注意しなければいけないのは、そのような場合であっても、運用資金に対する期待値はあくまで1%でしかない、ということです。

10銘柄を仕掛けるわけだから、期待値は10%になるはずだ、などと考える人はいないでしょう。10銘柄を仕掛ける場合は、それぞれの銘柄に振り分ける資金量は1/10になるわけで、それらが1%の期待値であったとしても、1銘柄当たり運用資金の0.1%の期待収益しか得られません。
それが10銘柄分合わさって、初めて1%の期待値になるわけです。

そう考えると、上記の条件において、何回のトレードを行なったかは全く考慮しなくてよいことが分かります。
1泊2日ですから、資金は1年間で最大250回転ほどになります。1回転当たり1%の利益があるとすると、250回転では単利で250%の収益ということになります。

もしも複利で運用した場合は、1.01の250乗引く1を計算すればよいわけです。その答えは、1,103%ほどになります。
すごいですね。たった1年で、資金が10倍以上に増えるわけです。

しかし、実際には勝率100%はあり得ませんから、勝ったり負けたりの平均損益が1%と考えると、資金が10倍以上になるようなことはまず考えられません。

そういうわけで、もしも期待値が1%程度しかないにも関わらず、年利1,000%を超えるようなテスト結果を出し示すシステムが存在するとしたならば、そのシステムのロジックは明らかに間違っていることになります。

これは、そのような結果は極稀にしか出ないから大丈夫、といったような問題ではありません。1回でもそのような結果が出てしまうシステムであれば、そのシステムは根本的に間違っていると考えた方が無難です。

そのようなシステムによる検証結果に基づいて運用を行なっても、期待通りの収益を上げることは難しいと考えます。
もっとも、年利を多く見積もってしまうだけで、利益が期待できることには変わりはない、と思われるかもしれません。

しかし、手数料負担は思った以上に大きなものです。想定年利が数分の1に落ちることによって、手数料の割合が増大し、その結果損失に転じてしまうかもしれません。
それらを十二分に吟味した上で、システムトレードを実践していく必要があるかと思います。

システムを自作している方は、もしも間違いがあった場合は自分で修正できるかもしれません。しかし、システムを購入している方は、万が一そのような間違いが見つかったとしても、自分で修正することは難しいでしょう。

購入先に問い合わせれば、修正に応じてくれる場合があるかもしれませんが、悪質な業者の場合は、システムの問題点を指摘したとしても、それを否定し続ける可能性もあります。
その場合は、検証を行なって明らかに不具合があることを証明しなければなりませんが、上述したような分かりやすい事例でもない限り、なかなか難しいかもしれません。

また、仮にシステムに重大な不具合があることを証明できたとしても、不具合に気が付かなかったと言われれば、修正版を提供することで済まされるか、せいぜい代金を返却してもらうくらいのことしかできないかもしれません。

修正版を渡されたとしても、それは従来の謳い文句とは異なるシステムのわけですから、例えば「年利1,000%のシステムが作れる」という宣伝文句に釣られて購入した人にとっては、そのシステムにはもはやほとんど魅力がなくなってしまうことになるかもしれません。

ストラテジーの検証は重要な作業です。しかし、それはシステムが間違っていないという大前提の上に成り立っています。
ちょっとした数学的トリックに引っ掛からないように、システム運用を目指す人は、たとえ自分でシステムを開発しないとしても、最低限の知識の習得は必須だと思います。

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