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トレーディングシステムの最適レバレッジ(3) [システムトレード]

問題です。100万円の資金を元手にトレードを行なうことを考えます。100万円のうち20%、すなわち20万円を初期投資額として、その範囲で複利運用を行った場合、次の10トレード後の資金残高はいくらになるでしょうか?
なお、金利・手数料は考えないものとし、取引単位も無視します。

  トレード毎損益率:+30%,+20%,+30%,-10%,-10%,+10%,+50%,
             +30%,-20%,+10%

答えは簡単です。

  (1+0.3)(1+0.2)・・・・・・(1+0.1)*20万円+80万円=142万円

100万円から初期投資額20万円を差し引いた残りの80万円は全く運用に係わっていないため、初期投資額とその運用益に最後に加えるだけです。
もちろんこれは単なる例題ですが、20万円の元手で42万円を稼いだということです。

これが単利運用ですと、全トレードで初期投資額に対して120%の利益、すなわち24万円を稼ぐことになります。全資産残高は20万円+24万円+80万円=124万円です。
この例では、複利運用の威力の大きさが分かります。

では、元手100万円の内、10%に当たる10万円を2倍のレバレッジで運用したらどうなるでしょう?
レバレッジが2倍ということは、トレード毎損益率を2倍にしてやればいいわけです。

  トレード毎損益率:+60%,+40%,+60%,-20%,-20%,+20%,+100%,
             +60%,-40%,+20%

すると、上記と同様に、10トレード後の資金残高は以下のように求められます。

  (1+0.6)(1+0.4)・・・・・・(1+0.2)*10万円+90万円=153万円

おや?答えが合いませんね。
20万円を複利運用した場合と、10万円をレバレッジ2倍で複利運用した場合とで、いったいどこに違いがあるのでしょう?

後者の場合、元手は10万円であり、元手を引いた資金残高は90万円ですから、おかしくはないような気がしますが、何度計算しても答えが合いません。
この原因は、いったいどこにあるのでしょう?

種明かしをしますと、実は両者では建て玉数が異なります。そのために、その差分に係わる損益に違いが生じて、最終的な資金残高が異なってしまうのです。

簡単のため、1株1,000円で固定とし、1株単位で取引するものとすると、トレード毎の建て玉数は、それぞれ次のようになります。

  20万円×1倍:200,260,312,406,365,329,361,542,705,564
  10万円×2倍:200,320,448,717,573,459,551,1101,1762,1057

全然違いますね。レバレッジ2倍で運用した場合は、1倍の場合と比べて、建て玉数が2倍程度に達しています。

レバレッジ2倍では、(元金+損益)の2倍が2回目の投資金額になります。しかし、元々の損益がすでに2倍となるわけですから、2回目以降の投資金額としては、(前回投資金額の2倍+前回損益の4倍)となるわけです。

一方、レバレッジを掛けずに投資金額を2倍にした場合は、2回目以降の投資金額は(前回投資金額の2倍+前回損益の2倍)となり、投資金額の差がどんどん開いていくわけですね。
投資金額の差が開くということは、当然、建て玉数が異なってくることになります。

さて、投資金額の一部でレバレッジを掛けて運用するということは、建て玉数に特徴があることが分かりました。建て玉数、すなわちポジションサイズを変えることで、そのトレードをレバレッジを掛けた状態にしてやることができるわけです。

すなわち、最適レバレッジ運用と等価になるように、トレード毎にポジションサイズを調整してやれば、最大の投資効率が得られることが期待できます。
これこそが、私が追い求めていたポジションサイジング、さらにはマネーマネジメントなのかもしれません。

以前のコラムでも述べたことがありますが、ATRを用いたポジションサイジングには、どうしても馴染むことができませんでした。
それは、ATRそのものが将来の予測を前提としているように思えてならなかったからです。

しかし、最適レバレッジに基づいたポジションサイジングでは、予測の要素はありません。最適レバレッジは、先日のコラムでも述べましたように、数学的に、一連のトレードの最大効率を与えてくれます。

単純に、全資金に対して最適レバレッジを適用すると、それは極めてストレスの大きいトレードとなります。
最適レバレッジでの運用は、必然的に大きなドローダウンを伴うからです。

しかし、例えば全資産を10分割してそれぞれを1ユニットとし、いくつかのトレーディングシステムを、別々のユニットで最適レバレッジ運用してやれば、リスクを押さえ、かつ、効率の高いトレードを行なうことができます。

買いシステムだけで考えると、システムの最大損失は、1ユニットの金額×レバレッジに限定されます。例えばレバレッジを2倍とし、1ユニットの大きさを全資産の1/10とすると、最大損失は当初全資産の20%になります。

もちろんそれは、それまで積み重ねた利益の80%を保証するものではありません。あくまで当初全資産の80%を保証するに過ぎません。
そのような最悪の事態を絶対に避けたいのであれば、定期的に全資産を再算定し、新たにユニットを割り振って、その枠組みの中で運用を続ければよいと考えます。

ここで注意しなければいけないのは、例えば10個のユニットがあるからといって、10ユニット全てでシステムを運用できるというわけではないことです。
他に無尽蔵の資金があるのなら別ですが、資金に余裕がないと、最適レバレッジが想定するポジションを建てることができなくなります。

上記の(極端な)例では、9番目のトレードで余剰資金がほとんどなくなり、わずか2万円ほどになってしまいます。1回目のトレードでは余剰資金は80万円もありました。
一方、信用取引を利用すれば、実資金に対する余剰資金は、上記の9番目のトレードでも120万円ほどになります。

最適レバレッジ運用における建て玉必要額と、最大建て玉可能額との間には、単純な比例関係はありません。
システムを運用する前には、必要なポジションサイズを維持し続けることができるかどうか、入念に検討する必要があります。

KFシステムクリエイターにおいては、最適レバレッジの決定と、その際のトレード毎のポジションサイズの決定を行なえるよう、逸早く対応したいと考えています。
今まで検討してきましたシステム更新速度の向上と合わせて、システム改定を急ぎたいと思います。

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