SSブログ

裏デイトレード(その1) [システムトレード]

株価の日々の動きを確認するのに、通常は日足チャート(ローソク足)が用いられる。システムトレードでも、このチャートが出発点となる。

今、最も単純な投資システムとして、株を購入してその株を長期間持ち続ける、というものを考える。これは厳密には投資システムとは言えないかも知れないが、購入および売却のルールを明確にすれば、投資システムと見なすことが出来る。

このシステムによる資産の変化は、手持ち資金+日々の株価の終値×株数で示される。株を売却するまでは、資産は株価の変動に合わせて変化する。
当然、システムトレード開始(株の購入)から終了(株の売却)までの資産の変化は、株価任せである。通常、資産変化は日々大きく変化するだろう。ロバスト性という観点では、極めて不安定な投資システムである。

さて、日足チャートでは終値が始値より高ければ陽線、終値が始値より低ければ陰線となるが、もし陰線の日に手持ち株を寄付きで売り大引けで買戻せれば、株資産の価値を変えずに手持ち資金を増やせ、資産変化を示す資産カーブの底上げが可能となる。
これは、いわゆる繋ぎと同じ手法であるが、繋ぎが必ずしも一日で完了するとは限らないのに対し、これは原則として一日で買戻す。即ち、投資システムを反故にすることなく、資産を増加させることが可能となる。

でも、陰線になる日を予測するなんて不可能ではないか、という指摘もあるだろう。

その通り、不可能である。
では、どうすればよいか?簡単である。毎日、寄付きで売って大引けで買戻せばよい。これを「裏デイトレード(裏デイトレーディング;Reverse Day Trading)」、略して「裏デイトレ」と呼ぶことにする。
一般的にはギャップトレードと言った方が、通りがいいかも知れない。しかし、通常のギャップトレードは売買のタイミングを計ってトレードする。一方、ここで言う裏デイトレは、基本的に毎日トレードするのだ。

言葉の意味は明白だろう。通常の(現物の)デイトレが、当日中に買って、その後当日中に売り決済するのに対し、裏デイトレは前日の大引けで買って、当日の寄付きで売り決済する。場中の株価変動で利ざやを稼ぐのではなく、場の閉じている間、言ってみれば裏側の時間帯に利ざやを稼ぐから、裏デイトレである。

しかし、裏デイトレは陽線の時は資産を減らしてしまい、結局は行って来いで、全く利益を上げられないのではないか?それどころか、手数料負けで大きな損失になるのではないか?

当然の疑問である。

確かに、裏デイトレは全ての銘柄に対して有効な普遍的な投資システムではない。しかし、一部の銘柄に関しては、大変有効な投資システムである。しかも驚くべきことに、極めて高いロバスト性と高効率を併せ持つ場合がある。
さらに、これが、日本を代表するような超一流企業、即ち、通常我々が長期投資の対象とするような企業において、顕著に成り立つような投資システムを実現するのである。

本ブログの第1回に示したグラフは、トヨタ自動車について、1株売買時の裏デイトレによる損益を示したものである。損益の値幅と株価の値幅は合わせてある。株式を長期保有するよりも、遥かに高い利益を上げていることが判るだろう。
これは金利・手数料を含んでいないが、建て玉数を増やすことで、相対的に金利・手数料の割合を下げることができる。逆に、建て玉を増やしすぎると、マーケットインパクトが生じ、システムを崩壊させることになる。
マーケット規模や資産規模を考慮せずに、ただちに裏デイトレを実行するのは危険である。

なお、裏デイトレは現状の私のシステムの基本となる部分であるが、単純にこれだけで売買を行なっているわけではない。また、訳あってトヨタでのシステムトレードは現在は休止している。

次回以降は、裏デイトレの意味や注意点について考察していく。

[追記]
今回ブログを立ち上げた理由の一つは、この裏デイトレと同じ手法が公知化していることが判ったためである。毎日新聞社刊「投資の達人」で阿部智沙子氏が、連載コラム[「Myトレードシステム」をつくろう!]の中で紹介している。
本音としては、このようなシステムの根幹に関わるようなことを公表して欲しくはなかったのだが、すでに公知化された以上、この方法の「使い方」を十分理解していただき、無用なマーケットインパクトを防ぎたい、という気持ちがあった。


nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 2

えむ

こんにちわ えむ です。

やっと本論が始まったようで、待ってました。
阿部さんの本、私も
『30万からはじめる信用取引の本』
という本読みました。
その中でのシステムトレードがいくつか紹介されていました。
by えむ (2005-10-14 17:47) 

Kフロー

えむさん、ありがとうございます。

阿部さんは最近私が注目しているアナリストの一人です。
日本でシステムトレードに言及している人は、意外に少数です。特に個別株でのシステムトレードとなると、世界的にも数少ないのではないかと思います。

『30万からはじめる信用取引の本』は残念ながら読んでおりませんが、今度手にして見たいと思います。

システムトレードについては、その性格上、全てをオープンにすることは出来ませんが、可能な限り皆さんに参考にしていただけるような情報を発信していきたいと思います。
by Kフロー (2005-10-17 09:42) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。